2016/11/12 Yeasayer(イェーセイヤ―) live @ Terminal West

 実はこの日は、アトランタに行って、NBAアトランタ・ホークスのゲームも観る予定だった。会場はアトランタの中心部のフィリップスアリーナ。ただ、もう時間は8時を過ぎていて、試合のティップオフは7時半なので、もう始まっているはず。そして、行きと同じく、アセンズからアトランタまでは1時間はかかる。となるとアリーナに着いたとしても、試合は終了してしまっているかもしれない時間だ。完全にやってしまった。  

 この日の相手は、フィラデルフィア・76ers。若手の成長株が揃うフィラデルフィアと地元のスーパーマンドワイト・ハワードが加わったアトランタ・ホークスの試合はできることなら見たかったのだが、仕方がない。そもそも最初から間に合わない可能性があることも考えて、チケットは3階席の一番安いセクションを買っていたのだが、毎度思うのだが、見れなかった時の保険に入っておけばと後悔する。その保険の約10ドルが惜しくて、いつも失敗して後悔している。ホテルはフィリップス・アリーナから歩いても行ける所を選んだつもりだ。ただ目と鼻の距離というわけではないので、このままホテルにチェックインして急ぐか、フィリップス・アリーナに直接行って、向こうの駐車場に止めるか? アリーナの近くの駐車場がどこにあるかまでは調べてはいなかったが、ないわけはないだろう。そして、試合も終わり間際であれば、すでに帰っている人間もいるので、入口の近くには止められるだろうし、係員もいなければ、料金を取られることもないかもしれない。

 アトランタダウンタウンへは早くは着けたかと思うのだが、ホテルの場所が何やらよくわからなかった。ナビで示された周りを何回か回って、暗くて狭い道を入っていった中に、一度つぶれたんじゃないかみたいなホテルがようやく見つかった。ホテル自体は駐車場も広くて、部屋も広いところだったのだが、余計な時間をロスしてしまい、結局もう9時半近くになってしまっていた。もう終わっているかもしれないと思って、少しでも早く行こうとフィリップスアリーナには、もう車で行くことにした。アリーナの前に着いたところで駐車場を探そうとしていたら、人がどんどん入口から出てきた。これは本当に試合が終了してしまったということだ。まさに最悪である。

 これまでアトランタ・ホークスのホームゲームは一度見たことがあった。とはいっても学生時代の20年以上前の話だ。私が初めて生で見たNBAの試合で、そこで現役のドミニク・ウィルキンスとスパッド・ウェブを見た。その時の相手はフェニックス・サンズで、エースはケビン・ジョンソンだった。当時はオムニという名前のアリーナで、現在のようにCNNの本社の隣にあったので(当時はCNNの見学もした)、場所は変わっていないと思うが、雰囲気は全く違っていたかと思う。とにかくほとんど何も覚えていないのがつらいところで、せっかくなのでその辺も確かめたかったのだ…。これだけたくさんの人が出入りしている中なら、アリーナの中をどさくさにまぎれて、のぞいて見ることはできただろう。最悪、止められたとしても、自分はチケットを持っている。グッズショップにだって寄ることもできただろう。

 だが、しかし、この日はアトランタ・ホークスのゲームを観たとしても、その後でもう一つイベントがあったのだ。Yeasayer(イェーセイヤ―と読む)というバンドのライブを観に行きたくて、その予定を入れていて、チケットも買っていたのである。会場はTerminal Westというアトランタのちょっと郊外のライブハウスで、チケットでは開始時間は9時からとなっているが、おそらく今まで見てきたアメリカのライブハウスの法則から、前座があるはずなので、本当の開始時間は10時過ぎだろうと踏んでいたので、今から出れば、いい時間にライブハウスに行けるかもしれないと考えた。ここでフィリップス・アリーナ内を見学して、また時間をロスするのはさすがにやめた。グッズショップならホークスの試合日じゃなくとも開いているだろうし、別の機会にも行くことができるだろうとも考えて、ここはそのままライブハウスに向かうことにした。

 ちなみに後でわかったことだが、この日はホームのアトランタ・ホークスが117-96でフィラデルフィア・76ersを破った。スコアリングトップは、ホークスのベンチから出場したティム・ハーダウェイJr.で20点、3ポイントの成功率が50%で5本を決めたのが大きい。この時点ではホークスは7勝2敗と調子は良かったんだけどね。ドワイト・ハワードは10得点、11リバウンド。調子が良くなくとも、ダブルダブルは確実に稼げる地元のスターを結局、ホークスは1年で放出してしまうことになるとは、フロントの考えることはよくわからん。今、思えば、ちょっとでも早くアセンズを出て、少しでもこの試合を見ておけばよかったように思う。フィラデルフィアは、ジャーリル・オケフォーが18点でトップ。ただ、ベン・シモンズもナーレンズ・ノエルも、そして怪我のジョエル・エンビードも出場していなかったようだ。この時点ではフィラデルフィアはまだ1勝8敗、ほんとに人材を生かしきれないチームである。

 Terminal Westというライブハウスは、アトランタの郊外も郊外で、こんな所にあるのかと思うほどの閑散とした場所で、絶対、車でしか行けないような辺鄙な所にあった。割と新しめのライブハウスで、駐車場も広かった。駐車場代は確か10ドルを払って入場したと思う。すでにライブは始まっていて、結構な具合に盛り上がっていた。ちょっと嫌な予感がした。
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 Yeasayer(イェーセイヤ―)というバンドに興味を持ったのは、やはりその独創的な世界観を出しているビデオである。クレイアニメーションとCGを融合した独特のビデオは見るものを圧倒させるだけの力があり、そこまでのこだわりを持っているバンドということにひかれたのが第一だ。YouTubeにも上がっているので見てもらえば一目瞭然だが、このビデオを作るのにどれくらい時間がかかったのだろうかと思うぐらい凝っているものだし、彼らメンバー自身が映像を作っているわけではないとは思うが、そういうアーティスト達との人脈があったり、彼らをも納得させる音楽観だからこそ、ビデオにも凝ることができるのだろうと思わせる作品だ。彼らの音は、Wikipediaに言わせるとエクスペリメンタル・ロックらしい。まあ、エレクトロではあるのだが、実験的というよりはかなりダンサブルでもあり、ポップなメロディーなところも、後に残る感じがあっていい。バトルズと似ているかもしれないが、彼らよりもとっつきやすいのはまちがいない。ニューヨークのブルックリン出身の3人組で、MGMTとも交流があり、ベックのサポートもやったことがあるらしい。驚いたのは2010年のフジロックで来日していたということだ。知らなかったということは、自分はその年に行ってなかったということか。

 この日は他のアーティストやバンドにも興味を魅かれるものがライブを行っていたのだが、このYeasayerがどんなライブをするのだろうという興味が、何よりも大きくなったのが事実である。感想から言うと、やはりこの小規模のライブハウスでは、彼らが本当にやりたいライブはまだできないのだろうなというものだった。ステージにそれほど金はかけられなかったというのが、よくわかる。バンドの楽器編成はそのままに、彼らが立たない隙間の空間に、コラージュした人物画の書き割り(人形ではなかった)のようなものを立てていて、そこにもLEDを仕込みつつ、照明の演出で光ったりするなどのアレンジを加えているが、やはり書き割りなので動かないし、できることには限界がある。彼らがもうちょっと売れれば、ステージにスクリーンを付けたり、それこそ人形を使って動かしたりということもできるのだろうし、本当はそういうことがやりたいんだろうなというのがひしひしと伝わってくるステージだった。でも、音楽的な盛り上がりは十分すぎるくらいあった。会場では合唱するものもいたし、ボーカルの人間がシンセを使ってパフォーマンスするところは歓声がひときわ上がっていた。3人編成と思っていたが、ドラムスの人間がサポートだろうが入っていてステージ上には4人いた。本当ならばステージで見える人間は、3人だけで完結させる演出ができた方がいいのになと思ったくらいだ。
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というように音楽的にはすごく満足するライブだったのだが、すでに大々的に盛り上がっていた時間帯で、結局自分が聴けたのは4曲くらいで、それでライブ自体は終了してしまった。アンコールもなく本人たちは出て来ず。ここで、自分が来た時にはもうライブの半分以上は過ぎていたことを知る。ということは前座もなく、9時過ぎには始まっていたということだ。カリフォルニアやニューヨーク以外では、ライブは、オンタイムに始まるように出かけなければいけないのだということを認識した。またもや、もったいないことをしたと自己嫌悪に至る自分。とはいえ、ホテルに帰ると、疲れですぐに寝てしまったのである。