音楽雑誌が総括した「2006年のベストアルバム」を自分なりに総括してみる! その⑦「remix リミックス」

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 さすがにこれで最後にします。引き続き各音楽雑誌が総括した「2006年のベストアルバム」を総括。

「remix(リミックス)」(アウトバーン
 2006年度ベスト・ディスク THE MUSIC OF THE YEAR 
 HIP HOP
  第1位『I.B.B.』 AFRA & Incredible Beatbox Band 
  第2位『YO YO YO YO YO』 Spank Rock スパンク・ロック
 SOUL/R&B
  第1位『IDLEWILD アイドルワイルド』 Outkast アウトキャスト
  第2位『St.Elsewhere』 Gnarls Barkley ナールズ・バークレー
 ROCK
  第1位『YOU BARK WE BITE』 Struggle For Pride 
  第2位『Ys』J oanna Newsom ジョアンナ・ニューサム

 ハウスそしてテクノという音楽が、自分とは決して相容れないものだと思っている私にとって、この雑誌は決して身近なものではない。ほんとに一年に一回買うくらいの雑誌であるが、今回のランキングを見ると自分の音楽的興味と一致するところがかなりあることに気がついた。不思議だ。もちろんテクノやハウスのランキングについては、自分が語るべきことが何もないので載せないが、それ以外のジャンルで彼らの嗜好するものが自分のものと近いということは興味深いことだ。

 この雑誌のランキングは、それぞれのジャンルで二人の選者が選んで順位をつけたという設定になっている(ように見える。それに関しての詳しい説明はない)。洋楽と邦楽の区別もない。その他にはDJ/ミュージシャンが選ぶアルバムとシングルのランキングがある。ちなみにシーン全体を総括するような総評や対談みたいな記事はない。

 HIPHOPに関しては、1位がAFRA & Incredible Beatbox Bandなのには驚いた。この辺はremixならではかもしれない。おもしろいのはHIPHOPの雑誌では、このアルバムを高評価したものはほとんど見なかったことだ。なぜだろうか? 私が思うに、これは私自身も感じたことだが、このアルバムはヒューマン・ビート・ボックスで有名なアフラが仲間と3人で作ったユニットなのだが、ヒューマン・ビート・ボックス(口だけでビートやリズムを刻む言わば口のモノマネ楽器)と言いながら、「普通に楽器使ってるやんけ!」という曲がやけに目立ったことだろう。

 もちろん本当に口だけですべてのリズムを刻み、ラップもしている曲もあることはあるのだが、やはり実際に楽器を入れたり、普通のトラックを入れている曲があると、それが目立ちすぎてしまうのだ。特にアルバムの前半にそういう曲を持ってこられると(シンコや卓球をフィーチャーした意欲的な曲だったりするのだが)、なぜか損したようなだまされた気分になってしまうわけだ。しかもなぜかTUCKERというレーベルメイトのキーボード・プレイヤーを起用している曲がやたら多いのも反作用していると思う。もちろんすべて口だけで作った曲だけでは飽きてしまうだろうことはわかるし、効果的なところで楽器を入れたり、普通のトラックを入れたりするのは当然のことだろうとは思う。なのに私などがそう感じてしまうということは、ほんとにアルバムの構成というのがいかに重要かというのがよくわかるというものだ。この人達のライヴはほんとにおもしろいものだったので、余計にがっかりした気分にもなるというものだ。おそらくそんな風に感じた人が多かったんだと思うが、どうだろうか。

 おもしろいのはそういうHIPHOP嗜好の人間があまり評価しないこのアルバムをremixが1位にしていることだろう。彼らにとっては人間の生の声は新鮮だったということなのだろうか? ちなみに2位のスパンク・ロックに3位はレディ・ソヴァリン、他にもスチャダラパー(8位)やピットブル(9位)、ストリーツ(13位)といわゆる普通のHIPHOPはほんとに入ってない。そういうところもなぜか私の好みにも近いというのは、私自身が普通のHIPHOPをそれほど好きではないということなのだろうか?

 SOUL/R&Bのランキングを見ても、なぜか私がよく聴いていたものと一致する。ちなみにこの二つのジャンルの選者は木下充氏とN(編集長の野田努氏だろう)。さらに驚くのはROCKのランキングだ。1位と2位もそうだが、3位に入っているのがTV ON THE RADIOの『Return To Cookie Moutain』。他の雑誌ではなかなか挙げられていなかったバンド、TV ON THE RADIOが入っていることに驚いた。こんな上位にTV ON THE RADIOを上げていることに感動したと言ってもいい(ロッキングオンなんかは影も形もなかったからね)。さらに9位にはヨ・ラ・テンゴ。こんなところで自分の好みと似た状況を発見することの不思議。ちなみにこのROCKの選者は桑田晋吾氏とN(編集長の野田努氏だろう)。

 remix恐るべし(野田努氏というべきか?)という発見だった。かといって、自分がremixのようなテクノを聴く人間になることは絶対ないでしょうけど。なんせ私は、音楽には生のヴォーカルがあるものでないとダメな人間なので。しかしこのremixの傾向は今後も要チェックである。

 ということでこれまで長い間各雑誌の傾向を見てきたが、結局のところ何がしたかったかと言うと、自分の2006年のベストアルバムのランキングを挙げる前フリにしたかったからなのである。それではこれまでの雑誌の傾向を元に、いよいよ次回は私自身が自分で感じた2006年のベストアルバムを挙げてみることにする。