あえて言う! 2005年のベストアルバムはこれだ!

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 ※ニックネームを変更しましたので、再掲載しました。ほんとは2月20日に投稿した記事です。


 今年も各音楽誌の2005年度ベストアルバムが大体出揃った。私はいつもこれらを見て、フォローしていないものはフォローしつつ、自分なりのベストアルバムを(忙しいながらも)記録だけはしている。

 しかし、音楽評論家たちは年を追うにしたがって、どんどん偏狭になっている気がする。確かに自分なりの専門のジャンルを持つことは大切かもしれないが、お前らはほんまにそれしか聴かないんやね。少なくとも音楽評論家なんやから、もっと色んなジャンルに耳を傾けるべきではないのか? せっかくある程度どんなジャンルでも受け入れられる日本という国にいながら、どんどんアメリカのようにジャンルに合わない音楽、クロスオーバーな音楽はかからない聴かれないという状況を生み出してしまっているのではないか? 結局いつの時代も最先端なのは、評論家でもマスコミでもリスナーでもなくアーティスト達本人だということだ。

 ちなみに私なりの2005年のランキングはこれだ。

 1.ABDEL WRIGHT「Abdel Wright」
 2.カニエ・ウエスト「レイト・レジストレーション
 3.リトル・ブラザー「ザ・ミンストレル・ショウ」
 4.コモン「Be」
 5.ジョン・レジェンド「ゲット・リフテッド」
 6.ゴリラズ「デーモン・デイズ」
 7.m-flo「BEAT SPACE NINE」
 8.ブラック・アイド・ピーズ「モンキー・ビジネス」
 9.ベック「グエロ」
10.ナイン・インチ・ネイルズ「ウィズ・ティース」
次点 Bennie K「Japana-rhythm」

 次点のベニーKは祝!オリコン一位ということで。昔の売れない時から知っていた人達がブレイクするのを見れたのはうれしい。ただアルバムとしては「シンクロニシティ」に比べるとつまらないと思う。新曲は数曲しかなかったし。でもブレイクしても彼女達もテレビには出ないのね。

 10位のNINはサマソニだが、初めてライヴも見れたので。やっぱすごいですわ。でもこのアルバムは過去の作品に比べると明らかにパワーが落ちているというかつまんなくなっている。ただ後半の曲には彼らなりの野心というかおもしろさが見えたので入れた。

 ちなみに去年は大御所が新作を出したけど、概してつまんなかった。U2はこれは彼らとは違うと思うしかなかった(「ヴァーティゴ」はよかったけどほんとにそれだけ。これであんなにグラミー取っていいの?)フー・ファイターズは長いだけで一枚にまとめてくれよって思ったし、プロディジーはあんだけ間があいてても特に変わらず。オアシスはいつまでやるのよ?って感じだった。

 9位のベックはこれまでの2作「ミューティションズ」と「シー・チェンジ」がおとなしくてつまんなかったので、久々に昔のベックに戻った感じがよかった。

 8位のブラック・アイド・ピーズ。これを忘れてた。というのもこれは音楽評論家がほとんど上げてなかったからだ。でもそんなにダメなアルバムか? 確かに「エレファンク」ほどのインパクトはないかもしれないけど、それでもいきなり「エレファンク」が売れてしまったプレッシャーの中で、これだけのものはなかなか作れないよ。今さらながら一曲一曲聞くと、それぞれ十分シングルとしても成り立つ完成度がある。各曲には大ネタというかよくあるパターンの構成も多々あるかもしれない。しかし、それよりも評価されないのは、彼らがすでにHIPHOPじゃないだろうという文脈からでしかとらえられていないというだけじゃないのか? 観客も白人ばかりになってしまったそうだし、これだけ売れりゃやっかみもあるだろうし、セルアウトしかとか言われてしまっているけど、そんなにおとしめてしまっていいのかね? でもウィル・アイ・アムはそんな状況をも実力ではねかえすことでしょう。

 しかし売れすぎですわ。去年の来日公演は一日だけだったから、全くチケット取れなかったし。前の来日の時は客も少なくて、終わりにメンバー達が全員サイン会もやってくれたというのにね。(その時Tシャツはまだ持ってるよ)ほんとに隔世の感がある。でも単純にここまで売れたことの方が正直うれしい。

 7位のm-floは傑作「Astromantic」の後に、これだけのものがまだ作れるんだからすごいです。しかし、彼らほど評価が低い人達もいないでしょう? 確かにHIPHOPではないかもしれないけども、そこまで無視しなくてもいいだろうって感じはする。ついに武道館ライブもやったけど、何でこんなに彼らのファンには女の子が多いんだろうね? その何割かがHIPHOPに来るかというと来ないんだな、これが。

 6位のゴリラズ。今回はジ・オートメイターではないことに後で気づいたが、こんなにおもしろいものなんだと驚いた。デンジャーマウス恐るべし。

 5位のジョン・レジェンド。蟹江ということを忘れてもやはりこれはと思わせる。グラミーまで取っちゃったね。

 4位のコモン。これも蟹江だ。なんか今作はどこでも原点回帰だなんだと各所で絶賛されている。確かに自分も好きだが、でも気にいらないのは前作の「エレクトリック・サーカス」が全くの失敗作として扱われていることだ。それは売れなかったかもしれないが、「エレクトリック・サーカス」はそんなにダメなのか? 実はこのアルバムは私が2004年のベストアルバム1位に選んだのだが、基本的にHIPHOPの未来というか進化系を表したアルバムだったと思うし、今でもそう思う。コモン自身も発売当時はそう言っていたし、今でもそう思っているはずだ。(今作のプロモーションと蟹江の手前、前作を否定するかのような発言もしているが)いずれコモンはもう一度「エレクトリック・サーカス」の路線にも度って来るはずだと、私自身は思っている。それほどすばらしいアルバムだった。

 3位のリトルブラザー。自ら「ミンストレルショー(白黒ショー)」とタイトルを付けるセンス。ナインス・ワンダーのトラックもバラエティにあふれているが、歌詞もデラソウルみたいでおもしろいんだ。

 2位は蟹江。というか実質今年のベストアルバムはやはりこれだ。2005年も蟹江の年だった。もう
これはすでにHIPHOPという枠をすでに超えてしまっている。これだけバラエティにとんだ構成は、ロックはじめ他のジャンルのアルバムでもありえないだろう。これだけのパワーとバイタリティで作れる人が他にいるだろうか? しかし、それでもHIPHOP系の評論家でこれを第一位に挙げてる人って意外と少ないのよね。彼らは何が気に入らないんだろう? 蟹江の声が嫌いとか蟹江の存在自体が気にいらないとかしかないんじゃないの? それとももうこのアルバムはHIPHOPじゃないだろうと、勝手にジャンル分けしてんのかね? 確かに前半の大ネタ使いには嫌悪感を感じたけど、聴く続けるうちに「そこまでやるか? もうまいりました」としか言えなくなる。これほどのアルバムは何年かに一枚出るか出ないかだと思うよ。前作の方が好きだという声もあったけど、完成度ではこっちの方が群を抜いているでしょ。

 そんな蟹江を1位にしなかったのは、やはり蟹江のソツのなさ加減もある。JAY-Zに見い出されながら、歌詞はかつてのニュースクールめいたものだったり、あらゆるところに顔を出して曲を作ったり、プロデュースしたり、はたまた自分でラップしたりという幅の広さが、やりすぎ感満腹感を増幅させたかもしれない。それだけの才能とバイタリティを実際に持っている人ではあるのだけれど。

 そこであえて一位にしたのはアブデル・ライトというシンガーソングライターである。このアルバムは日本盤も発売されていない。出た当初はちょっと店頭にも展開されてもいたが、今ではもう影もなくなっている。このアブデル・ライト、ジャマイカ出身だが音楽はもろレゲエではない。むしろそこにはフォークであったり、ロックの影響が大きい。トレーシー・チャップマンにも似ているが、そこまで暗くはない。いかにもなダンスホールではないけれど、ジャマイカと言えば納得する要素はもちろんある。あえて言うなら、声質はレニー・クラヴィッツに近い。エスニックなレニクラと言ったところか? アコースティックギターとピアノとハーモニカを弾き、自分で歌いラップもするといったまさにクロスオーバーな才能である。

 ただ歌詞は辛辣である。貧困や政治問題を直接間接に歌いまくる。元々施設で育ってそこでギターを習い、ホームレス生活をして歌い続け、刑務所にも服役経験があるという経歴を持つというからすごい。南アフリカで行われたベネフィットコンサートでボノも絶賛し、なぜかユーリズミックスのデイブ・スチュアートのプロデュースでいきなりメジャーのインタースコープからデビューすることとなった。

 確かになんとも言えない魅力があるのだ。フォーク的な情に訴える部分にダンスミュージックの高揚感が同居している。とにかくさわやかな印象が残るのである。しかし、このようなクロスオーバーな音楽はよっぽどプロモーションがうまくいかない限り売れないのである。フィッシュボーンしかりリヴィング・カラーしかりテレンス・トレント・ダービーしかり(彼らは決して楽に売れたわけではない、そしていまだに今も充分なリスペクトをうけられていない)。

 おそらくこのアブデル・ライトの売り上げは芳しくなかっただろうと思う。もう今やこの人の存在すら忘れられてしまったかのようになっている。何誌か音楽雑誌を見てきたが、2005年の作品にこの人の作品を取り上げているものは全く見かけなかった。出入りの激しいレーベルだから結果が残せなかった彼はインタースコープからも切られてしまうのであろう。ただそれにしてはあまりにも惜しいのではないのかと思っている。こういう新しい才能を持つ人が次の作品も出せずに消えていくのはもったいない。まして彼は不遇な境遇を乗り越えてやっとデビューしたというのにね。彼自身は歌い続けるだろうけど、認められるのと認められないのでは全く違う。何せ曲がこのように伝わらないんだから。

 ということで何とか彼を応援したいと思いつつ、少なくとも自分の2005年の記憶には残しとこうと思った次第である。よかったら彼のホームページでも曲が聴けるので、覗いてみて下さい。このホームページもいつまであるのかね? 全然更新もされてないみたいやし。

 http://www.abdelwright.com/