2015/11/14 Stanford Cardinal vs. Oregon University Ducks @ Stanford Stadium (NCAA Football)

 3日目はカリフォルニアへの移動日である。この日はほんとにエライ目に遭った。飛行機の出発時刻は朝7時、サンフランシスコへは4時間くらいで着いて、でも時差が3時間あるから、午後からゆっくり移動してなどと考えていた。朝もまだ暗いうちからホテルをチェックアウトし、JFK空港へと向かう。しかしマンハッタンといっても、暗いと標識がわかりづらい。しかもニューヨークだから、曲がるべき重要な角が、実に狭い道だったりして見逃してしまったりして、迷うこと迷うこと限りない。当初、レンタカーを空港に返しても1時間以上の余裕を見て出発したはずなのだが、気がつけば、辺りは明るくなってきた。そして、空港に着いたら着いたで、レンタカーの返却場所へ行く道がわからず、なんとJFK空港を2周もしてしまうという最悪の状況に。もう飛行機に乗れるかどうかもわからなくなってきた。

 やっとのことで、レンタカーを返す場所に着いて(今、思っても何でここに着くのにこんなに迷ったのかわからないほど、すぐの場所だった)、ダッシュでカウンターに向かう。自動チェックイン機で手続きした頃には、もう出発の20分くらい前だった。しかし、自分のチェックインはできたのだが、バゲッジのチェックインはカウンターでしかできなかった。そして、カウンターには鬼のように人が並んでいる。これは並んでいては無理だと思って、近くに係員にバゲッジのチェックインだけだから先にさせてくれと言うが、ダメだという。大きめのスーツケースなので、手荷物にするわけにはいかない。こんな時こそ日本の航空会社だったらなあと、つくづく思った。ちゃんと特別に荷物だけ早めに通してくれて、ゲートへ走れと言ってくれるだろう。しかし、ここはアメリカで、しかもアメリカン航空なのだ。行列をあきらめて、プライオリティーの窓口に係員に言うが、そこは人もいなくて待っているだけのくせに、何の便宜もはかってくれず、一切の処置をしてくれない。すでにチェックインはしてるのだから、間に合わない、荷物だけ何とかしてくれ、乗れないんだと言っても、待てとしか言わない。ほんとにクソみたいな航空会社だ。今、思うとここで100ドルくらい握らせばよかったのかもしれないが、そんな余分な金はない貧乏旅行だからどうしようもない。

 結局7時の便には乗れず、カウンターの列で一時間ほど並んで、次の便に振り替えてくれて、サンフランシスコに向かうことに。次の便は9時なので、せっかく暗いうちに出発したのに、2時間以上も空港でただ待つだけになってしまった。次の便は結構空いてて、席に余裕があったからよかったが、満席だったらと思うとゾッとした。そして、ダッシュで移動してチェックインまでしていたからこそ、振り替えてくれたのであって、これがさらに時間が遅れて、チェックインもできなかったとしたら、エアチケットは紙クズになって、新たに購入し直さなければならなかったのだろうと思うと、この状況はまだラッキーだったんだとポジティブに考えることにした。

 サンフランシスコに着いたのは13時過ぎだった。当初、予定した時間と、3時間は遅れている。今日行く予定にしていたのはスタンフォード大学で、対オレゴン大戦のフットボールのゲームで、試合の開始時間は幸いにも16時から始まることになっていたので、なんとか間に合うだろうと、先にホテルにチェックインすることにした。ホテルはその後の移動も考えて、サンフランシスコのダウンタウンにした。今回のホテルは、ダウンタウンで敷地内に無料のパーキングがある実に便利なホテル。そして、最小限の荷物で、スタンフォード大学へ車で向かう。実は、この日はスタンフォード大学フットボールの試合を観て、その後オークランドに移動し、NBAのウォリアーズの試合を観て、最後にサンフランシスコのダウンタウンでライブを観るという鬼のような予定を考えていたので、何とか朝イチの飛行機に乗って少しでもゆっくりしたかったというのがわかるだろう。
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 スタンフォードに着いたのは、すでに試合時間の30分前をきっていた。事前にパーキングのチケットは買えなかったので、飛び込みで案内された駐車場はよくわからない、結構遠い小学校の敷地みたいなところで、戻り方を忘れないようにと思って慎重に移動していると、スタジアムに着いた頃にはもう試合が始まっていた。まあ、ここまで予定通りにたどり着けただけでも喜ぼう。
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 チケットは、奮発して1階席の上の方をStubhubで取った。何せ、相手は宿敵のオレゴン大である。いつも必ず接戦になるライバル、しかし昨シーズン、オレゴンはQBマーカス・マリオタの元で覚醒し、スタンフォードは惨敗。オレゴンは1敗しかせずに、BCSナショナルチャンピオンシップまで進んだ。しかし、今シーズン、オレゴンはドラフトで、そのマーカス・マリオタが抜けた。スタンフォードが雪辱を期すには、最大のチャンスでもあるのだ。そじて、それを見届けようとやってきたのだ。
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 オレゴンの先発QBは、トランスファー(転校した)のQB、Vernon Adams Jr.という人物だ。元々、カリフォルニア出身で高校時代はすごい選手だったが、身長が6フィートなかったということもあって、強豪校から奨学金をもらえずにイースタンワシントン大学に進学したらしい。そこで結果を残してオレゴン大に転校してきた苦労人のようだ。しかし、スタンフォードオレゴンを叩くの好機は今だ。スタンフォードのQBはアンドリュー・ラックが抜けた後、一時期を除いて4年間先発を務めているケヴィン・ホーガンである。

 席に着いた時にはすでに試合は始まっていて、スタンフォードの最初の攻撃だった、小刻みにファーストダウンを取っていくやり方で進むが、ペナルティーもあって、結局6分ほどかけるもタッチダウンを取れず、フィールドゴールの3-0で終わる。すると、その後のオレゴンの攻撃が衝撃的だった。いきなりエースランニングバックRoyce Freemanに49ヤードも走られたかと思うと、なんと3人のランニングバックを使い分けて、パスを一切使わず、ランだけで、わずか2分半でタッチダウンをあげられてしまった。あっという間に3-7。カレッジフットボールはディフェンスは弱いとされているが、それでもスタンフォードのディフェンスは定評があるはず。これがオレゴンの底力なのかと思い知らされた。
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 スタンフォードはこれに動揺せず、QBホーガンのパスと、エースRB Christian McCaffrey(白人のRBだ、スタンフォードらしい)のランを使い分けて、相手に的を絞らせずに小刻みにヤードを稼ぎ、5分の時間をかけ、最後はQBホーガンが22ヤードを走り込みタッチダウン10-7と逆転する。すると、その後のオレゴンの攻撃で、また衝撃が走った。最初のランで、オレゴンは75ヤードを一気に走り抜けてタッチダウンを奪ったのだ。わずか数秒であっという間に逆転されて10-14。走ったのはCharles Nelson、その前の攻撃では走っていない選手で、4人のRBを使うオレゴンのすごさに驚いたが、後で調べてみたら、どちらかというとレシーバーの選手であったようだ。今年のスタンフォードのディフェンスは期待できないなと思った瞬間であり、この試合、ヤバいかもと思い始めた。
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 変わってスタンフォードの攻撃になり、第2クォーターに入る。ここで、どれだけ返せるかが、この試合のポイントになるところだが、順調に敵陣のフィールドゴール圏内に入ったまでは良かったのだが、タッチダウンを狙ったパスではなく、連携ミスのようなショートパスが、インターセプトされてしまう。全く点も取れず、オレゴンの攻撃に変わる。これは、いよいよヤバイかと思った。すると、ここまでパスを投げていないオレゴンのQB、Adams Jr.がパスを投げ始める。ショートパスではあったが、自ら走ったりもする、あなどれないQBだとわかったところで、スタンフォードのディフェンス陣はQBサックに成功。Adams Jr.の出鼻をくじき、攻撃をパントで終わらせた。スタンフォードは攻撃をラン主体に変えて、QBホーガンも積極的に走らせる。最後はMcCaffreyのランでタッチダウンを返し、再び17-14と逆転。すると次のオレゴンの攻撃では、50ヤード付近まで進まれたところで、再びスタンフォードのディフェンスがQBサックに成功、これがファンブルとなり、なんとスタンフォードがリカバー。そして、そのままオレゴンエンドゾーン前9ヤードまで走り込む、あわやタッチダウンというビッグプレイとなった! スタンフォードのディフェンスは健在だった。QB Adams Jr.とは相性がいいのかもしれない。しかし、敵陣9ヤードまで迫りながら、タッチダウンは奪えず、フィールドゴールに終わる。20-14。前半残り2分を切っていた中で、後から思えば、ここでギャンブルをしてもよかったのではと思ったところ。オレゴンは一発が怖いだけに。
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 そして、オレゴンは勝負をかけてくる。これまでショートパスしか投げていなかった
QB Adams Jr.だが、オレゴン大まで登りつめた苦労人だけあって、パスの能力も非凡なものを見せつける。50ヤード付近まで進めると、初めてロングパスを投げ、これがWRの D. Carringtonにつながるタッチダウンパスに。オレゴンは再逆転し20-21に。残り40秒ちょっと。それでもあわてないのがスタンフォードだ。タイムアウトを巧みに使って、フィールドゴール圏内まで進み、残り1秒で49ヤードのフィールドゴールを決め、スタンフォードが23-21と再逆転して前半終了。これはすごい試合になってきた。
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 後半はオレゴンの攻撃から。いきなりQB Adams Jrの30ヤード超えのパスで敵陣に入ると、最後はエースRB、Royce Freemanの19ヤードタッチダウンランで、オレゴンがまた逆転し、23-28に。ここでスタンフォードに焦りが出たのだろうか、次の攻撃では敵陣まで攻め込むもののタッチダウンを奪えず、さらに43ヤードのフィールドゴールも失敗してしまう。次のオレゴンの攻撃はパントに抑えたものの、その後のスタンフォードの攻撃では、初めてファーストダウンも取れず、QBホーガンがサックを浴び、パントで終わってしまう。するとオレゴンの攻撃は、スタンフォードのペナルティもあって、50ヤード付近に進むと、Adams Jr.のロングパスが通り、これが49ヤードタッチダウンパスとなった。ここでオレゴンが23-35と突き放し、12点差となった。代わったスタンフォードの攻撃では、ホーガンも負けじとパスを成功させ、敵陣に侵入したところで、いよいよ第4クォーターに。最後はスタンフォードが逆転して勝つのだろうと、ファンはまだ信じていた。
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 QBホーガンは WR R Stallworthにターゲットを合わせて距離を稼ぎ、最後はTEの
Taboadaにパスを合わせて見事にタッチダウン、30-35と迫る。そして、ディフェンスは次のオレゴンの攻撃をパントに抑えた。残り約9分。逆転の布石はできていた。しかし、自陣48ヤードまで進んで、QBホーガンが走ろうとしたところで、オレゴンのディフェンスに捕まってしまう。なんと、これがファンブルとなり、しかもオレゴンにリカバーされてしまう結果に。ほぼ中央の位置からスタートしたオレゴンは、ランニングバックを代わるがわる代えて、ランで進ませる作戦を取る。そして、オレゴンはこの試合初めてのフィールドゴールを決めて、30-38に変わる。7点のタッチダウンでは追いつけない微妙な点差。そして残り時間は約5分。
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 それでもQBホーガンはターゲットを変えて、パスを投げ分け、距離を稼ぎ、敵陣20ヤード近辺に攻め込む。このあたりはさすがスタンフォードだ。しかし、McCaffreyのランで8ヤード進むが、あと2ヤードが取れない。ついにはQBホーガンが自ら走り込もうとするが、これがまたオレゴンのディフェンスに捕まり、ファンブルとなってしまうのだ。しかも、またもリカバーしたのは、オレゴンだった。うーん、同じことの繰り返しである。残り約2分。会場にため息が漏れる。しかし、ここでディフェンス陣が踏ん張った。ランで時間をつぶそうとするオレゴンタイムアウトを使って時間を止めて進ませず、ついにはストロング・セーフティーのWhitfieldがQB、Adams Jr.をサック、パントさせることに成功した。残り約1分、自陣49ヤードからの攻撃、タイムアウトは使いきった。最後のお膳立ては揃った…。
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 QBホーガンのパスもさすがに通らなくなるが、それでも、敵陣35ヤード、24ヤードと進む。次のパスはインコンプリートとなったのだが、相手ディフェンスのペナルティーがあって、敵陣14ヤードまで迫る。さらに、オレゴンディフェンスがフィールドに12人出したというペナルティーがあって、さらに敵陣4ヤードまで迫った。ここで決めれば全ては変わる。そこでQBホーガンは、TEのTaboadaに見事なタッチダウンパスを決めたのだ。残り10秒。スコアは36-38となった。ここで2ポイントコンバージョンを決めて、誰もがオーバータイムに突入すると思っていただろう。しかし、ホーガンが放ったパスは、連携ミスだったのか、どっちらけみたいなパスで失敗。スコアは36-38で変わらず。期待はアッという間に泡となった。最後はスタンフォードオンサイドキックを試みるも失敗。試合は終了。ほぼ4時間にもなった試合、終わってみれば、あの時の期待は何だったという試合であった。そして、デジカメのバッテリーは切れて、最後はロクな写真も撮れなかったという次第である。
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 勝てる試合を落とすというのは、こういうことを言うのだろう。ホームでの試合、しかも相手は宿敵オレゴン。ミスが試合を決めるというのを見せてもらったゲームだった。結局スタンフォードは、カンファレンス戦で負けたのはこの1敗だけだったものの、この1敗がひびき、ナショナルチャンピオンシップには出られず。ホーガンはこれで卒業。アンドリュー・ラックほどのインパクトは残せず、ドラフト5巡目でカンザスシティ・チーフスに指名された。そして、スタンフォードはまた新しい時代を迎えることになる。先発QBは誰が務めるのか。強豪ひしめくPAC12カンファレンスの中で、輝き続けることができるのか、期待しよう。