今さらだが、私の「2007年のベストアルバム」はこれだ!(前編)

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 もう2008年も半ばになるというのに、いまだに2007年を振り返っているのだから、おめでたいものだ。ほっといてほしい。年末にアメリカに行って、年が明けてからアホみたいに仕事が忙しくなって、未だに落ち着いてはいないのだが、現在なんとか少し余裕ができたのだ。毎年この振り返りは自分のけじめとしてやっておかないと、何か抜けたような気持ちになるので仕方がない。しかし、同じことを半年後もまたやるのかと思うと、今から途方にくれるのだが…。ちなみに私の2006年のランキングはこうだった。

   1.『Pick A Bigger Weapon』 THE COUP 
   2.『Food & Liquor フード&リカー』 LUPE FIASCO ルーペ・フィアスコ
   3.『Game Theory ゲーム・セオリー』 THE ROOTS ザ・ルーツ
   4.『Costello Music コステロ・ミュージック』 THE FRATELLIS ザ・フラテリス
   5.『Yo Yo Yo Yo Yo ヨーヨーヨーヨーヨー』 SPANK ROCK スパンク・ロック
   6.『Loose ルース』 NELLY FURTADO ネリー・ファータド
   7.『Back To Black』 AMY WINEHOUSE
   8.『Return To Cookie Mountain リターン・トゥ・クッキー・マウンテン』 TV ON THE RADIO ティーヴィー・オン・ザ・レディオ 
   9.『Kingdom Come キングダム・カム』 JAY-Z ジェイ・Z
   10.『Ink Is My Drink インク・イズ・マイ・ドリンク』 PANACEA パナシア

 エイミー・ワインハウスは2007年のランキングに入れている評論家も多いのだが、あくまで売れてから2007年に日本盤が出た結果論の評価でしかない。実際に発売されたのは、2006年でないとおかしい。聴いた当時からこれはすごいなと思ったものだが、ここまでブレイクするとは思わなかった、日本盤が出たことも驚きだったが、まさかグラミー賞も最多受賞とはね。もうちょっと上位に入れていたら大いに自慢できたんだけど、私は7位にしか入れてなかった…。でも当時は店頭になくて、ネットで注文して買ったくらいの盤だったものが、こんなにウケて売れたことは素直にうれしい。 

 今見てもこの年のランキング付けには納得しているし後悔しているものもない。それだけTHE COUPの衝撃度は私の中ではすごかったものだし。過去のアルバムもすべて買って聴いたほどで。正直、次の作品がいつ出るのか、何の音沙汰もないのでちょっと心配ではありますが。

 2007年度の各音楽雑誌のベストテンの傾向は、一言で言えば、突出したものすごい作品がなかったということであろう。フラテリスにしても、2007年度のランキングに入れている雑誌などもあってよくわからん。その証拠に、通常のリリース時期から言えば、来年度のランキングに入ってもおかしくないはずの、RADIOHEADレディオヘッド『In Rainbows イン・レインボウズ』が、ほぼどの音楽雑誌でも1位を取るかのような高順位で評価されていることがあげられる。CDのリリース時期はほぼ年末だったのだが、実際この作品はその約1か月前に、まずインターネットでのダウンロード販売という形態をとっていたこともあり、さらにその金額をダウンロードする人間が自由に決めていいということもあって、大いに話題になった。どちらかと言えば、その話題のインパクトがかなり先行していたことがぬぐえないかと思うのだが、レディオヘッドの評価に懐疑的な私が言うのは置いておいても、それにしても年間ベスト1にするほどの作品か? 

 確かにレディオヘッドとしてのリリースはしばらくなかったし、ファンとしては歓迎する気持ちもわかるが、相変わらずのゆるくて暗い展開にききづらい高音のボーカル。最近のものと特別変わっているところは何もない。『パブロ・ハニー』の頃に戻ったなんていうなら少しは興味もあるが、全然そんなわけでもないし。2曲目の「BODYSNATCHERS」はちょっとおもしろいかと思ったが、ほんとそれくらいだ。聴いていくたびに、またこんな感じか、またこういうのなのねというのが延々続く、いつものレディオヘッド。もうほんとに盲目のレディオヘッド信仰はやめてほしいとつくづく思う。

 その他の傾向としては、相変わらず『ロッキング・オン』はアークティック・モンキーズが好きで、『クロスビート』はホワイト・ストライプスが好きで、『スヌーザー』はクラクソンズが大好きなんだということだ。それぞれの雑誌に色々と押すバンドがあったりして多様性が際だってきたということは、歓迎すべきことなんだろうとは思う。

 しかしこのロック系洋楽雑誌が言うことで解せないのは、わずかながらもヒップホップやブラック・ミュージックにも理解を示す部分があるにもかかわらず、2007年にはヒップホップに傑作がないという言い草だ。そんなことはない。むしろ2007年のヒップホップは傑作ぞろいだったはずだ。所詮、エミネムやJAY-Z、よく言ってカニエ・ウエストほどしか聴かないロック系洋楽雑誌にそんなことは言われたくない。もうちょっと色んなものを聴いてくれ。聴いてから書いてくれ。誤解をうけるだけである。

 ていうかHIPHOPはまだしも、今や少しラジオでも聴いていれば流れてくるはずのR&B系の音楽が、この手のロック系洋楽雑誌の年間ランキングに入ることは、相変わらずほぼ皆無だということだ。去年で言えばエイミー・ワインハウスのみ。それもグラミーをあんだけ取ったからようやく認めたということなんだろう。この辺のロックとR&Bの線引きというのはどうなっているんだろう。この障壁は未だベルリンの壁のように高いというべきだろう。ということで話が長くなったが、私のランキングだ。


 第10位 『GRADUATION グラデュエーション』 Kanye West カニエ・ウエスト(ユニバーサル UICD-9040)

 私が2005年のベストにあげた2作目『レイト・レジストレーション』から、まる1年の空白があってリリースされた3作目である。何せこの2作目の衝撃度はすごかった。当時(というか、今でもそうだが)多分これからHIPHOPでこれ以上のことができるアルバムはしばらく現れないだろうと思ったほどだった。その次作ということで、かなり期待していたのは事実だが、聴いてみると、うん?と思ったのが最初だった。結果的に後に残るような強烈な印象を残す曲が「Stronger」くらいしかないのだ。最終的には、蟹江手を抜いたのかな?とも思わざるを得なかった。

 ケチのつけはじめはタイトルの『GRADUATION』だった。『卒業』つったって、『カレッジ・ドロップアウト』したやつが、『レイト・レジストレーション履修登録遅れ)』して、何ですぐ卒業できんのよ?というツッコミが誰でも入ったかと思う。別に3枚しかアルバ
ムを出さないってわけじゃないんだから、そこは『留年』とか『落第』とかであえてもっと遊んでほしかったというのがまずあった。本人的には4部作の3作目ということらしいが、それにしてもつまらんのとちゃうと思ったのが、そこは別にどうでもいいことだ。

 「stronger」にしたところで、強烈な印象を残す曲ではあるが、ダフト・パンクということでイメージできない曲じゃない。おそらく蟹江とダフト・パンクが組めば、こういう感じの曲になるんじゃないかとある程度想像できるものだ。蟹江は自分だからこそ、ダフト・パンクと組んで、ダフト・パンクのビートでライムすることができるということを強調して言っているが、確かにまだ今の時代はそうかもしれない。しかし『レイト・レジストレーション』を通過したリスナーは、もうすでにそれ以上の別のことを期待しているのだ。イマイチこの曲がロングヒットにならなかったのはそういうこともあるのではないだろうか? 自らHIPHOPのリスナーを次のレベルにまで引き上げた功労者なのに、そのことに蟹江が気付いてないのであれば、悲しいことと言わざるを得ない。

 『レイト・レジストレーション』における「タッチ・ザ・スカイ」や「ダイアモンズ・フロム・シエラレオネ」のような曲が何度聞いてもないんですよね。ここでこれを使うか?こういう風に持ってくるか?みたいに驚かされる、そういう曲が今作には少ない。スティーリー・ダンやCANをサンプルに使ってはいるが、それも知る人ぞ知る派手ではない地味な曲だ。そうかと思えば「ヘイ・ママ」みたいな哀愁のある曲もない。(『レイト…』には日本盤のボーナストラックにしか入ってないんですが、『ウィ・キャン・メイク・イット・ベター』っていう良い曲もあります)あえて言うなら、『ビター・スウィート・ポエトリー feat.ジョン・メイヤー』なのでしょうが、この曲も日本盤ボーナストラックには入っているが、実際のアルバム収録曲からははずされたというわけで…。ほんとに蟹江の意図がわからないというか、一体何があったんだろうと思わざるをを得ないのが、今作『Graduation』というわけだ。手を抜いたのでは?と思ったのもそういうわけだ。

 このアルバムは蟹江自身がずっと取りたいと言っていた、アルバム・オブ・ザ・イヤーもソング・オブ・ザ・イヤーも取れなかった。この結果を教訓としてどう次に生かすのか、それを期待したい。

 個人的なランキングとしては、アルバムとしてやはり他の人にこれと同じことができるかと言えばできないことは確かなので、ランキングには入れた次第である。何とか次作には期待したい、そういう意味を込めてあえて10位に入れた。10位のランキングのものにここまでスペースを使うのか?と思うだろうが、これも大好きな蟹江だからしょうがない。以下は反省して、スペースを少なくします。


 ということで、今回は前編後編と2回に分けて済ませるつもりだったが、またかなり長くなってしまった。5000文字だと、10位しか入らへんかった。続きは次回、また次々回ということで。