2018/11/20 Indiana University Hoosiers vs. UTA Mavericks @ Assembly Hall (NCAA Basketball①)

 11月20日月曜日、この日もようやく初めての経験をする。インディアナ州の郊外、ブルーミントンに移動し、インディアナ大学でバスケットのゲームを観戦するのだ。インディアナ大学のアスレチックチームの愛称は、フージャーズ(Hoosiers、インディアナの人々の愛称であるらしい)という。競技が何であろうとインディアナ大学(ブルーミントン校)のチームは、みなフージャーズなのである。アメリカの大学はこういうところがいい。日本の大学だと競技によって、全然違うチーム名を名乗ったりしていると、本当に興ざめする。同じ学校なのに、何で統一しないんだと。

 これまでインディアナ大学ではフットボールのゲームは見たことがあるが、実はバスケットは初めてなのであった。インディアナ州といえばバスケットボール、そう言われるのも、インディアナ大学フージャーズが超名門であるがゆえの部分もある。NCAAトーナメント進出39回、うち優勝5回、中でも自分にとって身近なのは、1971年から2000年までチームを率いた名将ボビー・ナイトの元で育ち、後にデトロイト・ピストンズを優勝に導いたレジェンド、アイザイア・トーマスの出身校であるところだろう。トーマスは、1981年にNCAAトーナメントでフージャーズを優勝に導き、そのままNBAドラフトにエントリーした。ボビー・ナイトに率いられたフージャーズは、1987年にもNCAA優勝を果たし、90年代初頭には、カルバート・チェイニーとアラン・ヘンダーソンのエースを擁し、Big Tenカンファレンスの最右翼の強豪チームとなった。ナイトが退任した後はしばらく低迷をするが、近年はオール・アメリカンの高校生が必ず入学するようになり、また強豪ぶりを発揮しているのだ。

 そんな近年NBAに進んだインディアナ大の有名選手というと、エリック・ゴードン(2008年1巡目7位、現ヒューストン・ロケッツ)、ヴィクター・オラディポ(2013年1巡目2位、現インディアナ・ペイサーズ)、コディ・ゼラー(2013年1巡目4位、現シャーロット・ホーネッツ)、ノア・ボンリー(2014年1巡目9位、現ニューヨーク・ニックス)、ヨギ・フェレル(2016年ドラフト外、現サクラメント・キングス)、トロイ・ウィリアムス(2016年ドラフト外、現サクラメント・キングス)、O.G.アヌノビー(2017年1巡目23位、現トロント・ラプターズ)、トーマス・ブライアント(2017年2巡目42位、現ワシントン・ウィザーズ)と、デューク大学やケンタッキー大学などに比べると数は少ないが、驚きの名選手を輩出しているのだ。先日も記したように、ドラフト制度のため、彼らはなかなかインディアナやその近辺の州のチームに在籍することはないのだが、ペイサーズのゲームに彼らが対戦チームの一員としてやってきたとしても、いいプレイをしたりすると、インディアナのファンは惜しみない拍手を送るところが、素敵なところである。

 本当は彼らが大学でプレイしているところを、一度でも見に来たかった。しかし、私がいつも休みを取れるのは11月初め頃で、まだカレッジバスケのシーズンは始まったばかり。その時にはチームは州外のミニトーナメント形式のイベントに参加していたり、シーズン当初は練習試合として格下校との試合を組むことが多く、それほど見るべきいいカードが組まれなかったために、他の見たいゲームを優先してしまったこともある。この日のインディアナ・フージャーズの対戦相手は、テキサス大学アーリントン校(University of Texas at ArlingtonでUTAである。ユタ州ではない)マーヴェリックス。やはり練習試合的な格下校との試合であり、それほど面白いゲームになるとも思えなかったのであるが、それでも今回は見に来たかった理由があった。そこで初めて、インディアナ大学バスケチームの試合会場を訪れることにしたのである。

 というのも2018年シーズン、インディアナ・フージャーズに期待の新人が入ったからである。ロメオ・ラングフォード。インディアナ州ニュー・オルバニー出身、全米で最も評価が高かった高校生の1人で、マクドナルド・オールアメリカン、そして毎年1人しか選ばれないインディアナ州のミスターバスケットボールに選ばれた逸材である。6フィート6インチのシューティングガードなのだが、シュート力はもちろんスピードが速く、リバウンドも取れるし、パスも得意という欠点のない選手だ。しかし、彼は1年ですぐにNBAドラフトのエントリー表明を予告しているらしく、見るなら今しかないというところでもあった。これまでのインディアナ大学の有名選手は、大学で少なくとも2年や3年実力を試してからドラフトにエントリーするのが常であった。いくら超高校級の選手でも、名門大学で活躍できるとは限らないし、大学でプレイしてもう周りに敵がいないと見えたところで、プロに行くのが普通であった。ちなみにカルバート・チェイニーやヨギ・フェレルなどの選手は、インディアナ大学に4年通って卒業した。1年で辞めたのは、エリック・ゴードンくらいだ(O.G.アヌノビーは1年ではなかったが、ケガで目立った成績を残さないまま辞めちゃった)。アーリーエントリーする選手は、家庭が貧しくて、家族を楽にさせたいという理由があるなら仕方のないことだが、初めから1年しか大学に行かないというのはどうなのか、それをインディアナ大学の方も認めてしまうっていうのは…。すでに名門デューク大学ですらそのような形になってしまっている時代であるが、インディアナ大学には、ケンタッキー大学に代表される腰掛け大学にはなってほしくないという思いがあるのは、私だけではないだろう。ロメオ・ラングフォードはなぜインディアナ大学だったのか、よくわからない。本人は勉強が好きで、数学が得意だという話もあるようだが、だったらなぜ? ていうか、彼の地元、ニュー・アルバニーインディアナ州ではあるがもう州境、ケンタッキー州ルイビルのすぐ近くだったりする。家の近くというわけでもないなら、勧誘が来ていたケンタッキー大学やルイビル大学に行けばよかっただろうにとも思う。もう観客席には、ロメオ・ラングフォードに向けた愛の告白的なプラカード(名前がロメオだけに)を持参しているファンもいて、もう相当の人気なのであった。
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 その辺の話は置いておいて、泊まっていたインディアナポリスのセレブな部屋を午前中にチェックアウトし、ブルーミントンに向かう。部屋のカギはそのまま玄関に置いておくシステムだったので、結局、部屋のオーナーにはメールをするだけで、会うことはなかった、もうAirbnbのやりとりなんて、こんなものなのである。簡単だから、みんなもどんどん利用した方がいいよ。インディアナポリスからブルーミントンに向かう道は、確か前の2013年に来た時は、途中片道1車線しかない道があったり、池を横目に見た牧歌的な風景をゆるゆると進みような道であったはずなのだが、今回はできたばかりのフリーウェイが通っていて(とはいえまだ工事中のところも多く)、ずいぶん風景も変わったなと思った次第である。フリーウェイだから、どこかに止まって景色を見るということもしづらく、かといって途中ドライブインなんかあったりしないので、休憩もできない退屈な道のりになってしまった感じ。

 それでも何だかんだと1時間、お昼にはブルーミントンに着く。前にも記したがブルーミントンという街は、隣のイリノイ州にもあって、街としてはそちらの方が大きいはずなのだが、インディアナ州のブルーミントンはインディアナ大学の学生街なので、こちらの方がはるかに知名度はあるのである。ブルーミントンの街自体は、この前来た時とそれほど変わっていないようだった。この日はインディアナ大学に歩いて行ける距離にあるホテルのデイズ・インに宿泊。以前も泊まったところで何となく覚えがある。ブルーミントンでもAirbnbを探してみたのだが、割と大学の近くにいい宿泊場所がなく、ホテルにした。ブルーミントンは1泊しかしないつもりなので、その方が良かったかと思う。

 バスケットのゲームは夜7時からだったので、今回は前回できなかったインディアナ大学内を探索しようと思った。まあ、しかし大学構内は広いので、車で行くしかない。とりあえずブックストアを目指して行こうとするが、構内はナビの地図もいいかげんだ。おまけにパブリックパーキングを探すが、よくわからない。さらに構内で工事もしてたりして、移動が面倒だった。近くの駐車場につけてみるが、これがパブリックパーキングなのか、学校関係者専用なのか、表示もないし、料金もかかるのかどうかわからない。ゲートみたいなものはなかったから締め出されることはないだろうと思いながら、おそるおそる車を止めて探索する。驚いたのは、平日なのに学生どころか人の姿もほとんど見ないことだった。何なの? 今日は休日なの? よくわからないが、ある建物の地下フロアにあったブックストアをとりあえず見てみる。とはいえ、客らしき人も1,2人くらいしかおらず。すぐ近くにカフェテリアらしき場所があったが営業していないようで、ここも人がいない。何か拍子抜けした感じで、そのまま駐車場に戻る。車は問題なく出せたが、ここに止めてよかったのか、それも結局わからなかった。
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 それから大学の敷地を出て、カレッジモールというショッピングモールに行き、そこで今日と明日の飲料水などの買い物をして、ホテルの部屋に戻ることに。モールの中にパネラ・ブレッドがあったので、結局ここでお昼をとって、明日の朝飯も買って、帰る。やっぱりパネラが一番便利だわ。部屋に戻って、計画を練る。この前全部回れなかった、ジョン・メレンキャンプのゆかりの地巡り、近郊のベルモントナッシュビルシーモアなどの小さい町へ、ライブを見た今回の旅だからこそ再び行こうかと考えた。色々調べて、彼のレコーディング・スタジオ、ベルモント・モール・スタジオや自宅の場所も特定できたのだが、ここで昨日必死こいて仕事をしたツケが回ってきた。いつの間にか机に突っ伏して寝てしまっていて、気が付いた時は、もう夜18時を回っていたのだ。なんという不覚。せっかくブルーミントンに来たのに、ほぼ寝てしまっていただけだ。明日はもう帰国日。朝8時半インディアナポリス空港出発なので、とても早朝に車で回って観光している余裕などない。
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  それでもまだ19時前に起きられただけでも運が良かったのだろう、あわててインディアナ大学まで歩いて向かう。すでに周りは暗くなっていたので、大学内を探索する余裕もなかった。バスケットが行われる会場は、Simon Skjodt Assembly Hallという。1971年にオープンしたバスケットボールのアリーナで、インディアナ大学の名選手は皆ここでプレイしたというまさに殿堂である。Simon Skjodt というのは人の名前だが、バスケットボールの選手や関係者の名前ではない。このホールを2015年にリノベーションした時に多額の寄付を行った資産家の名前のようだ。インディアナ・ペイサーズのオーナーと関わりがあるらしい方のようだが、確認できず。
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 改装しただけあって、ホールの入口やロビーは結構新しい。今回の座席は、Stubhubで買った。先述したように、今日の対戦相手はテキサス大学アーリントン校、格下校とのゲームなので安く買えるだろうと思っていたが、なかなかいい席がなかった。もっと直前になればいい席を変えたのかもしれないが、数か月前だったので、そもそも売りに出されている数が少なく、しかも1枚で買えるのは、かなり上方の2階42列目の席しかなかった。バスケットアリーナらしくかなり急勾配のアリーナで、コートを見渡すと、かなり古いホールだということもわかってくる。大学のアリーナなので、個別のシートなどはなく、長い列一枚物のステンレスベンチである。かなり上の方なので、選手が小さい~。ロメオ・ラングフォードは、髪を金色(ライトブラウン)にしているので、よくわかった。しかし、もう試合も始まるというのに、自分の隣の席などは、なかなか埋まらない。そんなにチケットは売られていなかったのに、もっとギリギリで買えばよかったのか、別ルートでいい席を手に入れる方法はなかったのかと悔やむ。まあ、今日の試合は、インディアナが負けることはない練習試合のようなもので、シーズンチケットを買っている人間は、わざわざ来るまでのことでもないと思っているのだろうか。 
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 インディアナ大学フージャーズは、この日が今シーズン6試合目、これまでの成績は4勝1敗、シーズン序盤は練習試合のような試合が組まれることが多いのだが、この日の2日前には強豪アーカンソー大学の試合があって、72-73と1点差で惜敗していた。負け試合を引きずらずに、立て直しを図ることができるのかで、今シーズンの行方が見えるところでもある。後でわかったことなのだが、インディアナ大学は、シーズン始まってわずか2週間で、すでに5人のエース候補の奨学金プレーヤーをケガで欠いていたのであった。まさしく試練のシーズンであった。実は楽勝の試合だと思っていたこの日のゲームは、そのような事情をあらためて考えると、結構なおもしろい展開になったのであった。
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