2017/11/4 Rutgers Scarlet Knights vs. Maryland Terrapins @ High Point Solutions Stadium (football)

11月4日。朝7時半、フィラデルフィアに出発。結局、部屋をチェックアウトする時もホストには会えず、そのまま出発。ネコ2匹だけはちゃんと見送ってくれた。それだけでも彼らにはまた会いたいと思う。空港には15分程度で到着。部屋の選択は間違っていなかった。飛行機は遅延もなかったが、自分には気がかりなことがあった。昨日壊れたデジカメだ。レンズが出たまま、電源が付かなくなり戻らなくなったのは、翌日になってもそのまま。バッテリーを代えても、USB接続をしても認識しない。残りの日程を、携帯のカメラだけで過ごすのはつらいなと思い、あらたにデジカメ購入を考える。保険がおりることも期待しながら。
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フィラデルフィアには予定の10時半より早くに到着。この街は3度目だ。ハーツの営業所に行き、ここからの愛車はヒュンダイソナタとなった。韓国車はこれまで1回乗ったくらいで、実に久しぶりだ。ただ、乗ってみると、もはやバックモニターがないのがつらく感じる。ニューヨークで乗り捨てる予定ではあったが、ハズレくじの旧車をつかまされた感じは否めない。そういえば、車種の選択をさせてもらえなかった。GPSはやはりスマホ方式のものだった。ただ今回の機械はそれほど使われていないらしく、バッテリーの減りも少なかったのが救いだ。

この日は、まずラトガース大学のフットボールの試合(対メリーランド大)を見る予定だった。会場はヤンキースタジアム。年に1度あるかないかの、特別にニューヨークでやる試合というものだった。フィラデルフィアからヤンキースタジアムのあるブロンクスへは普通に行っても2時間かかる。おそらく橋を渡る時には渋滞するし、マンハッタンの中心部は通らないとしても、道を間違ったりすると2時間半は見とかないといけない。デジカメの件があったので、すぐにヤンキースタジアムに行くべきか、BEST BUYなどで買ってから行くことができるかを調べてみようと思った。

するとである。なんとこの日の試合が、ラトガース大学のホーム、ハイ・ポイント・ソリューションズ・スタジアムに変更になっていたのだ。一瞬、目を疑ったが、本当だった。ヤンキースタジアムワールドシリーズに使われる可能性もあるということで変更になったらしい(結局、ヤンキースワールドシリーズには出られなかったのだが)。よく見たらラトガース大学の告知メールも来ていた。実に危なかった。イベントの予定は、直前までチェックしておかなければエライ目に合う。この日のチケットは、ラトガース大学のオフィシャルサイトから買っていて、プリントアウト方式ではなく、会場のウィルコールで受け取る形になっていたが、開催場所も変わったので、無効ということになる。あらためてチケットを買い直さなければいけないわけだが、オフィシャルサイトで買っていたからこそ、払い戻しはされているわけで、逆にチケット交換サイトのStubHubで買っていたら完全に紙切れになっていた。危ないねー。何よりも、そのままヤンキースタジアムに直行していたらと思うと、ゾッとした。2時間無駄足の移動で、そのまま帰ってくることになるだけだった。

会場が変わったということもあり、試合時間も変更になっていた。ヤンキースタジアムでは午後1時開始の予定だったが、ラトガース大学のホーム、ハイ・ポイント・ソリューションズ・スタジアムになって、開始時間が15時半になっていた。2時間半も余裕ができたことになる。フィラデルフィアからラトガース大までは、ほぼ1時間で行ける。マンハッタンに行くわけではないし、橋も通らないので、時間通りに着けるだろう。デジカメを買って、ホテルもチェックインしてから、ラトガースに行けることになるから、ラッキーであった。今回、デジカメをどうしようということで考えをめぐらさなかったら、こういう事態に気付いていたかどうかもわからなかったわけで、デジカメが壊れたことで、怪我の功名というか、逆に得をした部分もあるのかもと感じた。

ただし、問題があった。この日のもう1つの予定として、夜にフィラデルフィアに戻って、フーターズのライブを見るというものがあった。80年代に大ヒットを飛ばしたレジェンドバンド、自分の最も好きだった洋楽グループのフーターズが、今も演奏活動を続けていて、地元のフィラデルフィアでライブを行うのである。開演時間は夜8時。このライブだけは、前座があったとしても、8時までに着いて最初から見たいと思った。ラトガース大学のフットボールの試合が3時半から始まったとして、終了までは3時間以上は見ておかないといけないとすると、移動が1時間だとして、試合を最後まで見れないことは、ほぼ明白だった。チケットも買い直さなければならない以上、そこまでしてラトガースに行くか、ネットを見てチェックし直す必要があった。

まずデジカメを買うつもりでBEST BUYに行く。アメリカで買うから、アフターサービスは享受できないので、高いものを買うつもりはなかったが、今どきデジカメを買う人は少ないので、値段は安い。目をつけたのはキヤノンのELPH190。色は選べずブルーしかないのだが(だから安いということもあるのだろう)、機能さえちゃんとしていれば文句はない。今はデジカメにもWI-FIが付いていて、ネットにつなげば、ケーブルを接続せずに、データにアクセスできるようだ。

もう1店舗くらい見て決めようと思い、先にホテルに行ってチェックインできればしてみようと思った。部屋に入ってネットにつながれば、デジカメの価格も調べられるし、ラトガース大の試合も安いチケットが売っているかもしれない。ホテルは以前も泊まった円筒形の、昔はおしゃれだったであろう古~いホテル。ここはフィラデルフィアのスタジアムまでストレスなく歩いて行ける距離にある唯一の安いホテルであるので、フットボールのゲーム前は、イーグルスのファンで一杯になる(自分もその一人だが)。だいぶ時間は早かったが、チェックインはさせてもらえたので、ネットで色々調べてみることに。前も確かそうだったのだが(それほどよく覚えている)、このホテルは2台あるエレベーターの1台が壊れていて、行き先ボタンを押しても明かりがつかず、本当にそこに行くかどうかわからず2回はボタンを押してしまう、しかも死ぬほど遅くてガクンと揺れるエレベーターである。大したメンテナンスをしなくてもスタジアムに近いから客が来るのでやっていける、そんなホテルだ。

ネットで調べた結論で言うと、キヤノンのELPH190のデジカメは、日本では2万円以上するものだったので、買いだということがわかった。もう一店行ってみて、さらに安いものがあればそれにしてもいいし、BEST BUYはどこの店舗も値段は基本、同じだということがわかった。ラトガースのフットボールゲームのチケットは、オフィシャルサイトでは本日のゲームはさすがに買うことはできなくて、他サイトでは、直前ではあったが、かなり上方の席でも60ドルはしたので、正直、最後まで見れないものでもあるので、現地で買ってみようと思った。ラトガース大は、強豪揃いのBIG TENカンファレンスに移ってからは低迷が続き、今シーズンも3勝5敗と成績は良くなく、相手のメリーランド大学は強豪ではあるが、この日まで4勝4敗と調子は良くなかったので期待度は低い。単純に考えて、ラトガースには勝てる相手ではない試合でもあったので、試合直前になれば、現地で安くなっているものを買えるかもしれないと思ったのだ。

ラトガースに行く途中にあった別のBEST BUYで、キヤノンのELPH190を買った。カメラを買えばSDカードを安く買えるというのであらたに購入。デジカメは150ドルを切る値段で、SDカードを合わせても160ドルちょっと。すぐに使えるかどうか確認をする。バッテリーの残量に不安はあったが、1日分くらいは余裕だろう。この時は安い買い物をしたと思ったが、まさかこのデジカメと1日でお別れをすることになるとは、この時は思いもしなかった。なぜ、今回のブログで写真がほとんどアップされていないのか? それは買ったデジカメをそのまま失くしてしまい、撮った写真ともども失ってしまったからである。それについては後述する。

ラトガース大学のハイ・ポイント・ソリューションズ・スタジアムに来るのは2度目だ。前回は、ニューヨークに寒波が襲来した時で、吹雪が吹きすさび、グラウンドが雪で積もって真っ白になる中で行われたゲームで、よく覚えている。その時に比べると、この日は暖かくていい天気だ。フットボールのゲームだから人は多いが、教会の中の駐車場に車を止めさせてもらう。料金はドネーション込みだと言われ、30ドルと高かったが、スタジアムに近いところで助かった。チケットは、やはり当日券も売られていて、それでいいかと思っていたら、売り場の近くで、あるオッサンがチケットを売っていて、人だかりができていて、よく見たら1階のいい席を売っていた。試合が始まる直前でもあったので、値段を聞くと40ドルだというから、迷わず買うことに。結果、ゴールに近いところではあるが、かなりいい席を陣取ることができた。周りには客もほとんどいない。オッサンが買い占めていただろう席に、他になかなか買い手が付かなかったということかもしれない。

調べてみると、ラトガース大学スカーレットナイツのホームゲームを見るのは6年ぶりだった。なんと2011年だ。今やリーグを代表するワイドレシーバー(WR)になったアトランタ・ファルコンズのモハメド・サヌーが、まだ大学でプレイしていた時であった。当時のクォーターバックは一年生のGary Nova。彼は学生時代、相当いい成績を残したものの、結局プロには行けなかった。当時はラトガースはBig Eastというカンファレンスに所属していて、そこでは優勝を争うチームになっていたのだが、Big Eastカンファレンスがなくなって、ラトガースはBig Tenというオハイオ州立大やミシガン大などの所属する強豪ひしめくカンファレンスに異動することになり、なかなかいい成績を収めることができなくなった。そうなると超一流選手も入って来なくなる。サヌーという選手がいかに超人で、あんなスーパースターはそうそういないこと、地元であったということでラトガースに入った人物だったということがわかってくる。今もBig Tenカンファレンスの試合結果や順位表はチェックしているが、ラトガース大にどんな選手がいるのかまでは、とてもフォローできていない状況だった。

現在のラトガース大のクォーターバック(QB)は3年生Giovanni Rescignoいう人物 。試合が始まってわかったことだが、ラトガースは、QBがほとんどパスを投げない、ラン主体のチームになっていた。後で調べてみると、今シーズン、チームのパス獲得ヤードが200ヤードを超えた試合はほとんどない。さらに、このRescignoというQBもシーズン中盤になってスターターに昇格しており、それまでは4年生のKyle Bolinがスターターだったが、シーズン5週目、オハイオ州立大に56-0という大敗を喫してから変わったようだ。ランニングバック(RB)は4年生のGus Edwards とRobert Martinのほぼ2人(たまに1年生のRBも繰り出される)で展開される。逆に彼らを封じられると、ラトガースはどうしようもないという格好のようだ。

メリーランド大学はアスレチックチームの愛称はテラピンズ(Terrapins)という。カメのことであり、独特のロゴを見たことのある人も多いだろう。ワシントンDCに近いカレッジパークという大学街が本拠だ。2014年にラトガース大とともにBig Tenカンファレンスに加入したのだが、それまでは、フロリダ州立大やジョージア工科大、マイアミ大といった比較的強い学校が所属するACC(Atlantic Coast Conference)にいたので、実力は高い。全米チャンピオンになったのは1950年代という昔だが、それでもNFLに多数選手を送り出しており、自分の知る頃では、ピッツバーグ・スティーラーズなどにいたQBのニール・オドネル、テネシー・タイタンズのタイトエンド(TE)、フランク・ワイチェックボルチモア・レイブンズのWR、ジャーメイン・ルイス、カロライナ・パンサーズなどで活躍したディフェンス・タックル(DT)、クリス・ジェンキンズ、サンディエゴ・チャージャーズのラインバッカ―(LB)、ショーン・メリマン。現在もプレイしている選手では、ワシントン・レッドスキンズのTE、バーノン・デイビスオークランド・レイダースファンにとっては、全く活躍しなかった最悪の1巡目WR、ダリウス・ヘイワード・ベイがいる。ラトガース大とは、元々ライバル関係にあるチームなのだが、カレッジフットボール発祥の地と言っている割には実績に乏しいラトガースとは違い、メリーランド大はずっと強いチームだ。

試合はラトガースの攻撃から始まったが、先に言ったようにラトガースの攻撃はほぼランしかない。QBのRescignoも結構走りたがる選手のようで、RBの選手も変えてディフェンスに的をしぼらせないようにしているのだろうが、それほど効果的かと言われれば疑問である。ランでヤードを稼げなかった時にはパスを投げるのだが、これが決まらない。一方のメリーランドは、今シーズン、初戦のテキサス大に勝って期待が高まったようであるが、その後、オハイオ州立大、ノースウエスタン大、ウィスコンシン大と惨敗が続き、浮上の目がなくなった。そんなメリーランドもラン主体のチームのようで、QBは2年生のMax Bortenschlagerで固定しているようだが、パスで200ヤード以上投げることはほぼなく、エースRBの3年生のTy Johnsonは、勝った試合では100ヤード以上を稼いでおり、2年生のLorenzo Harrison Ⅲ、Jake Funkとの併用で戦ってきているから、両者似たチームと言えば似ているのである。

第1クォーター中盤、ラトガースの攻撃はパントに終わるが、そのパントキックが飛ばずに敵陣40ヤードの位置から攻撃がスタートされてしまう。メリーランドはQB、 BortenschlagerからWR、Taivon Jacobsへ43ヤードのパスが通り、一気に敵陣4ヤードまで進む。何度かランを試みた後、最後はJohnsonへのパスで0-7と先制。やはりラトガースは勝てないんだろうなという空気が漂う。しかし、次の攻撃ではラトガースも負けずにQB、Rescignoが3年生のタイトエンド(TE)、Jerome Washingtonへ35ヤードのパスを成功させて、敵陣29ヤードまで進む。ここで第2クォーターとなり、RB、Gus Edwardsなどのランで小刻みに進んだ後、最後はRescignoが自ら9ヤード走ってタッチダウン、7-7の同点となる。

すると、次のメリーランドの攻撃で、ラトガースのディフェンス陣が奮起する。1年生のディフェンスライン(DL)、Elorm Lumor(背番号7)が、QB、Bortenschlagerをサックし、ファンブルを誘発、メリーランドがリカバーするものの、次のプレイでも、ラトガースディフェンスはBortenschlagerをサック。メリーランドは自陣15ヤードからパントをする羽目になり、ラトガースは自陣49ヤードという絶好の位置から攻撃を始めることに。Robert Martinのランで距離を稼ぎ、敵陣32ヤードまで進んだラトガースはフィールドゴールで10-7と逆転に成功。
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残り7分半となった次のメリーランドの攻撃でも、ラトガースディフェンスはさらにプレッシャーをかけるのだ。40ヤードまで進まれたところで、1年生のDL、Julius Turnerが再びBortenschlagerをサック。1つパスを通されたものの、次のプレイでBortenschlagerのパスを、3年生ディフェンスバック(DB)のKiy Hester(背番号2)がインターセプト。そこから敵陣を越えて52ヤードのリターンタッチダウンとなり、17-7とリードを広げる。やはり、フットボールインターセプトほどおもしろいものはない。彼は今シーズン2つ目のディフェンスタッチダウンらしく、なかなかおもしろい選手だと思った。こういうディフェンス陣の活躍は実に頼もしいのだが、それでもオハイオ州立大やミシガン大相手では全くと言っていいほど通用しないのだ。フットボールの強いチームというのは底知れない強さがあるのである。
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後半の攻撃はメリーランドからスタート。大きなランやパスを許さずしのいでいたラトガースディフェンスであったが、サードダウンでRB、JakeFunkになんと53ヤードのランを許してしまう。ちょっとした隙が命取りになってしまうという見本だ。メリーランドは敵陣12ヤードまで攻め込み、何度かランを試み、最後はJohnsonのランでタッチダウンを奪い、17-21と見事に逆転。やはり思った通りの結果になるのか。

逆転されたラトガースだが、ここからの攻撃が変化に乏しく精彩を欠き、ファーストダウンも取れずにパントに終わる。ディフェンス陣は、メリーランドの攻撃をパントに終わらせるが、なんとパントリターンがファンブルになってしまい、しかもメリーランドにカバーされて、自陣41ヤードから相手に攻撃権を与えてしまうという大失態。ここでメリーランドはBortenschlagerのパスとHarrisonのランで確実に距離を進んでいき、敵陣12ヤードでフィールドゴールで加点、これで17-24と7点差まで広がった。ここでは誰もが、もうラトガースは負けるだろうと思ってたにちがいない。

第3クォーター残り4分、ラトガース大の攻撃。Robert Martinのランが成功し、RescignoのTE、Washingtonへ15ヤードのパスが決まり、ようやく敵陣に侵入。どこまで追い上げることができるのか、というところだが、ここで時刻は6時半前となり、後ろ髪を引かれながら、自分は8時のフーターズのライブに間に合うようにフィラデルフィアに戻ることに。後で試合結果を知って、びっくりしたのだが、もうちょっといたら本当に戻るタイミングを失って、ライブに遅れていただろうと思う。それほど白熱した試合だったようだ。

Rescignoのパスが決まり、敵陣12ヤードまで進んだラトガースは、第4クォーターに変わって、Martin(背番号7)が走り込んでタッチダウン、24-24の同点に。次のメリーランドの攻撃をパントに抑えた後、ラトガースは今度はエースRBの、Gus Edwardsが奮起。敵陣23ヤードまで進んだ後、最後はRescignoのEdwardsへの23ヤードパスでタッチダウンを取り、ついに31-24と逆転。
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試合終了まで残り7分半。メリーランドはここでQBを2年生のRyan Brandに変えてきた。ショートパスの得意なQBのようで、Johnsonのランと併用して小刻みに時間をかけてヤードを稼いでいく。敵陣15ヤードまで進むが、ペナルティーで25ヤードまで戻される。しかし、ここでラトガースのディフェンスは踏ん張り、最後までタッチダウンを許さず。なんと6分半にわたる攻撃だった。31-24でラトガースが勝利するという番狂わせとなった試合であった。最後まで見ていれば、絶対に興奮したであろうゲームであった。

ラトガース大は、この大勝利で変わるかに見えたが、その後、ペンシルベニア州立大、インディアナ大、ミシガン州立大と惨敗が続き、このメリーランド大との勝利が今シーズン最後の勝利となった。Big Tenカンファレンスでも決して強くないインディアナ大相手に0-41と完敗を喫し、なんと、この試合後にはRescignoはスターターを外されて、1年生QBのJohnathan Lewisに代わったようだ。まだまだラトガース大には試練のシーズンが続きそうである。ただ、自分としてはとにかく、せっかく新しいデジカメで撮った写真が全てなくなってしまったことが最大の後悔なのであった。