2017/11/5 Philadelphia Eagles vs. Denver Broncos @ Lincoln Financial Field (NFL football)

11月5日、日曜日。この日はリンカーン・フィナンシャル・フィールドにフィラデルフィア・イーグルスのゲームを見に行く予定だ。イーグルスのゲームを見るのは2度目、そして前回もこのホテルから歩いて行った。約30分、歩いて行こうと思うギリギリの距離だが、フィラデルフィアはスタジアムの近くに安いホテルがなく、Airbnbでも部屋を探したが、やはり安いいい所もなく、1泊で利用するにはちょっと気が引けたので、仕方がない。

道順は難しくはない。ただ、距離があるだけだ。周りの道も全然危険な所ではなく、むしろこんな所があるのかというほど、キレイで新しい小金持ちが住むような一軒家の住宅が立ち並ぶオシャレな地区まである。ローマの名前がついた大層な場所でもあった。ダウンタウンまで車で行けば30分もかからないはずだから、本当に最高の立地であると同時に、家一軒いくらするのだろうという興味が沸いた、古い都市であるフィラデルフィアにこんな再開発地区があるということに驚き、ここには以前何があったんだろうと気になった。そんな場所がサウス・フィラデルフィアである。

流れとしては、11時過ぎにホテルをチェックアウトするのだが、荷物を車に積んでおいて、歩いてスタジアムに行き、フットボールのゲームを見てから、夕方ホテルに戻り、すぐにニューヨークで用事があるので発つ予定である。以前もしれっと車をホテルに止めたままで、スタジアムに行った後、戻って来ても大丈夫だったので、今回もそうすることに。とにかく物価の高い東海岸ではできるだけの節約をしなければならない。ということで、できるだけ最小限の荷物でスタジアムに行くわけだが、 リンカーン・フィナンシャル・フィールドはドームではないので、寒さ対策もしておかなければならない。雨は降らない予定ではあったが、スタジアムに持って入れる透明のバックは持ってないので、手持ちでユニクロのダウンなどを持って出かけた。

セレブな住宅街を抜けて大通りに入ると、右手に大きな公園のある通りに出る。ここは歩道も広くて、草地のある道でもあった。しばらく行くと、大きな通りを経た反対側には、『NFL倶楽部』でもよく見たフィラデルフィア・イーグルスの練習場があった。ここから延々同じ道を進み、さらに幅広い道に出ると、スタジアムが集まった地区に入る。フィラデルフィアはスポーツを観戦するのには本当に便利な街だ。アメフトの リンカーン・フィナンシャル・フィールド 、バスケットとアイスホッケーのウェルズ・ファーゴ・センター、野球のシチズンズ・バンク・パークが隣合わせに並立していて非常にわかりやすい。ただ、先ほども述べたようにこの近辺に手頃なホテルがない。せっかくだからスタジアムの外景を写真を撮っておこうと、デジカメを取り出そうとしたら、デジカメがない。えっ、どういうこと??? ポケットなどどこを探してもない。ホテルを出る時には、確実にデジカメはケースに入れてポケットに入れていたはずだ。ということは、落としたのか!? そうだ。気付いた時には遅かった。

この前に一昨日起こったあることを説明しなければならない。デトロイトにいた最終日、時間があったこともあり、ディアボーンという町のショッピングモールに出かけた。しかし、そこで入ったトイレが清掃の途中だったような感じで、気付かないで便座に座ったら、水びたしでパンツから下着からびしょ濡れになってしまった。一気に気分が萎えた。冷たいし、ヤバいなと思い、ただホテルに戻って着替えるまでの時間はもうなく、その日のアリーナなどに行くのもブルーだし、モールでパンツと下着を買うことに決めた。基本、アリーナなどに行く時は、手ぶらでないと入れないので、パンツの横にポケットのあるカーゴパンツで行くようにしている。しかし、このモールの店を色々探したが、カーゴパンツは売っていなくて、仕方なくちょっとゆったりめのジーンズで、かなり大きめのファスナーがあって、開けるとポケットにもなる黒のパンツを買うことにした。カーゴパンツのようにサイドのポケットではなく、太ももの正面に大きなファスナーがあるデザインで、そもそもポケットとして使われることを想定していないのであろう。そこに物を入れると、立ったり座ったりした時に引っ張られてとても痛かった。

一応、この日もせっかく買ったその黒のジーンズで出かけたのだ。デジカメをそのポケットに入れると、かさ高いので引っ張られてとても痛い。仕方なく、ちょっとファスナーを緩めにしていた。そうすると、物の見事にファスナーが下がってしまい、いつの間にか落としていたということなのだろう。普通ならば、デジカメを落とすと、ケース越しとはいえ、何らかの音がして気付く。しかし、歩いていた道は公園沿いの草地の道だった。落としても音がせずに気付かなかったのだ。最悪だ。昨日買った新品のデジカメを、わずか1日で失くしてしまう。こんなついてないことがあるだろうか。

試合開始は13時。その時は12時前で、時間に余裕を見て出てはいた。とりあえず来た道を戻って探さないと、どうしようもないなと思った。もうすでにドッと疲れていたが、来た道を戻る。戻ると言っても、そこまで10分以上は余裕でかかる。途中、何人かのスタジアムに行く人間が通り過ぎる。ここで嫌なことに気付く。もし、デジカメを公園沿いの草地の道に落としていたとして、スタジアムに行く人間が少なくはあるが通っている道なので、彼らに気付かれて、盗られてしまっているのではないかと。

もう何の楽しみも希望も感じず、ただただ大きな後悔を元に、来た道を下を見ながら歩く。公園沿いの草地の道まで戻って、何もなければとりあえずスタジアムに行って、試合だけは見ようと考えた。草地の道に入り半分ほど来たところで、何か黒い物に気付いた。拾ってみた。裏返しにされてはいたが、自分がflying tigerで買った、人間の目がプリントされたデジカメのケースだった。これを間違うはずはない。だが、中に入っていたはずの新品のデジカメは物の見事にどこにもなかった。悩みに悩んで買った新しいデジカメはわずか1日で自分の元を去ってしまった。確定だ。そんなことあるか!? スタジアムに向かう人間に、落としてしまった自分のデジカメケースを見つけられ、カメラだけ盗られて、そのままケースを捨てられてしまったのだ。

ここは日本ではない。落とし物が何もなく帰ってくることなどありえない。普通に使えるカメラが警察に届けられることはないだろう。スタジアムに行っている人間の誰かが持っていったはずだが、6万人以上が訪れるスタジアムでその人間を見つけ出すことはできないだろう。アメリカのスタジアムに拾得物を預かるような所があるのをそもそも見たおぼえがないのだが、そういうところに問い合わせだけしてみるか? 盗まれたということにして、警察に行って、盗難届だけ作ってもらえれば、保険で何とかすることはできるかなと考えてみる。スタジアムには、警官はいても警察のオフィスまではないだろうし、そうなると警察署まで行かなくてはいけない。車まで戻って、警察の場所を探して、移動するとなると相当の時間がかかる。この日は試合が終わってから、すぐにニューヨークに移動し向こうに着いてからの予定をすでに入れていたので、盗難届を書いてもらえるのにどれだけの時間がかかるかわからない、明日とか言われたらもう無理だし、とてもそんなことまでしている余裕はなかった。保険に関して言うと、壊れたデジカメに対して保険金を申請するのと、盗まれたデジカメに対して保険金を申請するのと、両方いっぺんにおりるというのは難しいだろう。そうなるとどちらかにしないといけない。だとしたら壊れた方で、保険を申請する方かなと決めた。

結局、スタジアムに戻って試合を見ることにした。デジカメはないが、携帯で撮って、ここは乗り越えよう。すでに大波乱の1日となったが、席に着いてようやく落ち着いた後、ただアメフトのゲームを見ることが、こんなに楽なことなのかと思った。デジカメのなくなったショックはあまりにも大きい。昨日まで撮ったデータが何もかもなくなったのだ。WI-FI搭載のデジカメなので、ケーブルにつながなくともデータを取り出せると安心してたのだが、それはあくまでカメラ本体があってのこと。ついに1回も試すことなく、カメラそのものを失くしてしまった。今回、ラトガース大学のフットボールのゲームと、フーターズのライブ風景の写真がアップできなかったのは、こういう事件があったからなのだ。昨日、疲れてすぐに寝ることなく、撮ったデータにアクセスをしていたらと思うと、それだけが悔しい。俺のデジカメ持って行った奴、何も大したデータないよ。残っているデータだけでもくれないかな。結局、ACアダプターもケーブルも説明書もないから、そのカメラ、充電切れたら、それで終わりなんやけど。
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この日、フィラデルフィア・イーグルスは、デンバー・ブロンコスとの試合だった。カーソン・ウェンツという2年目のクォーターバック(QB)が大躍進し、絶好調のスタートを切ったイーグルス。まさかのこの日までカンザスシティ・チーフスに負けただけの7勝1敗という快進撃。とかく白人のクォーターバックが優遇されるNFLの中で、まさかのノース・ダコタ州立大学という無名校出身のQB、カーソン・ウェンツという人間がどんなものか見たかったというのが根本にあった。そんなモノになるかもわからない人間を見極め、ドラフト1巡目で指名するほど、NFLのスカウトとはすごいのかというところも確認したかったというのはある。
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チケットを買った時は、まだシーズンが始まったばかりで、まさかここまでイーグルスが絶好のスタートを切るとは思いもしなかった。東海岸のチームなので、イーグルスのチケットはそもそも高いのだが、チームが絶好調のせいで、さらにチケットは高騰していた。今回、チケットはStubhubで買った。1階席のかなり上の方ではある。正直、売れば、それなりに儲かって潤う値段になってはいたのだが、やはり自分でも見たいという欲求の方が強かった。ニューヨークに行って、ジャイアンツ対ラムズ戦を見るという選択肢もあったが、ラムズも今シーズンは絶好調だったので、実際見ればおもしろいゲームだったとは思うが、当時はイーグルスを見る選択しか考えなかった。
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一方、デンバー・ブロンコスはここ数年イマイチな成績しか残せず、今シーズンはここまで3勝4敗、クォーターバックは、トレバー・シーミアンが不調で降格、出戻りのブロック・オスワイラーが今季初めて先発を務める始末。ペイトン・マニングの後継者と言われた期待の存在でありながら、ヒューストン・テキサンズに移籍して、その実力のなさを露呈してしまったQB。そのままブロンコスにいたら、どうなっていたのだろうね。まあ、イーグルスの実力を見るには、これほどいいゲームはないのではと思ったのだ。

イーグルスのファンには独特のコールがあり、味方がタッチダウンした時に流れる恒例の歌がある。試合の中継やダイジェストを見るだけでは決してわからない、現場のスタジアムならではの楽しみ。この日はどれだけそのタッチダウンソングが出るのか、今回は地元のファンと一緒に楽しみたいと思ったのだ。まあデジカメさえ失くさなければね。でもここは気持ちを切り替えて楽しむしかない。

試合が始まった。慣れない携帯で撮影するのは大変である。やっぱりデジカメはピントが合うタイミングがわかりやすくて早いことを痛感。携帯で撮ると、これはという瞬間にシャッターを切るのが、ピントが合っていたつもりが合っていなくて、うまくいかない。携帯は本当はアンドロイドの方がカメラの画素も大きくて使いやすいのだが、バッテリーがすぐ切れることを考えて、iPhoneの方で撮影する。

攻撃はデンバー・ブロンコスから。ブロック・オスワイラーはデンバーでの久々の実戦だが、最初からパスを決めていく。ワイド・レシーバー(WR)、コーディー・ラティマ―に通した19ヤードのパスはなかなかのものだった。ラティマーはインディアナ大学時代にその姿を見たことのある選手。そんな選手がプロでも活躍しているのを見るのはうれしい。だからフットボールはおもしろい。しかし、ブロック・オスワイラーの活躍は、最初の2本のパスを通したここまでと言ってもよかった。やはりイーグルスのディフェンスはすごい。彼のパスをそれからなかなか通させることはなかった。敵陣に入ったブロンコスは、フィールドゴールで0-3と先制。そして、イーグルスの攻撃、カーソン・ウェンツの登場だ。
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そのウェンツだが、結論から言うと驚きの一言だった。パスが通らなかったのは最初の1本だけで、タイトエンド(TE)のブレント・セレック、トレイ・バートンと投げ分け、ランニング・バック(RB)のルギャレット・ブロントと新人のコーリー・クレメントのランをはさみ、WR、トーリー・スミスへのパスはディフェンスのペナルティーがあったので、敵陣32ヤードまで進むと、最後はWR、アルション・ジェフリーへの32ヤードタッチダウンパスを通して、すぐに7-3と4分で逆転してみせた。イーグルスは優秀なRBがいて、オフェンスラインがきっちりとブロックしてくれているので、QBは比較的楽なのかもしれないが、それでもディフェンスの穴を見透かすように通すパスは、まるでテレビゲームを見ているようで、見事としか言いようがない。
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続いてのブロンコスの攻撃はファーストダウンも取れずにパントで終了するのだが、イーグルスの攻撃はやはりウェンツのパスが通る。ウェンツはブロックの隙間にうまいこと入って、やはり、セレック、バートン、スミスとパスを投げ分けるのだ。タッチダウンこそ取れなかったものの、フィールドゴールで10-3とリードを広げる。すると、その次のブロンコスの攻撃で、イーグルスのディフェンスが、オスワイラーのパスを見切ったようにインターセプト。敵陣15ヤードという絶好の位置で攻撃権を得たイーグルス、カーソン・ウェンツがクレメンツにタッチダウンパスを通し、17-3とリードを広げて第1クォーター終了。すでにここで試合が見えた気がした。

第2クォーターになり、やはりブロンコスの攻撃はパントで終了。さらに次の攻撃でイーグルスの秘密兵器が登場する。ランニングバックのジェイ・アジャイである。マイアミ・ドルフィンズからトレード移籍し、この日がイーグルスでのデビューだったのだ。最初の走りでは爆発は見られなかったが、これでまだアジャイがいるとなると、まさにイーグルスは手がつけられなくなるだろうという予感が生まれた。しかし、ブロンコスもディフェンスとスペシャルチームが意地を見せる。イーグルスの攻撃をパントで終わらせると、そのパントリターンで、ルーキーのアイザイア・マッケンジーがなんと44ヤードのリターンを見せる。彼はジョージア大学の出身である、そして、自分は2016年にジョージア大学で彼の活躍する姿を見ていたのである。だからこそフットボールはおもしろい。敵陣に入った位置からの攻撃となったブロンコスだが、それでもイーグルスのディフェンスはオスワイラーのパスを許さず、フィールドゴールで終わり、17-6に。

イーグルスは、攻撃の手を緩めない。やはりカーソン・ウエンツのパスは通る。ブロンコスのディフェンスは踏ん張るも、ペナルティーを取られて、さらに進ませてしまうという悪循環に。ウェンツは敵陣に入ると、最後はTEバートンへの27ヤードタッチダウンパスが決まり、24-6に。そして、ブロンコスの攻撃はやはり機能しない。オスワイラーは踏ん張るものの、結局パスが通るのはエースレシーバーのデマリアス・トーマスへのみ。トーマスが何とかディフェンスを振り切ってキャッチしているという印象。敵陣6ヤードまで進んだものの、結局タッチダウンは取れずにフィールドゴールで終わる。これで24-9。

そして、ついにあの男が爆発する。次のイーグルスの攻撃で、アジャイが14ヤードのランでファーストダウンを取ると、直後の攻撃ではなんと46ヤードを走り、そのままタッチダウンランを決める。次元の違う走りというのはこういうことである。何でマイアミ・ドルフィンズは、この男を全く生かしきれなかったんだろう。不思議で仕方ない。これで31-9、3タッチダウン差以上の点差が開き、もう試合は決まった。客席は大歓声が止まらない。このまま第2クォーターが終了。
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後半になり、第3クォーターのイーグルスの攻撃、アジャイのランに刺激されて、ルーキーのコーリー・クレメント、さらにエースのルギャレット・ブロントも抜群のランを見せる。このランユニットは最強じゃないかと思えてくる。これにウェンツのパスがあるのだからイーグルスはすごい。たっぷり7分半もの時間をかけて攻め込み、最後はクレメントが2ヤードを走り込みタッチダウン、38-9となった。イーグルスファンは笑いが止まらない。イーグルスファンは陽気で、自分のような部外者も喜んでいると、すぐに仲間のように受け入れてくれる。今日はタッチダウンソングは何回かかるんだという大騒ぎである。そういえば、以前来た時も、試合終わりで会場前を歩いていたら、食べていかないかとテールゲートパーティーに誘われたのもフィラデルフィアだったなと思う。

その後、双方の攻撃がパントで終わり、第3クォーター残り5分。イーグルスのディフェンスは完全にブロンコスの攻撃を見切ったか、再びオスワイラーのパスをインターセプト。また敵陣11ヤードから攻撃を始めることになったイーグルスは、ウェンツがすぐにアルション・ジェフリーにタッチダウンパスを通し、これで、44-9。客席はもうどこまで点取るんだ? もういいんじゃないか?という感じになってきた。
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イーグルスディフェンスはさらに乗ってきて、オスワイラーを捕まえ、サックを浴びせるようになった。しかし、第3クォーター最後のプレイでコーディー・ラティマ―へのパスを許してしまい、敵陣に侵入されてしまう。第4クォーターになり、ここでブロンコスは意外な人物が生きてくる。ランニングバックのジャマール・チャールズ。そうチーフにいたあのレジェンドプレイヤーである。ランにパスキャッチにと活躍を見せ、ブロンコスは敵陣1ヤードまで迫り、最後はオスワイラーがトーマスにタッチダウンパスを通し、ブロンコスはこの試合、初めてのタッチダウンを取り、44-16に。

第4クォーターになると、カーソン・ウェンツはもう出て来なかった。それだけ楽勝の試合だった。代わりに登場したQBは、この人も出戻り、あのニック・フォールズである。フォールズは自陣27ヤードからの攻撃で、ブロンコスのラインバッカー(LB)、ボン・ミラーにサックを浴びる。そしてファンブルをしてしまい、それをデンバーのLB、ブランドン・マーシャルにリカバーされ、そのまま走り込まれて、タッチダウンを喫してしまう。アッという間にに44-23に。何だかなあという感じが会場に漂う。

ここまで何気に気付いていない感じもあったが、ブロンコスはディフェンスがどちらかと言えば、かなり強いチームである。サック王、ボン・ミラーがいるし、コーナーバック(CB)のアキブ・タリブもいる。それがウエンツからフォールズに変わった途端にこうなる。独特のディフェンス回避能力、カーソン・ウェンツのすごさというのをあらためて認識させられたような場面であった。しかし、学生時代に目覚ましい成績を残したとはいえ、いわゆる超強豪校とは対戦もしていないローカルな大学の選手が、ここまでになると見抜いたスカウトもすごいし、2年目でここまで成長させたコーチ陣もすごいもんだと納得した次第である。

しかし、次の攻撃でフォールズはWR、ネルソン・アゴラーに35ヤードのパスを通した。アゴラーは南カルフォルニア大学出身で、彼の学生時代のプレイも自分は見ている。結局、この日、フォールズの投げたパスはこれだけだった。敵陣4ヤードまで進んだイーグルスオフェンスは、最後クレメントが走り込み、51-23。結局、これがこの日のゲームの最後の得点になった。その後もオスワイラーは、ほとんどパスを通せずに試合終了。イーグルスの最後の攻撃ではランニングバックに2年目のウェンデル・スモールウッドが登場。なかなかの走りを見せたが、どんだけRBがいるんだよって感じだった。
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イーグルスは、カーソン・ウェンツがパス27回中15回成功、199ヤードに4タッチダウンパス。アジャイが77ヤードラン、1タッチダウン。クレメントが55ヤードラン、2タッチダウン、15ヤードレシーブ、1タッチダウン。アルション・ジョフリーが84ヤードレシーブ、2タッチダウン。トレイ・バートンが41ヤードレシーブ、1タッチダウン。一方、ブロンコスはブロック・オスワイラーがパス38回中18回成功、208ヤード、1タッチダウン、2インターセプトに3サックを浴びた。それでも5割パスが成功しているのが意外だった。デマリアス・トーマスが70ヤードレシーブ、1タッチダウン。コーディ・ラティマ―が51ヤードレシーブ。なんとラッシングはチーム全体で35ヤードしかあげられていなかった。どんなにすごいんだ、イーグルスディフェンス。ディフェンスはボン・ミラーが8タックル、1サック、1ファンブルフォース。ブランドン・マーシャルが5タックル、1サックといったところだった。ブロンコスのディフェンスは決して機能していなかったわけではない。

イーグルスが攻守ともに圧倒した試合で、正直、イーグルスファンには悪いが、後半はダレるくらいのゲームだった。なので、余計にデジカメを失くしたことが響いてきたのだが…。結局、この時はまさか、イーグルススーパーボウルに出場し、ましてや優勝するなんて考えもしなかった。しかも、絶好調のカーソン・ウエンツが14週に怪我をしてまさかの離脱、そして、あのもう終わった選手とすら思われていたニック・フォールズが代役として、残り3週そしてプレーオフスーパーボウルを戦っての勝利である。こんな状況になると誰が考えただろうか? 信じられないとはこのことだ。かつてドノバン・マクナブでもマイケル・ヴィックの時代でも決してスーパーボウルに勝つことなんてないと思われていなかったイーグルスが勝ったのだから、現実はわからないものである。

わからないといえば、大学フットボールでは、去年見に行ったジョージア大学が、今シーズンはまさかの全米一を決めるチョンピオンシップにまで出場するという事態になった(結果、ジョージア大は負けたが)。それでも去年見た選手が多数残っていたのだから、おもしろいものだ。ただ、昨シーズン、先発を務めたクォーターバック、ジェイコブ・イーソンはシーズン序盤にケガで離脱したまま、1年生の地元ジョージア出身のQB、ジェイク・フロムにポジションを奪われる形となり、それから先発出場することはなかった。これも運命というのか、皮肉なものである。ジェイコブ・イーソンは出場機会を求めて、地元ワシントン大学に転校したらしい。彼はあえて出場機会をすぐに得られないと思って、地元のワシントン大学への進学をやめて、ジョージア大学に進学したのだが…。これもドラマである。

スーパーボウルMVPを獲得したニック・フォールズだが、翌シーズン、カーソン・ウェンツが故障から回復すれば、チームはやはりどう考えてもウェンツを選ぶはずだから、去就が注目されていた。フォールズは自分を積極的に評価してくれるチームを選べば、黄金時代を取り戻すことができるはずだったのだが、結局イーグルスと再び契約して残留することになった。これこそ全くわからない。ウェンツの怪我が長引く可能性があるということだったが、それこそバックアップのQBは死ぬほどいる。ウェンツが戻ってくればそのまま交代する、今の地位を選ぶ意味がわからない。ウェンツの才能を自分が一番わかっているということなのか。自分はブロック・オスワイラーみたいに過大評価されて失敗したくない、限界をわかっているということなのだろうか。でも、イーグルスは、かつて自分を見限って放出したチームだということを忘れているのか。その時とヘッドコーチはちがうといえども。

やはり、デジカメは見つかることはなく、そのまますぐにニューヨークに向かうことに。時間は16時半を過ぎていたので、できるだけ車が混む時間になる前に着ければと車を走らせた。