今さらだが、私の「2007年のベストアルバム」はこれだ!(中編)

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 ということで、私のランキング、前回からの続きです。

 第9位 『I AM アイ・アム』 Chrisette Michele クリセット・ミッシェル(ユニバーサル UICD-9044)

 新人ながらものすごい出世ぶりのシンガーである。JAY-ZにNASと大物に次々にフィーチャーされ、今年はザ・ルーツの新作にも参加している。そもそも売り込みからして、たまたま話を聞いてくれたデフジャムで、LAリードの前で次作の曲をアカペラで歌って契約が決まったという。そんな彼女が昨年に出したファーストアルバムがこれだ。

 彼女のすごいところは何かというと、見た感じシンガーに見えないことだ。どちらかというと音大で勉強したピアニストのみたいだ。ジャケットやプロモーションの写真などをみても、とても育ちのいい印象を受ける。特にジャケットの中の写真には魅せられた。ビヨンセのような絶対的な美人ではないのだけれども、人が良さそうな何ともいえないかわいらしさにあふれている。いわゆるストリートで歌ってきましたとか苦労しました感は全然しない。でも歌を聴くとなかなかの声量のシンガーなのである。ちょっとダイアナ・ロスの声に似てなくもない。ミニー・リパートンにもちょっと似てたりするか?

 さらに彼女自身がフリー・スタイルをやりたいと言っているように、ジャンルを限定されるのを嫌っていることだ。小さい頃はゴスペルを歌い、学校でジャズ・ヴォーカルを勉強したそうだが、ロックもヒップホップも大好きだというのに驚く。アルバムには見事にそんな幅広さがあふれていて、飽きさせない。参加プロデューサーも豪華だ、ベイビーフェイスにウィル・アイ・アム、サラーム・レミにジョン・レジェンド。それらをそれぞれに歌い分けている感じも見事だ。これからもどんどん客演が増えていくんだろうという未来を感じさせる。個人的にはシングルにもなったい痢屮戰好函Εブ・ミー」がベストか。彼女の書く歌詞も、あくまで普通の女の子の日常であり、そんなところもウケる一因になっているんだろうと思う。

 さらに彼女の来日コンサートを初めて行ったビルボード・ライブで見た。写真の印象とちがって、かわいいというより意外とたくましい感じに驚いた(シンガーなんだし、当然と言えば当然だが)。一つ気付いたのは、多分この人、年とると太る体型なんだろうなということだ。これからキャリアを重ねて貫禄が出てくるのもいいが、できれば節制して太らないでほしいなと切に願ったものだ。そんなことはどうでもいいですな。


 第8位 『WEEKEND IN THE CITY ウィークエンド・イン・ザ・シティ』 Bloc Party ブロック・パーティー (V2 V2CP-320)

 残念ながらこの作品は、『クロスビート』以外の雑誌では大して評価されていないのだが、その理由がよくわからない。最近のUK、US含むロックバンドの中では、すごい文学的歌詞を書くし、サウンドにしてもヘヴィだったり、ノイズだったり、ダンスミュージックだったり、メランコリックだったりと、この次何をしてくるのか予想がつかないという面でも聴いててもっとも期待できるバンドだと思うのだが。

 特にアルバムという形態が全く重視されていない傾向において、週末の深夜の街中に起こる出来事をテーマに描くコンセプトアルバムをあえて作って見せるところも、作品としての質を以下に重要視しているかを示すところだろう。アメリカに行った時もさんざんかかっていた、フォール・アウト・ボーイやモーション・シティ・サウンドトラックもシングルとしての曲は魅力的なのだが、アルバムを通して聴くとどうも同じような曲ばかりで通してなかなか聴けなかったりする。(モーション・シティ・サウンドトラックは以前に比べてムーグをフィーチャーするようになってすごく聞きやすくなったのだが、アルバムを通しても何でもっとキーボードを生かさないのか、すごく疑問である)話がそれたが、彼らのように考えてアルバムを作っているブロック・パーティーをもっと評価しなくて、音楽雑誌として、音楽業界の将来を考えても正直それでいいのかとも思わざる得ないのだが。

 確かにブロック・パーティーに関して言えば、ファーストの『サイレント・アラーム』の方が良かったなんていう声も多い。私に関して言えば、『サイレント・アラーム』がリリースされた頃は、彼らのことをちゃんと聴いていなかったので、完全にこのセカンドから知った形である、しかもリリースされてだいぶ経ってからだ。実はその当時時期は微妙に違うが、同じ名前のブロック・パーティーという映画(こっちの方は『Block Party』ですが、あのフージーズ再結成のライブを撮っていた作品ね)があったので、そっちの方に夢中だったわけだ、何で同じ名前のバンドがあるねんと思っていた…。その後あらためて彼らのファーストを聴いたが、私個人としては、一つ一つの楽曲の魅力としてはファーストの曲がインパクトはあると思うけど、セカンドの方がアルバムの作り方や曲のバリエーションを取ってもおもしろいと思った。

 実は彼らに期待しているのは、このセカンドをリリースした後、サードアルバムに入る予定と言われているが、あらたに『Flux』というシングルを発売されており、これがまたさらにノイズを生かしたダンスミュージックにシフトしている作品で、さらに彼らの新たな進化を感じることができて興味を持ったからだ。しかもこのビデオクリップが、彼らの趣味を表しているのか、怪獣を使った特撮物でかなりおもしろい。ヒーローの方は、ウルトラマンのつもりなのだろうか、どちらかと言えばスペクトルマンみたいな感じなんだが…。元々かなりの曲のクリップを作っている彼らだが、全く新しい趣向のこの作品がどういう風に次のアルバムを形作るのか、期待も込めて今回あえてランキングに入れた。


 第7位 『LIFE IN CARTOON MOTION ライフ・イン・カートゥーン・モーション』 Mika ミーカ(ユニバーサル UICU-9037)

 この人も意外に音楽雑誌では評価をされていない人だ。ただ評価するしない以前にこんなに売れてしまったのだから、いくぶんしょうがないかもしれない。ライターにしたって、そんなに売れてる奴を今更ほめたところで、悪いことはあってもいいことはないだろうし。

 たまたま聴いた曲「グレース・ケリー」がすべてだった。圧倒的な存在感と強烈な印象を残した曲で、その後その曲がUKチャート1位になった曲だと聞き納得した次第である。真っ先に浮かんだのはやはりクイーンの影響だった。と同時にこれだけの曲がバンドではなくて、一人のソロアーティストが作った曲だと知ってさらに驚いた。とんでもない奴が出てきたと思った。アルバムを聴いて独特のポップセンスの他の楽曲を聴いて、さらにその関心は深まった。どこまでも明るい曲調に彼のハイトーンボイスが絡み、ストリングスやブラスもアレンジした凝った曲、でも意外に歌詞は皮肉丸出しだったりする。しかもアルバムのアートワークも自分でデザインしたという。何じゃこいつは?って感じである

 MIKA自身は現在24歳、レバノンで生まれ、戦火を逃れてパリやロンドンで暮らしていたという。小さい頃からピアノや声楽のレッスンを受け、音大で学んでいたらしい。やはりクラシックの素養がある人だった。おもしろいのは彼の音楽への傾倒が、いじめが原因だったということらしい。これだけやたらと明るいポップな曲やカラフルなアートワークも戦争から逃げていた閉塞した少年時代、いじめと戦ってきた裏返しなのかと思えば、それはそれで納得できるものだ。

 個性的な音楽はやはりコンプレックスの強い者からこそ生み出されるのか? それこそマシュー・スウィートしかり、ブレンダン・ベンソンしかり。ウィーザーしかり。このMIKAは宅録野郎だったというわけではないようだけど。いずれにせよ、次の作品がこれほど楽しみな人もいないんじゃないか? さらにクイーン路線に行くのか(これが一番望まれているのか、何やかんやとクイーン好き、フレディ・マーキュリー好きの人は多いし)、それともエルトン・ジョン路線なのか、デヴィッド・ボウイ路線なのか、それともこの一作だけで終わってしまう人なのか、その答えはすぐに出るだろう。


 ということで、さらに続きは次回ということで。これは3回でも入らんなー。5000文字っていう制限は昔からだっけ? つらいなー。