2012/10/26 The Weeknd (ザ・ウィーケンド)live performance @ Terminal 5

 10月26日。明けて次の日はニューヨークである。 今回はANAだったので、スターアライアンスのユナイテッドで、 夕方にニューアークに着いて、 それで万々歳のスケジュールだったのだ。あくまで NHLのストライキがなければであるが…。結局、出発するまでに、 NHLは労使交渉が長引き、シーズンの開催延期を発表し、 この日あるはずだったゲーム、ニュージャージー・ デビルスバッファロー・ セイバースの試合はなくなったのである。NHLファンには、 あの悪夢の年がよみがえる。今回のように労使交渉でもめて、 全試合中止となった2004-2005年シーズン。 NHLはこれでファンをかなり失った。そして、 その余波は今も続いているといっていい。ホッケーのアリーナには空席が目立つことはなはだしい。そしてまた、 悪夢が繰り返されるのか…? この当時は、 今シーズン2012-2013シーズンも全試合中止になるんだろうなとすら思って いた。短縮シーズンとはいえ、NHLがなんとか開催できたのは、ご存じの通り。残念ながら、ロサンゼルス・キングスの連覇はならなかったが…(でもカンファレンス・ファイナルまでいったから、強さはまぐれじゃなかったことが証明できたんじゃないかな)。
 
 それは置いといて、この時、 飛行機チケットの変更などをしたら高くなるだけなので、 そのままニューアークへ行った。結局、Prudential Center (旧コンチネンタル・エアラインズ・アリーナ) には行くこともなかった。実は、 この日はちょっと楽しみな別のイベントも入れていたのである。The Weeknd(ザ・ウィーケンド)の初ライヴ(ツアー)である。 チケットは、すでに売り切れていたので、 チケットマスターでは買えなかったのだが、 チケット売買のサイト、StubHub( 何で日本にこれがないんだろう?)で買うことができた。 時期が早かったためか、料金は80ドルほどで済んだ。 とはいえ元々は40ドルのチケットだから、 すごい高騰ぶりである( 100ドル以上で取引されているのもザラにあった)。そういうことなので 、元々NHLの試合があったとしても、 最後までは見ないで、 早めに切り上げた方がいいかなと思っていたぐらいで 、この日のホテルもマンハッタン、ミッドタウンのホリディ・ インを取っていたくらいなのである。
 
 NHLがなくなった分、 早めにマンハッタンに入ろうとは思っていた。 ちょうど渋滞の時間だし、自分で車を運転して、 マンハッタンに入ったことがないので、 不安もあった。やはり、 初めていくところは何が起こるかわからない。特別、 大渋滞ではなかったのだが、普通リンカーン・トンネルを通れば、 30分ほどで行ける距離のはずなのに、どこをどう間違ったのか、 ジョージ・ワシントン・ ブリッジからマンハッタンに入ることになってしまい、 1時間以上もかかってしまったのである。どうなってるんだ、 うちのカーナビはほんとに。 やっとのことでホテルにチェックインして、会場のライヴハウス、 Terminal 5に行くことにした。ホリデイ・インからはわずか数ブロックの場所。 そして会場近くに着くと、 これまで見たことのない驚くべき光景に出くわした!
イメージ 1 
 そこにあったのは、 アメリカでは見たこともないような大行列だった! Terminal 5には入ったことがなかったから、 広さがよくわからなかったのだが、1ブロック分(ビル4~ 5個分くらい)を3列に並んだ人々が一周するほど並んでいたのだ。 長さにして200m以上、人数にして2000人以上は確実に並んでいたかと思う。 とりあえず最後尾に並んだのだが、 自分の後ろにもどんどん人が並んでいき、 そんなにたくさん会場に入れるのかという危惧を抱いた。しかし、 ものすごい期待度である。発表した3つのフリーミックステープが、数百万ダウンロードとともいわれるほど話題を呼び絶賛された、カナダ出身の当時無名のアーティスト、The Weeknd。おもしろいのは、アンビエントダブステップの要素がありながら、ジェイムス・ブレイクボン・イヴェールとはちがったR&B、ソウルを下地にした黒人アーティストなのだということである。
イメージ 2
 それから30分以上は並んでいただろうか、予定の開演時間に入れるのかといったところだったが(その時間に始まることはないのだが)、会場に入ると、すでに前座のDJが始まっていた。 ものすごいぎゅうぎゅう詰めかと思いきや、 それほどでもなかった。実際、 そんなに大きな箱のようには見えない場所だが、 さっきまでいた人たちはどこかに消えたのだろうかといった感じである。 客層は白人ばかりかと思いきや、意外に黒人やヒスパニックも多い。とりあえず奥の柱近くの場所に陣取ることにして待つ。The Weekndが出てきたのは、22時をだいぶ過ぎたあたり。 さすがに始まると、どんどん人が押し寄せ、超過密状態になった。 そもそもThe Weekndを、自分はAbel Tesfayeを中心としたプロジェクト名だと思っていた のだが( 共同制作者もメンバー扱いになっているものだと思っていたのだが)、 どうやら完全にAbel Tesfaye 一人のステージネームのようだった。ゆえにだろうか、そこにいる他のバンドメンバーなどが紹介されることは一切なかった。
イメージ 3 
 ステージには、真ん丸の大きな照明がいくつも配置されており(後で映像を見て、大きな反射板だったことがわかった)、6つくらいの大きなスクリーンがあり、 そこに映像が映し出されるようになっている。 その奥というか、間から見えるようにバンドが陣取っている。つまり、見る場所によって、バンドメンバーは隠れてしまうので、全員は見えない。照明も当たらないので、人種構成もわからない。The WeekndことAbel Tesfaye は、黒Tシャツの上に黒のユニクロのウルトラダウンみたいなジャケットで登場し、 スタンドマイクで歌い始める。とりあえず、 あの有名なミックステープで聞いたことのある曲をバンドサウンドで聞かせてくれる。観客たちは、 絶叫とともに彼を迎え、場内大合唱となるわけだが…、おそらく生歌は初めて聞くはずなのに、 みんなあんまりちゃんと聞こうという感じにはならないのね…。
イメージ 4
 しかし、このライヴ、 正直、内容については、ほとんど印象に残らなかったというかなんというか…。基本、Abel Tesfaye はマイクを持って歌うだけであり、ダンスパフォーマンスがあるわけでもなく、曲調はああいう曲調だし、客をあおるくらいは当然するのだが、 別にカラオケで歌っているだけと言ってもおかしくない状態である(観客は大合唱しているが…)。 バンドメンバーは後ろに隠れて見えないというか、出て来ないし、紹介されることもない。 そして、特別なゲストもいない。しかも、Abel は自分で楽器を演奏することはなく、 マニピュレートすることもなく、 バンドメンバーに指示を出すわけでもなく、延々と歌うだけなのだ。 ステージ上に映し出される映像や切り変わる照明は、いわゆる おしゃれな感じで、Abel Tesfaye のセンスを表したものなのだろうが、見ている人間にとっては、 目を引いたのは最初だけで、 後はどうでもいい感じのものだったりするわけで…。 ステージ自体のセッティングも最初から最後まで変わることもなく、 映像が出るのか、照明が動くのか同じような流れをくり返すだけだった。 彼の歌は下手ではないし、うまいとは思うのだが、The Weekndの ミュージシャン的凄さを感じさせる部分はほぼなかったと言っても いい。
イメージ 5
イメージ 6
  何だろう、これで客は楽しかったのかな?という感じ。ていうか、 彼にとって、このライヴをすることに意味はあったのだろうか?とすら思えてくる。こんなライヴならば、 表に出ないで、天才ミュージシャン的なミステリアスを保ったままで楽曲を発表した方が良かったのではないか? わざわざ定価の倍くらいの値段で買って観るライヴではなかったとしか思えないのである。そういうことも思って、このライヴのネットでの感想なりを拾いたかったのだが、 残念ながらライヴがあったことを報告するものしか見つけられなかった。 彼はまだこれからもライヴを続けるつもりなのだろうか? なんか根本的に変わらないと、自分はもう見ることはないかな…。とりあえず、観客の撮ったとおぼしき映像があったので、貼っておく。