2014/11/8 Michigan State Spartans vs. Ohio State Buckeyes @ Spartan Stadium (NCAA Football)

 翌11月8日は朝から移動である。今回の旅で唯一初めて出かける街、ミシガン州イースト・ランシングである。ここはミシガン州立大学のある大学街だ。一昨年にはミシガン大学には行った。ついに今年やっとミシガン州立大学に行けるスケジュールが組めた。ミシガン州立大学のアスレチックチームの愛称はスパルタンズ。バスケットボールからフットボール、アイスホッケーのチームもある名門中の名門である。チームカラーは緑と白。つまり元々は農業大学であったということである。横向きの兜の兵士のマークはおそらく見たことがあるはず。バスケットではなんと言っても、あのマジック・ジョンソンの母校であり、そのほかバスケットではジェイソン・リチャードソンなど、フットボールではあのアンドレ・ライゾンやカーク・カズンズ、ドリュー・スタントンなどを輩出している。
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 LAXを朝7時半に出る便だからめちゃくちゃ早い。時差があるとはいえ、それでもデトロイトに着くのは午後2時以降。アメリカは広い。ミシガン大学のあるアナーバーはデトロイトの真西の方向だが、ミシガン州立大学のあるイースト・ランシングはデトロイトの北西にあたる。二つの街は近いようで遠い。直線距離で移動するには、フリーウェイの線も異なるので、割と面倒くさい。ミシガンの街はデトロイトから放射線状に街が広がっている。距離で言うと、イースト・ランシングの方がちょっと遠い。フライトの後ですぐ運転するのは疲れているだろうし避けたかったが、仕方がない。スケジュールでは、夕方にはミシガン州立大学に着かないとダメなのだ。幸いなことに、ミシガン州自体は、それこそここ数年毎年というほど来ているし、運転も難しくない所だ。

 この日デトロイトの空港で借りたレンタカーは、カローラだった。運転席に乗り込むと、ムスタングとちがってこんなに内部が広々としていていいものかと感動した(もちろん車自体は小さいのだが)。しかし、気付いたのは、ナビに日本語モードがないことだった。これは何だ? 旧式のナビなのか、それとも新型のナビでは、もう日本語モードが廃止されてしまったということなのだろうか?(あまり日本人がアメリカでレンタカーを運転しないから?)。一応、もう一度カウンターに戻って、日本語モードがないから車を変えてくれと言ったら、変更はしてくれた。新たな車はトランティア。ヒュンダイの韓国車である。しかし、この車のナビにも、日本語モードはなかった。まあ、ナビが使う英語なんて決まり文句ばかりなので、あきらめてヒュンダイ車で出発することにした。
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 せっかく言語を英語にしたので、距離設定をいつものキロメートルからマイルに変えてみた。すると、あることに気付いてしまった。これまでは度々アナウンスが遅かったりして、フリーウェイの出入口をよく間違えたりしたのだが、運転に慣れてきたこともあるのかもしれないが、そういうことが少なくなった。それは距離をキロメートル設定にしていたからではないのかと思うようになった。マイルとキロメートルでは距離がおよそ1.4倍くらいちがう。ナビのアナウンスが入るタイミングは、マイルのモードに合わせてやっているはずで、キロメートル設定は言語を変えているだけで、距離感覚まで変えていないだろう。つまり、1マイル前の地点で入るべきアナウンスが、キロメートル設定にすると1キロ前の地点で入るのではないかと。だからキロメートル設定の場合、ずいぶん切迫したところでアナウンスが入っていたので、フリーウェイを走行している場合、間違えやすくなっていたのではないかと思ったのだが、この推測はちがうだろうか?

 それはさておき、イースト・ランシングまでの道は広くて快適だった。だが、一時間以上運転をしていると、デトロイトへの通勤圏を離れたくらいのところだろうか、突然車線の数が少なくなった。これがミシガンの田舎だということだ。まあ、でもインディアナみたいに動物の死骸をよく見かけるほど田舎ではない。郊外のいい街である。本日はミシガン州立大学フットボールチームの試合日である。さすがに大学近辺のホテルはなかなか空いていなかったので、その隣りの街、ランシングでホテルを取った。このホテルがまた、フットボールの試合がない時は営業もしていないのではないかと思うほど、廃ビルみたいなホテルだった。フロント係も学生のアルバイトみたいな奴らばかりで、昔フィラデルフィアで泊ったホテルを思い出した。
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 チェックインして早々、試合まで時間もあまりないので、ミシガン州立大学へ出かけることにした。今日のゲームの対戦相手は最強チーム、オハイオ州立大学である。その愛称はバックス(Buckeyesシカの目のように広い視野があるという意味)。ビッグ・テンのカンファレンスチームは、なんとかオハイオ州立大を倒そうと包囲網を組むのだが、それでも倒せないほどのチームである。チケットはすでにオフィシャルサイトでは買えず、スタッブ・ハブで買うしかなかったのだが、その時、一緒に駐車場のチケットも買うべきだったと後悔する。出た時間も遅かったのだが、大学の周りはもう車で大渋滞。大学の周りをぐるぐる回ってみるものの、近くの駐車場は事前のチケットを持っていないと入れないところばかりで、これでもかというほど空いていない。結局、駐められたのは、ずいぶん離れた小学校のグラウンドを臨時駐車場にしたようなところである。スタジアムまでは遠い遠い。

 スパルタン・スタジアムは結構広い。チケットは一階席の後ろあたりにした。やっぱり大学のスタジアムなので、野ざらしだし、シートも簡素で、今日のようなナイトゲームは、風が吹けばずいぶん寒くなりそうである。スパルタン・スタジアムも、ゲームではその中の風景を見ていたが、あらためてそのディテールの細かさに驚く。ただ、このスタジアムは、大学にお金がないのか、エンドゾーンが色分けされていないし、10ヤードごとに濃淡をつけられているわけでもなく、チームのユニフォームも緑だし、慣れない対戦チームは結構見にくいだろうなとは思う場所である。
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 試合が始まった。ミシガン州立大学スパルタンズの先発QBは、将来が期待される2年生のコナー・クック。そして、この時点でまだヴァージニア工科大にしか負けていない最強のオハイオ州立大に対して、先制点をあげる。最初のオハイオ州立大の攻撃がフィールドゴール失敗に終わると、クックのWR Keith Mumpheryへの47ヤードパスのビッグゲインが決まり、最後はまたMumpheryへの15ヤードタッチダウンパスで7-0。会場には大歓声があがる。
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 もしや、オハイオ州立大に勝つのかという気運が客席にあがり盛り上がるが、さすが無敵のバックスである。RBエリオットの47ヤードランのビッグゲインとともにタッチダウンランであっという間に同点に追いつく。次のミシガン州立大の攻撃はすぐパントにされてしまい、さすがのバックスだと思っていると、オハイオ州立大はパントリターンをファンブルし、そこをスパルタンズがリカバーした。再び大歓声があがる。敵陣33ヤードの絶好の位置でスタートするミシガン州立大の攻撃。そこでRB Langfordの33ヤードのタッチダウンランが決まり、14-7と再びミシガン州立大がリードし、会場は大歓声となる。第1クォーターはその後、双方決め手を欠き14-7で終了。しかし、第2クォーターに入り、一気に状況が変わる。
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 第2クォーター開始早々、オハイオ州立大のQB J.T.Barrettの43ヤードパスが決まり、さらに得意のラン攻撃を続け、14-14の同点となる。しかし、ミシガン州立大も負けてはいない。QBクック、RB D.Williams、RB Langfordと、オハイオ州立大のような小刻みなランでヤードを重ね、エンドゾーンまで運び、また21-14と引き離すのだ。すると、次のミシガン州立大のキックオフを、オハイオ州立大が再びファンブル、またこれをミシガン州立大がリカバーする。再び会場は大歓声。敵陣18ヤードという絶好の位置から始まったスパルタンズの攻撃。しかし、ミシガン州立大はこの攻撃をタッチダウンに結び付けられず、しかも簡単だと思えたフィールドゴールも失敗してしまうのだ。そんな好機を逃さないのがオハイオ州立大。QB J.T.Barrettの79ヤードのパスが一発で通りタッチダウン、21-21の同点に。会場に嫌なムードが漂い始めた。
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 次のミシガン州立大の攻撃はクックのパスが通らずパントに。一方それを受けたオハイオ州立大はパスが次々と決まり、44ヤードのパスが通りタッチダウン。ついに21-28と逆転されてしまった。次のミシガン州立の攻撃も敵陣まで攻め込むことができず、第2クォーターが終了。スパルタンズのファンにしてみれば、あれだけ優勢に進めていたはずの試合が、結局バックスにリードされて前半終了する悪夢のような形になった。

 後半はミシガン州立大からの攻撃。コナー・クックは再び奮起してショートパスを通し続け、フィールドゴールを返して24-28。しかし、オハイオ州立大はQB J.T.Barrettのスクランブルとパスで、スパルタンズを混乱させ、さらにタッチダウンにまでつなげ、24-35と突き放す。次のスパルタンズの攻撃、RB Langfordのランで敵陣に入るが、そこからオハイオ州立大のパスディフェンスが効いてくる。スパルタンズはランで打開を試みるが、結局4thダウンギャンブルに失敗。24-35で第3クォーター終了。
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 第4クォーター。好機を逃さないオハイオ州立大は次の攻撃でも、パスとランを確実に使い分けてタッチダウン。スコアは24-42となった。ここで会場にあきらめムードが出てきたが、QBクックが再び奮起する。それまでオハイオ州立大のディフェンスにことごとく阻まれてきたのが、6本のパスを連続で通す。最後は、WRプライスへの15ヤードタッチダウンパスで31-42に。再び会場は大歓声に。しかしバックスはここでもスパルタンズの想いを砕く。QB J.T.Barrettの55ヤードランが飛び出し、その後も得意の地上戦を仕掛け、50秒ほどでタッチダウンに、スコアは31-49。これで会場は、完全に試合が終わった感に包まれた。
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 残り7分、QBクックはそれでも頑張り続ける。試合の勝利はほぼ手中におさめたバックスのディフェンスがゆるくなったということもあるかもしれないが、それでも針の穴に通すような抜群のコントロールを見せ続け、再び5本のパスを通し、タッチダウンにまで結びつけた。スコアは37-49に。さらに果敢に2ポイントコンバージョンを試みるが、パスは通らず結果はそのまま。そしてオハイオ州立大の時間稼ぎを阻みつつも、結局ミシガン州立大はそれ以上返せず、最終スコアは37-49。オハイオ州立大のアウェイでも負けない抜群の強さが浮き彫りになった試合であったが、ミシガン州立QBコナー・クックもその才能を見せつけた試合にはなったのではなかろうか。
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 獲得ヤードはオハイオ州立大568、ミシガン州立大536、中でもパスはオハイオ州立大が300、ミシガン州立大が358とバックスを上回っていた。タイムポゼッションも、オハイオ州立大29:37、ミシガン州立大30:23と、スパルタンズが上回っていた。特に第2クォーターでは、3:47対11:13とスパルタンズが圧倒的な主導権を握っていながらも得点に反映できなかったところが大きい。やはりバックスにビッグゲインを許し続けたディフェンスに差がありすぎたということなのだろう。オフェンスでは互角でも、ディフェンスでも勝る部分がないと、オハイオ州立大には勝てないということがわかった試合であった。試合後、歓喜に沸くバックスの選手、そしてここまで駆けつけたファンたち。これこそがオハイオ州立大の強さなのだろう。
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 結局この年、オハイオ州立大は1敗しかせずカンファレンス優勝、ビッグ・テン・カンファレンスの他のどのチームも破ることはできなかった。そして、ナショナルチャンピオンシップでもオレゴン大を破って優勝するという最高のシーズンを送ったことに。あのQBマーカス・マリオタが率いたオレゴン大である。一方のミシガン州立大も、このオハイオ州立大とその前のオレゴン大に破れた2敗だけだったのだが、そういう意味でも、この年のカレッジフットボールを左右した天王山とも言える試合を見れたことは幸運だった。

 試合終了後、無理やり止めさせられた小学校の奥の駐車場がなかなか見つけられず、何分も近所をさまようことに。一体何をやってるんだろうと思いながら、遠すぎる駐車場に悪態をつく。やっぱりパーキングパスは、インターネットで買えるならば買っておくべきだと思い知った。