映画「運命じゃない人」ってどうよ???!(ネタバレです)

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 なんか方々で絶賛されている映画なので観てみたが、それほどすごいものだとは思わなかった。やりたいことはすごくわかるし、つじつまも一応は通っているだけに、不満に感じたことがある。

 まず第一に、この出来事が起こっていたシーンでは、別の登場人物から見た時間経過が別にあるという手法は、今に始まったことではない。それら過去の作品と明らかに違う点を感じなかった。この手法ばかりがクローズアップされている気がするが、問題はそこじゃない。

 第二に、やはり安っぽさを感じてしまったことだ。ぴあスカラシップ作品だから、大した予算はないのだろうが、それでも何とかならなかったのかと思った。特にヤクザ事務所の描写と組員の役者のひどさ。もうちょっと年輩の役者だって使えたんじゃないのって思う。その他の役者も学生映画のような役者ばかり。有名無名じゃなく、どの役者も似たような年齢構成ばかりだったからそう感じたかもしれない。じいさんやばあさん、おっさんやおばさんの役者を一人出すだけでも印象はずいぶん変わるとも思うのだが。

 第三はやはりリアリティを感じなかったこと。お人好しのサラリーマンや婚約を解消して落ち込んだOLという設定はいいのだが、主人公の友人が探偵だったり、ヤクザや詐欺師がからんできたりという設定には違和感を覚えた。ましてやお金がなくて美術にも金をかけられない中で、リアリティを求めるのは無理である。コメディなんだし、いいんじゃないのと思うかもしれないが、だったらなおさらである。探偵、ヤクザ、詐欺師やるならどれか一つにリアリティを集結させるべきでしょう。別にこの話なら探偵でなくてもいいし、詐欺師でなくてもいい、ヤクザじゃなくても話は作れるでしょう。Vシネは少ない予算でもヤクザの描写にはリアリティはもたしているわけで。コメディなのにそんなヤクザにリアリティはなくていいんじゃないのというかもしれないが、コメディだからこそヤクザにリアリティがあった方がいいんであって、ヤクザにリアリティがあってもコメディはできるのである。

 第四には、これはほんとに最近の映画では多いんだが、オチを完結させていないことだ。なんか観た人が自分で想像してもらえればみたいなやり方が、最近美徳みたいに思われてしまってないか? ただこの映画に関しては、それは間違っている。この映画では最後に女が自分が拝借したその金をどうしたのかということを明かすべきだと思う。なぜならこの映画ではいろんな人物から側面を描いてはいるが、それでも主人公はいい人のサラリーマンであり、婚約を解消したOLには感情移入をすることが難しいからである。その金を主人公の元に返しに行った後や、ニセ金ということをバラすなら、その女が自分で先に封を開けて知って悔しがるとか、それをせずに返しに行った後で、サラリーマンの主人公がそれを知るのかまで、結論は描くべきだ。

 そもそもこのヤクザの金がニセ金である必要もなかったのでないかと個人的には思う。結局ニセ金であることをバラさないのなら、リアルな金だった方がおもしろいでしょう。ただ最近のヤクザが財政的に苦しいからというリアリティの補足になるからと、監督がニセ金にしたのだったら、そのやり方は完全に間違っている。

 あとこれは全く個人的な感覚なのだが、婚約を解消して落ち込んだOLのヒロインを演じる役者に全く魅力を感じなかった。まあ確かに勝手に自分一人で悲しんでいたかと思えば、主人公のサラリーマンの境遇に同情したり、実は金をネコババしたのを知られないようにしたりという、微妙な役なのだが、それだけになおさら違うよな?って思った。

 ということで、手放しで絶賛されている風な状況にはかなり違和感を覚えるのだが、間違っているだろうか? 監督はサンフランシスコ州立大で映画を学んだそうで、うらやましい話である。まあ次作がどんなものかは、見てみようと思った監督には違いない。

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