Notre Dame Fighting Irish @ Stanford Cardinal 2009/11/28(NCAAカレッジフットボール、スタンフォード大学)②

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Stanford Football : 11/30/2009 : Toby Gerhart Heisman Candidate


 スタンフォード大学のアスレチックチームの愛称はcardinalカーディナルである。メジャーリーグNFLのチームにもあるcardinalsカーディナルスでは決してない。カーディナルは鳥ではない、色(深紅)である。なのでマスコットは基本いないことになっているのだが、必ず登場するのが木(tree)の着ぐるみである。多分redwood(セコイア)のつもりなんだと思うが、スタンフォードと言えばこの木の着ぐるみがマーチングバンドと一緒に登場することになっている。それを眺めているだけでスタンフォードに来た感動があるというものだ。

 スタンフォード・カーディナルのフットボールチームは、USCやUCLAなど強豪ひしめくPAC10カンファレンスに所属していることもあり、毎年パッとしない成績に終わっていたのだが、今年は全然ちがうと言ってもいい。カンファレンス1位を走るオレゴン大学に唯一の1敗をつけたのがスタンフォードであり、なんとあのUSCを今年は敵地で破ったのだ! それでも4敗はしてしまったので、カンファレンス優勝は望めないのだが(負けたのは、ウェイクフォレスト大とオレゴン州立大、アリゾナ大、カリフォルニア大)、例年に比べその強さが際だっているのだ。

 そんなチームをエースとして引っ張っているのが、白人ランニングバックの4年生Toby Gerhart(ゲーハートと発音する)である。正直彼を見に来たといってもいい。NCAA Footballのゲームでも、スタンフォードは彼ありきともいうべき走ってくれる存在だった(実際のデータを元に作ったロースターだからそれだけ能力も高くなっている)。白人のランニングバックということすら今では珍しいと思うが、実在の彼も今年の成績はものすごくハイズマントロフィーの候補に入るくらいの活躍である。スピードも黒人RBに決して見劣りしないほどだと思うが、何しろパワーがあり、キャッチもうまい。ホールを見つけて走り抜ける抜群の瞬発力があり、少々のタックルを受けても見事にかわす。

 地元カリフォルニア(南部のNorco)の出身で、高校時代はカリフォルニアのミスターフットボールに選ばれたという存在。そんな彼がなぜスタンフォードに入ったのかはほんとにわからないのだが(USCやUCLAがスカウトに来なかったのか?)、専攻が理工学系なのでそういう知識も身につけたいということがあったかもしれない。なんとフットボールだけでなく。野球チームでも外野手として活躍しているという才能でもあるのだ。そしてこの日の彼は、まさにレギュラーシーズン最終戦を最高の形で飾る走りを見せてくれた。
 
 とはいえ、試合の相手は強豪ノートルダムである。ライバルというのは実際のところスタンフォードが思っているだけのようなもので、戦績はノートルダムの方がはるかに上をいっているはず。今日の試合も先取点こそスタンフォードだったものの、ノートルダムが主体ですすめていく。常に得点を決めて引き離すノートルダムスタンフォードが何とかやっと追い着いていけている感じ。ノートルダムのQBジム・クラウゼン(Jimmy Clausen)とWRゴールデン・テイト(Golden Tate)のホットラインは恐るべしだ。RBのHughesとRiddickもGerhartの存在をかすめるほどのランを見せる。

 しかしその危機を救ったのはやはりGerhartだった。ビッグゲインはないものの、きっちりとファーストダウンを取るのは彼の走りだった。一年生QBアンドリュー・ラックAndrew Luckの動きも大したものだと思うが、最後に頼れるエースはGerhartだ。第4クォーター中盤、再びタッチダウンを決められ38-30となり、もう追いつけないかと思ったところで、Gerhartが28ヤード、12ヤードと爆走を見せる。最後はゴール前18ヤード、Gerhartが自らパスをしてタッチダウンを取るトリックプレイだった。そしてLuckのパスによる2ポイントコンバージョンが成功。ついに同点に追い着いたのだ。このままモメンタムはスタンフォードに移ったかのようにノートルダムに焦りが見えはじめた。

 次のドライブはGerhartがランで押しまくり、自らのランタンチダウンでついに逆転、45-38。残り時間あと59秒、これが決勝点となった。終わってみればGerhartはランで205ヤード、3タッチダウンさらにパスで1タッチダウンという驚くべき結果だった。この試合を受けて、Gerhartはハイズマン賞レースに猛烈なアピールをすることになった。結局、彼のシーズン総獲得ヤードは1736、タッチダウンは26というすばらしい成績(もちろんNCAAディヴィジョンI-Aのリーディングラッシャー)。劇的な逆転勝ちに終わった後、その日のESPNではノートルダムの名コーチ、ワイスの解任騒動が持ち上がった(結局ワイスはそのまま解任されることに)。