2016/11/14 Adele Live 2016 @ Palacio de los Deportes, Mexico City ①

 明けて11月14日月曜日。この日は帰国日であるが、今回の旅の最大の目的でもあるアデルのワールドツアーをメキシコで見る日である。なぜ、メキシコにしたのかは、前にも記したが、アメリカでの公演のチケットが高騰しすぎていたので避けたかったことと、メキシコのアエロメヒコ航空を利用すれば、アメリカ本土へのアクセスも便利だし、帰国便が深夜なので、その日の夜にライブを観て、そのまま帰れると思ったこと、そして、何よりも会場のPalacio de los Deportes(パラシオ・デ・ロス・デポルテス)というアリーナが、メキシコシティ空港からめちゃくちゃ近い場所にあって、余計な移動をしなくて済むこと、googleマップで見ても歩いても20分もあれば行ける場所だったということだ。

 そこから考えたことは、この日にメキシコで他に何をするかということだった。メキシコに入国するのは初めてで、その気になれば観光をしようとすることもできた。だが、アトランタからメキシコシティに行く飛行機は12時にした。もう一つ早い便にしようかとは悩んだ。そうすると観光らしい観光もきちんとできただろう。とはいえ、滞在するのは結局のところ数時間なので、旅行会社のツアーなどに参加することは難しかったし、それほどの遠出もできない。初めて行く国でそれほど満足のいく観光ができるわけもないだろうと思ったし、むしろトラブルに遭遇する方がこわかった。スペイン語はわからないので、英語がちゃんと通じる人がどれくらいいるのかもわからなかったこともある。正直おいしいレストランくらい行ければいいやくらいに思っていたので、時間を持て余すよりは、遊ぶ時間がもうちょっとあればと後悔して、もう一回メキシコに来たいと思えるくらいにした方がいいと思ったのだ。

 12時に飛行機が出発してメキシコシティにつくのは15時前だった。ただ、実際にアデルのライブが始まるのは20時30分なので、1時間前に会場に着くとしても、それでもだいぶ時間はある。そこで、メキシコでレンタカーを借りようと思った。もちろん日本からネットで予約することができた。料金的にはアメリカで借りるよりちょっと安い(現地で直接借りればもっと安いのかもしれない)。そこで車を借りて、市内の名所を自分で移動しながら、どこかでおいしいご飯を食べて、ライブ会場の近くの駐車場で車を止められればいいかと思ったのだ。さらに、もう1つの心配もあった。スーツケースの荷物はそのまま空港に預けたままの感じにすればいいのだが、機内持ち込みのリュックの荷物はメキシコシティの空港から持ち出さなければいけない。そこにはPCなどが入っている都合上、仕方ない。ライブ会場は、アメリカのようにもしかしたらセキュリティがすごくきびしいかもしれないので、荷物を持たずに入りたかったのだ。会場で荷物を色々持っている理由を説明しなければいけないのは面倒くさいし、クロークがあればいいが、クロークがなくて入場を拒否されると、どうしようもないからだ。それで、英語の説明も伝わらなかったらどうするといったこともあった。車を借りていれば、車の中に荷物を置いておくことができるが、車がなければ、空港にコインロッカーや手荷物預かり所があれば預けておくことができるが、それがないと、どうしようもないことになってしまう。

 実は空港から近いメキシコシティの有名な観光名所にティオティワカンがある。紀元前2世紀ごろのメキシコのピラミッドであり、アステカ人の信仰の対象であった、世界遺産にもなっている遺跡である。車があれば、50分くらいで余裕で行ける場所にあったので、レンタカーが借りれたら、ドライブがてらに行ってみようと思った。調べてみると、だだっ広いところのようで、ほんとに観光するなら半日仕事らしい。別に隅から隅まで見る必要はないし、最悪、中に入らなくても、外から雰囲気だけでも確認できれば、それでもいいやと思っていた。何だかんだと日本人相手のボッタクリとかもありそうな気もしたし。

 そんな中で、一つ問題が出てきた。日本で発行される国際自動車免許が有効なジュネーブ条約に、メキシコは入っていないらしいというのだ。ということは、表向きメキシコでは、日本人は運転ができないことになる。とはいいながらも、ネットでメキシコでレンタカーを借りた日本人に、そのようなトラブルがあったかを調べても大したことはなく、実際に現地で借りられないということはないらしいようだった。そこで、メキシコのレンタカーは、いつものハーツレンタカーではなく、先払いではない現地払いのローカルな会社にして、予約だけ入れることにしていた。そこで借りた車でも、ちゃんとナビはついているようなので、安心した。もし何か問題があったら、キャンセルできるようにしておけばいい。そして、メキシコのチケットマスターで、アデルのライブ会場、Palacio de los Deportesのパーキングパスは買うことができたので、アトランタのホテルでプリントアウトをしておいた。料金は手数料も入れて、115メキシコペソだから800円もしない。安すぎる。やはり、根本的にアメリカとは物価の違う国なのだ。そして、よくよく調べてみると、メキシコシティ空港には、24時間営業の手荷物預かり所がありそうなこともわかった。そもそも空港だからなくはないだろうとは思ったが…。自分が着くターミナルにもありそうなことは確認したが、ちゃんと使える所なのかどうなのかは、行って探してみるしかなかった。

 そして、12時発のアトランタからメキシコシティへの飛行機だが、結局、出発が遅れて、到着時間も遅くなった。ゲートから出た頃にはもう16時前になっていて、正直、車で出かける意味があるのかなと思う時間帯になっていた。とりあえず手荷物預かり所を探したが、それらしきところは見つからなかった。予約したレンタカー会社のカウンターを探したが、ハーツやエイビスなど大手の会社の窓口はあるのだが、自分が予約したローカルな会社の表示はどこにもない。実際にレンタカーを借りる場所は、空港から出るシャトルバスに乗って移動したところにオフィスが固まっているらしく、おそらく自分の予約したローカルなレンタカー会社の窓口もそこにあるとは思うのだが、なんせ何の表示もないので、確認のしようがない。ちょっと焦ってきた。初めて行くところでは、やはりこういうことが起こる。

 まずは空港のインフォメーションで、手荷物預かり所の場所を聞いた。係員の人が地図を書いてくれたので、見ながらその場所に行くと、ようやく発見した。そこには確かにコインロッカーのようなロッカーがあるのだが、ただ何か表示などはあるわけではなく、普通の観光客なら気付かない所だった。入口に若い兄ちゃんがいて、彼が荷物を受け取って管理する人間らしい。すでに時間は4時半をまわっていたので、水やチケットや携帯などを持ち出して、リュックを預けることにした。控えのチケットをもらって完了。料金はかなり安かったと思う。一応、空港のゲートを出たすぐのところで両替をして、メキシコペソを持っておいてよかったと思った。兄ちゃんは、今日は24時間いるということも確認したので安心。ということで、車を借りるのはもう意味がなくなったので、やめることにした。レンタカー会社のカウンターを探して行ってみてキャンセルをしてもいいかとは思ったが、どうせネット予約だし、まだ支払いをしているわけではないので、もういいやと思った。

 そこで、歩ける範囲で行けるところで、何かおもしろいところがあれば寄ってみればいいかなくらいの気持ちで、ライブ会場を目指して歩くことにした。はじめからこうするのが一番よかったかもしれない。ティオティワカンは次にメキシコに来た時の楽しみにすればいいと思った。
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空港から出て、googleマップを見ながら、メキシコティの街を歩てみて思ったこと。この街は、完全に車中心の街だということだった。歩道を歩いていると、歩道自体が整備されていなくて、デコボコだったり、平坦でもなくて歩きづらいこと。歩道が、車道で切れて、次の歩道に至るところの段差がすごく高かったり低かったりと統一されておらず、歩く人間のことを考えられていないということ。歩道に面するところには、野菜だったり雑貨を売ったりする露店が出ていたりしているのだが(露店はさらにもう一つ道を入ったところにも商店街のように展開していた)、その店の道具だったりが、歩道を邪魔して置かれていたりもしているので、さらに歩きにくい。広い幹線道路は、車が多くてずっと詰まって渋滞している。なんか昔歩いた中国の道路とそっくりだなと思った。歩行者用の信号が青に変わるまではほんとに長いし、地図では真っすぐの道も、実際は微妙にちょっとずつずれていたりして、googleマップに沿って歩いてみるのには、結構な時間がかかった。そうこうして歩いている間に日が落ちて暗くなってきた。

 細かい路地が連なる露店のある道を抜けると、大きな幹線道路に出た。道の反対側には公園のような大きな施設があり、地下鉄のような駅もあった。とはいってもこのあたりは地上を走っているようだった。電車があるなら、ライブ会場まで行けるように空港と直接つなげばいいのにと思ったが、その路線は空港とつながっていないようで、よくわからない(後から調べると途中の駅で乗り換えると空港につながるようだった)。表示も英語がないので、よくわからない。その公園みたいな施設(googleマップではスポーツ複合施設となっていたが、夜は営業していないのか、暗くてよくわからず)の外周の道に沿って歩いて行くと、さらに広い6車線以上ある幹線道路に出た。ライブ会場に行くには道の反対側に渡らなければいけないのだが、先には信号もないようで、どうやって反対側に渡るんだろうと思いながら不安になり歩いていたら、しばらく行くと階段があって、高架になっている歩道橋のような歩行者用道路があり、そこから道の向こう側に渡れるようになっているのだった。本当にこの街は車中心の街だということがよくわかる。
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 高架道路を渡って、道の反対側に渡ると、Palacio de los Deportesが見えてきた。鉄骨の骨組がオシャレなドーム風の建造物であり、かなり大きい。調べるとここは、1968年のメキシコ・オリンピックの時の会場として建設されたようで、当時はかなり最先端の建築だったのだと思う。改修くらいはされているのだろうが、今でもコンサート会場などとして使われているのがすばらしい。ライブの終了後に迷わないように、会場周りを一周してみる。もうちょっと空港まで帰る近道はないのか、歩きで帰ろうとするなら、この高架道路を通るしかないのか、タクシーをつかまえる場所としていいところがあるとしたらどこなのか?、などを探る。

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 会場周りを気づいてわかったのは、おそるべしグッズを売る露店の多さだ。会場周りの3か所ほどにずらりと並んで固まっている。中には呼び込みをする店も。つまりはそれらは全てオフィシャルではなく、違法なバッタものを売る店である。この辺もほんとに中国と似ているといえば似通っている。それはライブ会場のゲートを抜けたところにいくつかあったオフィシャルのグッズを売る店のあまりのバリエーションの少なさにも由来するものだったということが後でわかる。アデル自身はできるだけ世界の多くの人にライブを観てもらいからチケットも安くしたとかいうようなことを言っている記事を見たけど、それにしては公演数は決して多くないし、それでチケットも高騰してしまっているわけだし、ライブを観に来た人間のことを考えれば、もうちょっとグッズもそれ用のデザイナーを雇ってもっと作らせるべきだ。違法グッズの方がバリエーションも豊富だし、中にはかなりおもしろいものもあったりした。現地の経済の活性化にはかなり役立っているわけだが。

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 そして、会場内を移動する車でやってきた客たちの車の列は、全然というか遅々として進んでいないことにビックリした。もし、ここに車で来ていたら、どうなっていたことだろうかと思う。駐車場には、このセクションがどこの場所だという表示は全くないし、自分だったら全くわからなかっただろう。そして、会場内のチケット交換場所、WILL  CALLにも長蛇の列が。もし、ここで並んで、チケットをパーキングパスと交換しなければならなかったとしたら、いつ会場内に入れたかと思うと、本当におそろしくなった。

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 結局、まだ一時間半以上前であったが、会場に入ることにした。会場の外で、空港内の売店で買っておいたパンを先に食べることにした。中に入る時には、大した荷物のチェックはなかったので、リュックを持ってきてもよかったかもしれない。驚いたのは、ただのコンサート会場なのに、中でホットドッグやピザや飲み物を売っている売店がいくつもあったことだ。本当に現地の色々な人々の経済は活性化している。せっかくなので、ホットドッグを買って食べることにした。(下の写真は、会場のゲートを入った中にあるオフィシャルグッズを売る店の1つ。これだけしかないのだ。いかにバリエーションの乏しいものかがわかる)

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 今回、自分がチケットを買った席は、2階席の前方のステージに近い、ステージを斜から見るような席であった。正面ではないので、見にくい席ではあるが、アリーナのさらに奥の2階席に比べたら、はるかに本人は近くに見える。そしてこの場所からちゃんとステージが見える大画面のモニターもあった。それでも何だかんだとトータル2万円以上かかっているのだから、チケットは高いといえば高いね。このライブがうまくできているのは、バンドセットがあるステージとは別に、花道があってアリーナの真ん中くらいにも別のステージ的な場所があり、アデルはそこにも移って何曲かをやるようになっているようだった。それは本番でもその通りであって、実質アリーナ席は、特に前方でなくとも十分に堪能できるようにはなっていて、奥の2階席、3階席であっても本人が近くに見える時はあるというわけだ。

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 YouTubeを見てもいくつか素材は上がっているのでわかると思うが、メインステージの前は大きなスクリーンで囲まれていて、そこにはアデルの目の部分が移っている。なんと、これは写真ではなく動画で、アデルのつぶっている目が、時折まばたきしたりするのだ。それをずっとループして本番前まで流している。会場の年齢層は圧倒的に女性である。そして、結構なオバサンもいたり、子どももいたりして、年齢層がバラバラなのがおもしろいところだ。BGMはずっと60年代のポップスというのも、そういう年齢層に合わせているのか。こういうステージの特殊性もあって、各公演にも前座はないようで、それもありがたいといえばありがたい。そして、いよいよ開演となり、会場が暗くなる。すると、そのスクリーンのアデルの目がカッと見開いた状態になり、”HELLO”の曲が流れて、ゆっくりとスクリーンが上がり、アデル本人が登場するのだ。

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