Talib Kweli Japan Tour 2007 @代官山UNIT(タリブ・クウェリのライヴ)

 なんか意外とこれに関して書いている人が少ないので書くことにした。(今回は画像はありません)

 昨日UNITで観たタリブ・クウェリのライヴ、これがおもろかったのだ。彼のライヴを観るのは初めてだったのだが、何せ孤高のリリシストで、コンシャス・ラッパーというイメージもあって、割とおとなしい感じだったりするのかなと思っていたが(年齢層もいくぶん高めな気がした)、これが全く違っていた。

 とにかく客をあおるあおる。またうまい具合に懐かし古い曲なんかも盛り込んで合わせるところが実にうまいなと思った。驚いたのはフルコーラス(2コーラス以上)やった曲なんて、新曲の2,3曲しかなかったんじゃないかということだ。いいところでというか、飽きさせないないうちに、次のトラックがカットインして目まぐるしく変化していく。そのつなぎも同じテイストの曲を持ってこずに、変わった感を重視させ、次のコール&レスポンスに一気に移行させていく技術がすごく新鮮に感じたわけです。

 ヒップホップのライヴは、基本トラックをバックにMCがしゃべりをつなげるものであるため、どこかたるさを感じるところがあるものだが、今回はそんなことを全く感じなかった。何せすぐ次の曲になるからね。この構成が日本だけのものなのか、それともツアーすべてがこんな感じなのかはわからないが、一方で淡々としたポエトリー・リーディングなどもするというタリブ・クウェリがライヴにおいて、こんなパーティー仕様的演出(リリックはCDと同じ辛辣なものですが)まですることに感心したわけです。

 しかもプロジェクターで映像を流す演出もあった。いわゆるVJ的加工映像ではなく、それこそマルコムXなど黒人的思想を体現したものであったり、過去のアルバムジャケットだったりと、決して凝ったものではないのだが、それでもいわゆるヒップホップのライヴでは珍しいですよね。

 何かある意味ヒップホップのライヴの今後を見たような気もする。ヒップホップを知らない人にも聞いてもらうためには、MCがしゃべり続けるだけのたるさを解消するためには、音楽の展開する部分を強調し、客をあおり続けるのが最良の方法だろう。その部分においては他の音楽以上にひきつけるものもできるだろう。

 それがタリブ・クウェリのライヴから見れたことには収穫だった。今回の新作「EARDRUM(イヤードラム)」はおそらく彼の最高傑作なわけで。私自身もそう思う。何度か発売延期となり、自ら新レーベルを立ち上げた上での作品で、実際けっこう売れたみたいでよかったよかったというものである。それだけ彼の力の入れ具合も違うわけだ。20曲ありながら、これだけ一つ一つの曲が立っているアルバム
もめずらしい。私は今年のヒップホップのアルバムでは一番聴いているものの一つで、ナンバーワンと言っても過言ではない。あと挙げるとしたら、PHAROAHE MONCH(ファロア・モンチ)のDESIRE(デザイア)くらいか。(カニエ・ウエストの「グラデュエーション」が期待してただけにもう一つだったのがあるだろう)

 まあとにかくややこしい話はなしに、楽しいライヴだったわけです。けっこう昔の曲も色々と散りばめてくれて。私なんかブラックスターの曲が流れただけで、涙がちょちょ切れたもんです。