2016/11/13 Carolina Panthers vs. Kansas City Chiefs @ Bank of America Stadium (NFL football) ①

 明けて11月13日日曜日、前日にちょっとでも早く寝て、体力を復活させたかったのは、この日のためである。日曜日といえばNFLの試合日だ。ただ今回の旅の予定では、アトランタではファルコンズのホームゲームはなかった。選択肢は2つあった。ナッシュビルまで行って、テネシー・タイタンズのゲームをニッサン・スタジアムで見ること(かつてはLPフィールドという名前だったが、今はニッサン・スタジアムになっている。日本にも同じ名前のスタジアムがあるが)、この日の相手はグリーンベイ・パッカーズ。そして、もう一つはシャーロットに行って、カロライナ・パンサーズのゲームをバンク・オブ・アメリカ・スタジアムで見ること、この日の相手はカンザスシティ・チーフス

 アトランタダウンタウンからは、ナッシュビルニッサン・スタジアムまでが約399km、シャーロットのバンク・オブ・アメリカ・スタジアムまでも約390kmと距離的にはほとんど変わらないが、車で移動すると4時間は見ないといけないコース。これまでドライブとしても、1日でそんな長い距離を運転したことはなかったので、かなりの不安があった。そもそも行ったとして、帰って来れるだけの体力が残っているか? でも、これは今後の一つの経験にはなるかもしれないと結論づけた。

 本音としては、数年前に行ったナッシュビルに行きたいとは思っていた。しかし、これは謎なのだが、この日のタイタンズパッカーズ戦のチケットが信じられないほど高騰していたのだ。一番安いはずの3階席のチケットでさえ、通常では考えられない400ドル近くまでになっていた。ちゃんと試合を見ようといい席を買おうとすると50000円でも足りないくらいなのだ。何でこんなに高いのか? チケットマスターはもちろんStubHubなど、どこのサイトを見ても値段はほぼ変わらない。名前は変わったとはいえ、スタジアムは建て変えられたわけではないし、タイタンズ期待のQBマーカス・マリオタ人気といっても、たとえ球界最高のQBパッカーズのアーロン・ロジャースとの対戦でも、ここまで上がるはずはない。フットボール以外の理由があるのかとも考えた。ハーフタイムショーにものすごい有名人が来るとかがあるのかとも考えた。自分が見ていたのはゲームの1か月以上前だったのだが、結局直前になっても価格は下がることはなかったので、本当になぜだったのかさっぱりわからない。そして、一方のパンサーズのゲームのチケットは、安かった。1階席のけっこう端のほうではあったが、見やすいところで200ドル以下であった。今シーズンはすでに3勝5敗とイマイチ調子が悪かったとはいえ、前シーズンには連勝街道を突っ走り、スーパーボウルにまで進出したパンサーズのゲームが、こんな値段で買えるのである。今回オーバーン大学のフットボールゲームを見たということもあり、オーバーン大の出世頭のキャム・ニュートンを見るのも悪くはない。結果として、シャーロットに行く方向に決めた。

 シャーロットには初めて行くので不安でもあったので、地図を確認しつつ、少しスタジアムまで距離はあったが、パーキングチケットも20ドル以下で売っていたので、ネットで買って、ホテルの共用パソコンでプリントがタダできることも確認しておいたので、プリントして出かける。Googleマップでは、4時間以下で行けることにはなっていたが、試合開始は13時なので、8時前にはホテルを出たいと思っていた。シャーロットに行くのに際し不安だったのは、これまでクレムソンに行った流れでもわかったように、とにかく山道の何もないところを延々と行くだろうということの予測がついていたからだ。誰かと一緒に出かけるドライブなら、話をしながらということができるし、いざとなったら運転を変わってもらったりもできるかもしれない。だが一人のアメリカのドライブは一度景色が落ち着くと、もう延々同じ景色なのだ。そして運転はし続けなければいけないし、単調作業の退屈をまぎらわす手段はほぼない。そこの見た景色が良くても、なかなか車を止めて写真も撮りづらい。自分はどれくらいの時間耐えられるのか、何度休憩しなければならないのかを考えて、とにかく早く出なければと実行した。ナッシュビル方面ならば、途中でテネシー州チャタヌーガなど割と大きな街も通っていくので、景色も少しは色々変わるかなというちょっとした期待もあったのだが、仕方ない。一応、この日にアトランタに戻って来るつもりではいたが、どうしてもつらければ、シャーロットにホテルを取って、朝に帰ってくればいいやという気楽な気持ちを持つようにした。明けた月曜日は、昼にアトランタからメキシコに行く帰国日だからだ。

 道はとにかく前途多難だった。山道になり、雲行きが怪しくなったと思ったら、ものすごい豪雨となった。ワイパーを最大速度に動かしても前方が見えなくなるくらいで、速度も必然的にゆっくりになる。ただ、雨が降ったところでフットボールゲームは行われる。そして、バンク・オブ・アメリカ・スタジアムはドーム球場ではないので、観客は雨にさらされる。もう一気にブルーになってしまった。ジョージアからサウスカロライナに入って、景色は延々と山道である。しかも上り坂が続いているようで、一向に減らないナビの残り表示を見るばかり。山になると、ラジオもさっきクリアに聞こえていた局が入らなくなったりする。州をまたぐと、さらにそんなことが起こる。途中、ドライブインで2回給油と食事のために休憩をとった。先が思いやられるつらさだ。ノースカロライナに入ったのは11時30分くらいだっただろうか。比較的道も開けてきて、雨もやみ、日がさしてきた。しかし、ここからも長かったな。シャーロットに入ってからは渋滞もたびたび起こった。

 シャーロットはおしゃれなキレイな街だった。古いという感じはしないビジネス街の都会だ。お目当てのパーキングのビルはすぐに見つかったが、結局、車を止めて出たのは、もう12時45分くらいだったと思う。何だかんだとギリギリである。スタジアム周りを探索している余裕もない。パーキングのビルはなかなかの会社が集まっている立派なビルで、ゲームの日は、ビジネスマンが来ない日曜日のいい収入になっているんだろうなと思った。自分と一緒に向かっているフットボールの観客も結構いて、そいつらについて行ってスタジアムへ向かう。スタジアムのゲートを入った頃には、もう国家斉唱が始まっていた。席に向かうと、もう試合が始まっていて、大歓声が聞こえたと思ったら、QBキャム・ニュートンがロングパスを決めたようだ。カロライナ・パンサーズは、最初の攻撃の約5分間でフィールドゴールを決めて先制し、3-0。自分が席に着いた時には、もう点が入った後で、試合は落ち着いていた。どうやらシャーロットも雨が降ったようで、座席はだいぶ濡れていたりしたが、それから一度だけパラついたことはあったが、結局、試合終了まで雨は降ることはなかったのは、助かった。
イメージ 1

イメージ 2

 バンク・オブ・アメリカ・スタジアムは雰囲気のいいスタジアムで、パンサーズのブルーのカラーが見事に映えている。スタジアムのスタンドの壁に、パンサーの黒目を模したアートがあり、よく試合のダイジェストでも見るもので、これを生で見たことの感動は大きい。電飾板も見やすいところに配置されていて、客席のスタンドのカーブに合わせた長―いLED表示板もいい感じである。

 今日の対戦相手は4連勝中のカンザスシティ・チーフス。そして、この日のゲームで、クォーターバック(QB)のアレックス・スミスとヘッドコーチ、アンディ・リードの試合巧者ぶりをカロライナ・パンサーズは見事見せつけられることになるのだ。個々の選手の能力としては、パンサーズの方が上だといってもおかしくなかったはず、それが前年スーパーボウルに出たチームがいいように操られてやられてしまうのである。

 3点を先制したパンサーズは、続くカンザスシティ・チーフスの攻撃でフィールド中央まで進まれたところで、QBアレックス・スミスのタッチダウンをねらったWRタイリーク・ヒルあてのロングパスを、パンサーズのディフェンス、コーナーバック(CB)のトレイ・ボストンがインターセプト。このボストンは地元ノースカロライナ大出身の選手で、まさにチーフスの出鼻をくじいたのだ。パンサーズはこの流れを攻撃には生かせなかったが、両チームとも続く2回の攻撃はパントに終わり、第1クォーターが終了。
イメージ 3

 第2クォーターに入り、キャム・ニュートンが躍動する。RBジョナサン・スチュワートのランに、フェイクをかけて自らも走ったりしてヤードを稼ぐ。そして、TEエド・ディクソンに、チーフスのCB、名手マーカス・ピータースの届かない場所に26ヤードのパスを決めて得点圏内に入ると、残り4ヤードとなったところで、キャム・ニュートン自ら走り込んで、タックルをかわし、あおむけになってダイブし。手をあげてエンドゾーンに倒れ込みタッチダウン。10-0とさらにリードする。このように乗せてしまうと、なかなかこの男は止められない。
イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

次のチーフスの攻撃もパントで終わると、続くパンサーズの攻撃は、フィールド中央まで進むが、3rdダウンに失敗。残り2分の2ミニッツウォーニングをはさんだところで、パンサーズはギャンブルに出る。キャム・ニュートンは、エンドゾーンめがけてロングパスを投げ、WRデヴィン・ファンチェスがキャッチ。38ヤードのタッチダウンパスとなり、17-0と大きくリードする。ニュートンはまたもCBマーカス・ピータースを欺き、彼の届かないところにパスを決めてみせた。パンサーズファンは歓喜である。この時点では、彼らは、今日の試合、楽勝かもしれないと思っていただろう。
イメージ 7

イメージ 8

 前半残り1分50秒、チーフスもようやくQBアレックス・スミスの持ち味であるショートパスが決まりはじめる。しかし、パンサーズのディフェンスは好調だった。得点圏内に入られたところで、QBアレックス・スミスに2度のサックを浴びせる。チーフスはフィールドゴールに終わり、17-3で前半終了。後から思えば、ここでフィールドゴール一つ返せたことが、試合巧者チーフスの強みでもあったのだと思う。
イメージ 9

 後半、第3クォーターに入ると、チーフスの攻撃はパントに終わるも、前半の最後の攻撃と同様、パンサーズディフェンスに順応してきているかのようで、確実にフィールド中央までは進むようになってきた。続くパンサーズの攻撃で、キャム・ニュートンは勝利を確実にするために引き離そうとしたのか、勝負をかける。RBジョナサン・スチュワートのランに自らのパス、そしてショートゲインの場面では自ら走り込んでファーストダウンを奪う形で敵陣内に侵入。WRデヴィン・ファンチェスへのパスで敵陣20ヤードと、フィールドゴールが確実な圏内に入るが、ここでチーフスのディフェンスも奮起する。キャム・ニュートンが自ら走ろうとするのを止め、さらにパスをしようとしたニュートンに2連続でサックを浴びせ、合わせて19ヤードも押し戻したのだ。敵陣40ヤードでの4thダウン、ここでパンサーズは安全策を取ってパントを選択した。後から思えばここで流れが変わったのだろう。変わってチーフスの攻撃になり、アレックス・スミスはパスを通し続ける。ここで第3クォーターが終了した。悪夢はここから始まるのである。