2016/11/11 Georgia Bulldogs vs. Clemson Tigers @ Littlejohn Coliseum (NCAA basketball)

 翌朝、旦那さんも加わったホストファミリーと一緒に朝食を食べることになった。ベーコンにソーセージにフレンチトースト、そしてマフィンもあった。日本のこと、アセンズに来た目的などを話す。ファミリーはもちろん日本には行ったことなどなくて(ほとんどのアメリカ人なんてそんなもんだ)、ただこの家にはかつて日本人の女子留学生が住んでいたことがあるらしく、写真を見せてもらった。そして、もう一つ学生に貸している部屋があって、そこにはアメリカ人の女子学生が住んでいた。こんなこともあろうかと思って、近くの外国人用みやげ屋で買った日本みやげをホストファミリーに渡す。安い扇子とかだったのだけれども、喜んでくれるからうれしい。この頃はちょうど大統領選挙が終わった直後で、まさかのトランプ勝利ということになったのだけれども、このホストファミリーはゴリゴリのヒラリー支持派だった。じゃなきゃ、こんな外国人を受け入れたりしないだろうななどと思いつつ。まあ、でもジョージア州共和党の強い州なのだが。
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 フットボールの試合は明日なので、この日はジョージア大学のバスケットボールチームの試合を見に行くことにしていた。とはいっても、試合はホームではなく、隣のサウスカロライナ州のクレムソン大学で行われるので、出かけることに。アセンズからは地図上で車で1時間ほどの距離である。アトランタ周辺にはスポーツの名門校が揃っていて、ジョージア大学にとっては決して負けたくないライバルである。アトランタ市内には、ジョージア工科大学、南西に車で1時間ほど行くと、オーバーン大学があり、そして、北東に車で約2時間、アセンズから1時間ほどのところにクレムソン大学がある。それぞれが車で2時間ほどの場所にあるのだからすごい。さらにアラバマ大学サウスカロライナ大学も簡単に車で遠征できるところにあるから、スポーツの環境としてこれほど理想的なところはないだろう。
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 バスケットのゲームは夜7時からなので、この日はジョージア大学内をちょっと探索してからクレムソンに向かうことにした。学生時代にもここに来て、カフェテリアでご飯を食べたりして、いいところだなと思ったおぼえがあるのだが、こんな芝生の大きな広場があったような気がするが、それでもそんな程度の記憶である。夕方になる前に移動する。アトランタから北東に延びる85号線、その途中にあるハートウェル湖が州境になっていて、そこからサウスカロライナ州になる。アメリカの州境の図を見ると、ジョージア州の北東にちょこっと突き出たサウスカロライナ州の部分のあたりにクレムソンがあるのだ。さらに85号線を上がるとすぐにノースカロライナ州になってしまうのだが、ノースカロライナ州はずいぶん東西に長い州でジョージア州とも接している。これは国立公園が州境になっているせいなのだが。

 延々と森が続く道を進み、ものすごい田舎感が増してくる。湖を越えてしばらくして、近代的な建物群が出てきて、そこがクレムソン大学だった。一応クレムソンという街なのだが、大学周りには本当に大学の建物と森しかないようなところだ。地図を見ると、ちょっとした店に行くのにも、車で数分行かないとない感じ。クレムソン大学は、トーマス・グリーン・クレムソンという政治家が1889年に作った公立大学で、サウスカロライナ州で最も教育水準の高い学校で全米から学生が集まるという(Clemsonという人名であり、赤色のcrimsonではない)。勉強やスポーツに打ち込むのには、本当にこのような隔離されたようなところは理想的な環境なのだと思うが、ただそれが自分だとしたら、ちょっと勘弁してほしい感じである。

 クレムソン大学のアスレチックチームはタイガースという愛称である。ひときわ大きいフットボールのメモリアル・スタジアムが目立つ。ここ数年その強さが脅威的だったクレムソン大のフットボールチームだが、まさか今シーズン、あのオハイオ州立大学を完封し、そしてあのアラバマ大学をも破って、全米チャンピオンになるとは、この時は思いもしなかった(こんなことならフットボールも見ていてもよかったと思うくらいだ)。バスケットボールのアリーナはLittlejohn Coliseumといい、こちらもなかなかいい感じだ。この日はバスケットボールチームのシーズン最初の試合だったのだが、実はこのLittlejohn Coliseumの改装後の最初の試合でもあり、普通はバスケットボールのシーズンの最初は格下のチームと対戦するエキシビジョンゲーム的な試合が多いのだが、今シーズンはそんなアリーナ最初の試合にふさわしい相手ということで、ジョージア大学ブルドッグスとの試合が組まれたのかもしれない。バスケットボールのファンとしては、シーズン最初からこんなカードが組まれたら見なきゃと思う。ただ、地理的には両校は近いのだが、クレムソンはACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)、ジョージアはSEC(サウス・イースタン・カンファレンス)と所属するカンファレンスが違うので、厳密にはライバル校とは言えないのだが、1年に1度対戦カードが組まれるほどの間柄ではある。
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 Littlejohn Coliseumの雰囲気を確認してから駐車場を探すが、なかなかパブリック・パーキングがない。近くにあってこれは何?と思ったのが、IPTAY専用と書かれた駐車場であった。調べてみると、クレムソン・タイガースは独特のファンが寄付して支えるシステムを採用しており、それがIPTAYであり、I Pay Ten At Yearの略であるという。10ドル払って、この駐車場に止めさせてもらえるならば、すぐにファンになるよと思ったが、駐車場それぞれにナンバリングがされていて、その番号に駐める人間が決まっているとしたら厳しいなと思い、パブリック・パーキングを探す。結局、Littlejohn Coliseumから歩いて10分以上かかるところにようやくパブリック・パーキングを見つけて、そこに駐車する。ガラガラである。IPTAYの駐車場もバスケットボールのゲームだからほとんど空いていて、完全に埋まることはないんだろうなと思いながらも(実際そうであった)、もし自分の駐車場だと言う人間が来る場所にとめてしまったら面倒くさかったので止めるのはやめた。仕方がない。

 試合開始は夜7時で、時間があったので、大学内を探索してみる。本当にキレイで、見た目も新しくて素晴らしいところなんだけれども、何だろうな。大学ではあるんだけれども、基本、関係者や地元の人間しか来ないところなんだろうね。観光客が来ないところだから、親切ではないんだ。地図とかもないし、表示がとにかく少ないし、色々な説明してほしいところの説明がない。校舎は学生以外が入らないものだと思っている感があり、カフェテリアみたいなところは、学校関係者用の電子マネーでしか決済できないようだったし、自販機も少ない。そこが今まで見てきた大学と違うし、特にジョージア大学との違いは顕著だったというしかない。

 Littlejohn Coliseumは見やすくて理想的なアリーナだった。クレムソン・タイガースのチームカラーはオレンジとパープル?の2色で、マークは虎の足跡のものである。立命館大学パンサーズはこれにならったものかもしれない。クレムソン大学はバスケットでは優勝するほどのチームではないが、それでも数々の名選手を輩出している。ホーレス・グラントやデイル・デイビスなどが出身選手だ、現役ではトレバー・ブッカーやK.J.マクダニエルズなどもいる。入場する際にもらった紙に大きく出ていたのだが、エースは4年生のJaron Blossomgame(ジェイロン・ブラッサムゲーム、背番号5)という初めて聞いた、一度聞いたら忘れられないような名前である。学生だから本名であるのだろう。
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 一方、ジョージア大学もバスケットでは決して強くはないチームであるが、あのドミニク・ウィルキンスを輩出した大学である。彼はノースカロライナのハイスクールからジョージア大学に進み、アトランタ・ホークスでキャリアの大半を過ごした、スポーツ選手として理想の人生を送ったことがわかる。そして、今デトロイト・ピストンズのスターターであるケンタヴィアス・コールドウェル・ポープもジョージア大の出身であるが、彼以来、目立った選手が出ていないのも現実だ。現在のエースは4年生のPG、J.J. Frazier(背番号30)と3年生のフォワードのYante Maten(背番号1)である。今回のチケットはStubHubで買った。初めて来る場所なので、ちょっと上めの席にした。今日はバスケットボールチームのシーズン最初の試合であり、客はそれほど多くはない。
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 試合が始まった。新しくなったアリーナで負けられない試合ということもあったのか、クレムソン・タイガースが飛ばす。これまでの両チームの試合を見ていないので、何とも言えないのだが(前シーズンと今シーズンでもメンバーも変わっていて、戦い方もちがうだろうし)、両チームとも3ポイントを多用するチームのようだ。すぐに3ポイントの打ち合いになり、失敗したらそのリバウンドを取って、セカンドチャンスを狙うという図式か。クレムソンの方が3ポイントの成功数で勝り、ジョージアはその対策で戦術を変えていかざるを得ない感じ。クレムソンは前半10分を過ぎて、10点以上リードし、最大得点差を14まで広げ、ジョージアはついていくのに必死という印象。NBAでのウォリアーズの成功から、バスケットの戦術も実際変わっていっているのかもしれない。3ポイントを撃てる選手がどんどん重宝され、得点は3ポイントか、そのリバウンドでのセカンドチャンスも含めたペイントゾーンでのものばかりだ。ミドルショットというものが、本当に少なくなってきている。前半終了間際にジョージアも、J.J. FrazierとYante Matenの3ポイントが連続して決まり(ジョージアブルドッグスはこの二人が動きまくって得点に持っていくパターンが定石のようだ)、8点差まで戻すが、結局30-40で前半終了。クレムソンの3年生のガード、Gabe DeVoe(背番号10)はこのゲームで、初のスターターになったらしいが、3ポイント2本を含む12点と爆発、3ポイントの精度が高いだけにこれからも要所で使われていくだろうという印象を持つ。Blossomgameは正直あまり印象に残らなかったな。
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 ハーフタイムに入り、アリーナを一周してみる。ところどころにクレムソン・タイガースOBのレジェンド選手たちの写真が飾られている。デイル・デイビス、ホーレス・グラント、ラリー・ナンス。記憶に残る選手も多い。現役選手ではトレバー・ブッカーもいたなと実感。すごいな、パワー・フォワードの選手ばかりである。これは伝統なのだろうか。今のバスケとはだいぶちがうようだけど。
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 後半になっても、やはり3ポイントの打ち合いでゲームは展開していく。やはりクレムソンの攻勢が続くのだが、ここにきてブルドッグスのYante Matenの動きが冴える。常に動いて得点にからみ、タイガースが突き放そうとするのを防いでいる。すると、後半6分に2年生のガード、William Jackson Ⅱ(背番号0、出身もアセンズの選手だ)が入って流れが変わる。自身の3ポイント2本連続を含むジョージアブルドッグスの連続得点で48-51と、ついに3点差まで詰め寄ったのだ。しかし、ブルドッグスのいいところはここまでだった。今度はクレムソン・タイガースの2年生ガード、Marcquise Reed(背番号2)が3ポイント1本を含む連続7点のランで、アッという間に48-58と再び10点差に広げられてしまった。そこからはクレムソンはタイムアウトの使い方も絶妙で、ジョージアが反撃に出ようとする勢いをそぐ形で時計を止めていた。結局、ジョージアブルドッグスは一度もクレムソン・タイガースに追い着くことなく、64-74で完敗。
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 クレムソン・タイガースは、Marcquise Reedが19得点(うち3ポイント3本)でトップ、さらに3スティールも記録、Gabe DeVoeが15点(うち3ポイントが3本)、エースのJaron Blossomgameが13点、6リバウンド、3アシストとオールラウンドで活躍、4年生ガードのAvry Holmes(背番号12)が10得点と4人が二桁得点をあげた。ジョージアブルドッグスは、Yante Matenが19点、12リバウンドに2ブロックショット、J.J. Frazierが11得点、5アシスト、2スティールを記録したが、この2人に頼らざるを得なかったところが大きい。フィールドゴール成功率、リバウンド数ともにクレムソンを上回れず、大きかったのはターンオーバー数で14-8と拙攻が目立った上に、要所要所でフリースローを与えてしまったファウルがジョージアの敗因だったと言えるだろう。
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 しかし、幸先いいスタートに見えたクレムソン・タイガースのバスケットボールチームは、このシーズンは17勝16敗、同カンファレンス内の試合は6勝12敗と全くもってふがいない成績で終わる結果に。ファイナル・フォーに出場したサウス・カロライナ大には勝利し、ノース・カロライナ大にはオーバータイムの末、負けるという好試合をしていたにもかかわらずである。一方、ジョージアブルドッグスは、所属カンファレンスが違うので比較はできないが、19勝15敗、同カンファレンス内の試合は9勝9敗であった。カンザス大やフロリダ大、ケンタッキー大などのバスケット強豪校にはいい試合をしても全く勝てないという結果だった。バスケットはモチベーションスポーツだと言うが、番狂わせに至るようなことはなかなかない。そこの微妙ではあるが実は大きな差を埋めるのが本当に難しいのであろうということがわかる。

 Littlejohn Coliseumの中には、グッズなどを売るのは簡易的な売店しかなくて(後でわかったのだが、車で数分行ったところの大きな通りにショップがあったようだ)、結局クレムソン大には特別魅かれる要素もなかったので、グッズは何も買わずに帰る。クレムソンを出たのは21時過ぎだったと思う。

 この日はアセンズに戻って、中心部にある老舗のライブハウス、Georgia Theatreで JJ Grey & Mofroのライブを見るためにチケットを買っていた。サザンロックのバンドではあるが、カントリーっぽくはなくて、R&Bやファンクの要素の方が強かったりするのが、おもしろいかなと思ったのだ。このバンドは、アセンズでは相当有名らしく、チケットはちょっと高く25ドルした。ライブハウスのサイトから購入。実は昨日の40 Watt ClubとGeorgia Theatreは同じ系列の会社なのだ。一応、ライブの開始時間は20時となっているので、急いで戻れば、まだ演っている時間に間に合うかどうかといったところである。そこで、部屋には戻らず、直接ライブハウスへ向かう。大通りから一つ外れた静かな通りに車を路駐して向かう。
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 まだ演奏が聞こえるので、間にあった。今頃来る?みたいな感じで受付の兄ちゃんに怪訝そうな顔をされながら、中に入る。結構大きな箱である。すでにお客も盛り上がりの最高潮に達している感じだ。しかし、だ。盛り上がりが最高潮に達していたのはその通りで、実際、2曲半ほど聴いたところで、ライブは終了。バンドはそのままアンコールで戻ってくることもなく、お開きに(すでにもうアンコールだったのかもしれないが、そこは確かめようがない)。客も、大きな拍手をして、何とかバンドを戻そうということもしない。それがアメリカのライブだ。やっぱり、もったいなかった。今回の旅はほんとにライブにはツキがなかった。音楽の街、アセンズと言っても、ちゃんとしたバンドのライブは22時を過ぎると、大体終了してしまう。大通りには、いくつかバーみたいなところがあって、そこでもバンドが生演奏をしていて、外からも音が大きく聞こえたりするのだが、でも、そこに入ってみようとは、あえて思わないんだなー、これが。全く名前もわからんバンドを見てもなーと思うし、知っている曲が聞こえてきたら、そんなカバーバンドを聴いてもなーと思ってしまうのである。この複雑な気持ち、わかるだろうか。結局、ドラッグストアで水などを買って、部屋に戻った。
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