今さらながら音楽雑誌の2011年ベストアルバムを検証する②

 まあ、相変わらずの更新頻度だが、2回目である。とりあえずマイペースで記していく。
 
 『rockin on(ロッキング•オン)』 特集:2011年アルバム•オブ•ザ•イヤー!(2012年2月号)
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 こちらも、恒例『ロッキング・オン』誌のベストアルバム企画である。ただ、以前にも書いたが、この雑誌はベストアルバムの選考基準とか過程を全く説明しない。それこそ10人以上いるライター(そんな状況は、今どき珍しいことだと思うが)が、それぞれ何位か分を担当して選んでいるように見えなくもない。しかしこの雑誌は、ベストアルバム企画の中に、その年の音楽シーンを語る対談企画があるので、そこに参加している幹部編集者たちが決めているんだろうなとは、なんとなく想像できる。しかし、おもしろいのは、その対談企画は、あくまでその年の音楽シーンを語るもので、今回のランキングについて語るものではないということだ。つまり、そこを読んでも、なぜ今回の順位になったのかは全くわからない。そこを明らかにしないのは、独立系洋楽雑誌の雄としてのプライドなのかと考えられなくもないのだが、この雑誌のランキング、毎年そうなのだが、とにかくことごとくつまらないのである! みんなが好きそうなもの、誰もが考えるべき作品を、無難に押し込んで作ったランキングでしかない。あえて選考過程などを明らかにせず、雑誌の顔としてベストアルバム企画を押し進めるならば、もっと先鋭的な、これを出してくるか!?みたいな順位付けだってできるはずなのだが、この雑誌に関しては、そういうことは決してない。それらを踏まえて、ランキングを一部紹介するので、見てほしい。
 
 1位『ザ・キング•オブ•リムス』レディオヘッド(ホステス)
 2位『ジェイムス・ブレイクジェイムス・ブレイク(ユニバーサル)
 3位『アイム・ウィズ•ユー』レッド•ホット•チリ•ペッパーズ(ワーナー)
 4位『バイオフィリア』ビョーク(ユニバーサル)
 5位『マイロ・ザイロト(MX)』コールドプレイ(EMI
 6位『ノエル・ギャラガーズ•ハイ•フライング•バーズ』(ソニー)
 7位『ボン・イヴェールボン・イヴェール(ホステス)
 8位『ウェイスティング・ライト』フー・ファイターズ(ソニー)
 9位『アングルズ』ザ・ストロークス(ソニー)
 10位『ディファレント・ギア、スティル•スピーディング』ビーディ・アイ(ソニー)
 
 正直、何だかなぁ?というランキングであろう。日本のロック系リスナーが聴いていそうなものは、とりあえず入っている。そのアルバムが、本国でことさら話題になったものでなくても、本国でのベストアルバムのランキングに入るようなものでない平凡な作品であったとしても、ここではランクインしているわけだ。そして、下位ランクではあるが、シーンの話題になったものも一応ランクインはしている。アデルの『21』は18位。レディー•ガガの『ボーン•ディス•ウェイ』まで19位に入っている。この雑誌のランキングは、そもそもジャンル分けをしないのだが、ちなみにヒップホップでいえば、ビースティ•ボーイズ『ホット•ソース•コミッティー•パート2』が22位、完全なブラック系と言えば、タイラー•ザ•クリエイターの『ゴブリン』の24位が最高である。なかなかそういうシーンの話題になったものが、最上位ランクに入ることはない。アルバム•オブ•ザ•イヤーとは別に、20 SONGS OF THE YEARというコーナーがあるのだが、本当はそこに入っているものこそ、その年の音楽シーンを反映しているものであろう(なかには???なものも見受けられるが)が、アルバムランキングは、それとかなり乖離したものになっている。
 
 実際にロッキング•オン誌の読者にベストアルバムのアンケートをとったとしたら、おそらくこんなランキングになるであろうものが、そのままここに反映されていると言ってもいいかもしれない。だが、このランキングは読者投票のランキングではない! 雑誌として、読者層を想定して、彼らが購入したり聴いているであろうアルバムが入っているランキングを作り、彼らに共感してもらうことは大事なことかもしれない。でもそれでおもしろいか?レディオヘッドのアルバムなんか、彼らのキャリアで一番話題にならなかったアルバムだと思うし。私自身は、聴いてみて、彼らは迷っているんだろうなとしか感じられなかった作品だったが…。まあ、でも日本のロックリスナー層が最も購入し聴いている頻度の高いアルバムの一つにはちがいないわけだし。
 
 これからロックリスナーがますます高年齢化し、保守的になることを考えると、この雑誌はどうなっていくのだろうか? 一部、極端なところはあるが、そう思うと、まだ『ミュージック•マガジン』の方が、音楽雑誌として健全ではないかとすら思えてくる。
 
 ランキングの選考については話さない対談(山崎洋一郎×古川琢也×粉川しの)のコーナーを読むと、自分たちのランキングを「真っ当なランキング」だと思っているようです。国や雑誌などによってバラバラなランキングと束ねているみたいな。結構な話ですけど、まあでもそれっておもしろいかという話にまた戻るわけで…。
 
 ていうか、そこまでジェイムス•ブレイクを評価するなら、だったら何で1位にしないの!?って思うわけで。フォスター•ザ•ピープルにしても、そこまで評価するならもっと上位にしても良かったんじゃないの?(ランキングでは『トーチズ』は13位)と思うわけで…。結局、彼らがそうしないのは、メディアから無視されているとか、普通の人が聴いているわけじゃないとか(決してジェイムス•ブレイクはそんな感じじゃないと思うが)、アメリカの特殊な音楽状況の中でポジティブに評価されていない(フォスター•ザ•ピープル)とか何とか、そこにあるのは変な言い訳ばかり。そんなだから、結果ランキングがつまらなくなっているわけだし。真っ当なランキングであるならば、自分たちの信じるものこそ、前面にバーンと打ち出すべきなんじゃないの?