音楽雑誌が総括した「2006年のベストアルバム」を自分なりに総括してみる! その①「クロスビート」

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 ということで、予告した通り各音楽雑誌が総括した「2006年のベストアルバム」を、自分なりに総括してみるわけである。

 「クロスビート」(シンコーミュージック) 2007年2月号
 
 第1位『ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット』
     Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not
     アークティック・モンキーズ Arctic Monkeys
 第2位『ステイディアム・アーケイディアム』 Stadium Arcadium
     レッド・ホット・チリ・ペッパーズ Red Hot Chili Peppers

 この雑誌には、私には少なからず思い入れがあった。80年代後半から90年代はじめ、私が学生時代の頃は、一番勢いがあって(一番売れていたというわけでは決してないが)、ロックというジャンルにとらわれず、ミクスチャーやヒップホップ、ブラックロックというものをどこよりも積極的に、今現在最も勢いのあるものとしてそのまま取り上げていたように感じた(その後もマノ・ネグラやレ・ネグレス・ヴェルトなどのフレンチロックやゴーキーズのようなごった煮バンドにも力を入れていたように思う)。

 何せ、私がブラックミュージックそしてヒップホップに確実に影響されていったのも、この雑誌があったからと言っても過言ではない。当時、パブリック・エネミー、フィッシュボーン、リヴィング・カラーのブラックミュージックの3ユニットを前面にプッシュしていた時期で、それが私には衝撃的に写り、今まで積極的に聞いてこなかったことをとにかく後悔し、人生観すら変わってしまったと言ってもいい。

 しかし、今この雑誌にその当時の勢いを少しでも思い起こせるものはない。いつの頃からか完全に白人がやる音楽しか取り上げなくなくなってしまった。もちろん白人なので、エミネムは大特集する。他の黒人ヒップホップには見向きもしないが。なぜそんなつまらない分け方をするのか、ほんとにわけのわからない雑誌である。

 この雑誌のベストアルバムを選考する基準は、約40人の評論家やライターがセレクションした10枚のアルバムを単純に集計して決めるというものである。他の雑誌と違って、その機械的な手法には好感が持てる(その人選には大いに問題があると思うが・・・もう10年以上も同じメンバーばかり)

 ただこの雑誌に関しては、黒人音楽を積極的に取り上げていた頃の名残りもあって、何人かはブラックも聴く評論家やライターもいることにはいるので、救いはある。(でも彼らは逆にブラックしか聴かなかったりするのだが・・・)。それも結局多勢に無勢。ほとんどの評論家は、コーネリアスは聞いてもブラックミュージックは聴きもしないらしい。ランキングトップ10内に、ブラック寄りで入ったのは、ナールズ・バークレイのみ。昔は絶賛していたはずのプリンス『2131』は挙げる人間すらいなかった(年間ベスト10の傑作かと言われればちょっと違うかもしれないが)。個人的に、ロックではシザー・シスターズがおもしろかったのだが、どうもこれはライター陣にとっては色物でしかなかったらしい(中にはランキングに挙げる人もいたが)。いずれにしてもかなり偏っていることに変わりはない。

 1位は、アークティック・モンキーズ。これに関してはとやかく言わないが、雑誌が取り上げるのが好きそうなバンドには違いない。ただ個人的には、ストロークスの時ほどのインパクトがあったかというと、疑問ではある。2位は相変わらず、手放し絶賛のレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。「冗漫な印象が一切ない」「尽きない想像力、鋼の結束力、世界一の演奏力」だそうだ。何でそうなのだろうか? どう考えても意味のない2枚組にした配分と構成、爆発的な魅力がある曲はないし、そもそも目新しく感じた曲すらほとんどなかったけど。ライヴは新曲以外やる曲は毎回変わらないし。いつまで彼らをここまで持ち上げるつもりなのだろう? 

 このアルバム制作時にフリーが脱退を考えていたらしいことを紹介していたのも、このクロスビートだったが、レッチリの昔を知るものならばそれはかなり納得の話でもあるのだが、結局それも美談にしてしまうだけ。レッチリがほんとにこれからもこのままのスタイルでいくのか、ある意味見物である。その時にこの雑誌が何て言うのか、楽しみに待っておこう。