2018/11/19 Indiana Pacers vs. Utah Jazz @ Bankers Life Fieldhouse (NBA Basketball)①

 明けて11月19日月曜日、この日こそ待っていた日でもあった。インディアナポリスに来たからには、インディアナペイサーズを見なくてはならない。これまでインディアナポリスには何度か来たが、スケジュールが合わず、ペイサーズのゲームを見ることはできかったのだ。それが今回ようやく実現することになったのだ。
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 自分がNBAを見始めた頃は、レジー・ミラーの時代だった。稀代のクラッチシューターだったミラーは、数々の名勝負を演出してきた。リック・スミッツ、マーク・ジャクソン、オースティン・クロージャ―、ジャレン・ローズ、デイル・デイビスなどのチームメイトとともに、一度はファイナルにも進出した。地味ではあるが、堅実なチーム、決してドアマットチームにはなることはないが、その分、優勝できるほどのお金がなく、スター選手を引っ張ってこれず、地道に選手を育成していくしかないチームというところが、なんとなく好きだった。バンカーズライフ・フィールドハウスを訪れて、そのメモリアル展示を見ると、ついこのようなことを思い出してしまうのだ。
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 ペイサーズには、2004年にNBA黒歴史になっている乱闘事件をきっかけにして、悪名をとどろかせたロン・アーテスト(その名前を口にするのも嫌な、ペイサーズの選手だったことを認めたくない選手である)の呪いを受けるような形で低迷期が訪れる。それでもレジー・ミラーが引退した後、グッと地味になったが、新しいスターが生まれる。ダニー・グレンジャーである。特別、期待もされていなかった人物が、ペイサーズに来ると大成するのがおもしろかった。ロイ・ヒバート、ジョージ・ヒル、ランス・スティーブンソン、デビッド・ウエストや、さらに新たにスーパースターとなるポール・ジョージを加えて、ペイサーズは2年連続カンファレンスファイナルに進出し、再びリーグに旋風を起こすこととなった。そう、私が最初にバンカーズライフ・フィールドハウスを訪れたのは、彼らが活躍していた2013年のシーズンだったのだ。

 それでもペイサーズは優勝できることはなく、選手は皆インディアナを去ってしまう。2013-14年シーズンのメンバーでペイサーズに残っている者は誰もいない。彼らをちゃんと引き留めることができていれば、歴史は変わっていただろうが、できるほど金がないのもペイサーズなのである。一時代を築いたダニー・グレンジャーの首を切り、そのあまりの待遇のひどさを知って、ポール・ジョージもインディアナを出て行った。とにかくスーパースターを引き留められないチームなのだ。NBAに加入する前のABA時代にはチャンピオンになったことはあるが、それだけ。WNBAインディアナ・フィーヴァーが先に優勝してしまうという
のが悲しいところ。
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 ポール・ジョージがいなくなり、もうペイサーズはダメだろうとなった時に、再び救世主が現れる。それがビクター・オラディポである。インディアナ大学出身のスターで、不作と言われる2013年のドラフトで全体2位でオーランド・マジックに指名された人物。ルーキー時代からそれなりの活躍はしていたが、弱いチーム、マジックにいたため目立つことはなかった。その後、オクラホマ・サンダーにトレードされ、ポール・ジョージと引き換えに、ドマンタス・サボニスとともにインディアナ・ペイサーズに来ることになった。ふとしたきっかけで地元インディアナに戻った途端、彼は大活躍し、一躍ヒーローとなるのだからわからない。これからペイサーズは、彼とともに生きていく道をちゃんと選んでくれるのか、地元出身のスーパースターを、グレンジャーやポール・ジョージみたいに無為無策で放出するのだけはやめてもらいたい。
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 これまでインディアナ・ペイサーズのスーパースターには、インディアナの出身者はいなかった。どちらかというとカリフォルニア出身者ばかり。レジー・ミラーUCLA出身)にしても、ポール・ジョージ(フレズノ州立大出身)にしてもそうだ。インディアナは、バスケットボールの州と言われるが、インディアナ出身の有名選手は、結局のところドラフトで、違う州のチームに行ってしまう。ラリー・バードもゴードン・ヘイワードもエリック・ゴードンもコディ・ゼラーもコートニー・リーもジョシュ・マクロバーツもそうだ。ペイサーズは大負けすることがない堅実なチームだから、ドラフトの上位指名権が取れることはなかなかないのだ。そんな中でジョージ・ヒルは数少ないインディアナ出身でペイサーズにやってきた選手で(ドラフトで指名されたわけではないが)、大人気だったのだが、彼も去ってしまった。だからこそ、ビクター・オラディポにファンは熱狂するのだ。そして、ペイサーズには未だにカリフォルニア出身者も多い、ダレン・コリソン、T.J.リーフ、アーロン・ホリディ、Ike Anigboguは、なんとみんなUCLA出身だ。そう、レジー・ミラーUCLAインディアナだけど、チームカリフォルニアというわけのわからないチームでもある。

 話は逸れたが、そんなビクター・オラディポを筆頭に、現在のペイサーズは、ドマンタス・サボニス、マイルズ・ターナー、ボヤン・ボクダノビッチ、ダレン・コリソン、サディウス・ヤングなどが有望選手が揃って活躍し、またおもしろいチームが出来上がったのである。そして、今シーズンからは、サクラメント・キングスで活躍していたタイリーク・エヴァンスが加入、ルーキーには、ホリディ兄弟の三男、アーロン・ホリディが加入して楽しみになっていたシーズンなのであったが…
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 そんなペイサーズの救世主ビクター・オラディポを初めて見られると思っていたのだが、なんと彼は前の週のケガで離脱。この日も出場しないというから、自分の運はついていないのであった。大学時代の彼も見ることができず、ペイサーズに来ても見れないという始末。そして、ペイサーズは、エースのオラディポなしで、このまま好調を維持できるのか、失速してプレイオフにすら出れなくなるのではないかという話も出ていたほどだ。
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 自分の部屋から、ペイサーズのホームコート、バンカーズライフ・フィールドハウスへは歩いて約1分で行けるところにあるので、この日はインディアナポリスの市内を観光しようと思っていたのだが、結局、締め切り間近の仕事の書類をそのまま部屋で作成する羽目に。何のための休みなのかわからない。ようやく夕方、日が落ちる前に書類を仕上げて、やっとのことで街へ出かける。

 インディアナポリスの街で目立っていたのは、シェア電動スクーターであった。道端にやたらと止められているのだ。スクーターというよりも、いわゆるキックスケーターであるが、それが電動で動くようになっているのだ。目についたのは、色が緑だったこともある。そう、シアトルでお世話になったシェア自転車のライムバイクが、インディアナポリスでは電動スクーターで展開しているのだ。逆に言うと、ライムバイクの自転車はここには全くない。街によって色々仕掛けが違うんだなというのがおもしろい。もちろんシェア自転車と同じく、このシェア電動スクーターもどこでも乗り捨て自由で、料金も自転車と変わらない。ちなみにこの電動スクーターは、ライムバイクとは別にBIRDという会社のものもあって、こちらは黒でロゴとかもカッコイイ、そしてこちらの方が若干、数も多かった。料金もほぼ変わらないようで、電動スクーターではBIRDの方が優勢ということか。
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 電動スクーターもアプリ自体は共通で、普通にQRコードを読み取ればそのまま借りて使えるので、ぜひ乗ってみたいと思ったのだが、ライムバイクのホームぺージを見てみると、1つ問題があった。この電動スクーターは、バッテリーで動くので、原付と同じ扱いになり、ヘルメットを着用しなければ乗ってはいけないことになっているのである。ローカルの交通ルールに従ってくれとあるのだが、原付をヘルメットなしで乗れる州なんてない、インディアナもそうだ。電動スクーター自体には、ヘルメットが付いているわけではないので、自前のものを用意しなければならず、当然、自分はそんなものを持っているわけではない。

 この電動スクーターはものすごいスピードが出るわけではなく、使っている人は、確実にほぼみんなヘルメットなんか着用しないで乗っている。別に自分もヘルメットなしで乗っても大丈夫だろうと思ったが、外国人である自分が警察に止められたら厄介だし、罰金を払うとなったらもっと面倒くさいと思った。警察に止められなくても、ケガをして、車の運転に支障をきたすことになったら、旅行も元も子もないと考え、結局、利用するのはやめたのだが、悲しいかな、それを今も後悔している。

 インディアナポリスのショッピングモールを探索して、ここにもパネラ・ブレッドがあったので、小腹を満たして帰る。バンカーズライフ・フィールドハウスにはちょっと早めに行こうと思った。それにしてもすごい名前だ。前のカンセコ・フィールドハウスの方が名前からしてしっくりくるのだが。アメリカのスポーツのホームアリーナは、金融系の会社と航空会社の名前が本当に多い。やはりアリーナのネーミングを取ろうとするような金のある会社は、なかなか限られているということか。

 前述の通り、バンカーズライフ・フィールドハウスに来るのは2度目である。最初に来たのは、インディアナ・ペイサーズではなく、アイスホッケーのNHLではない、北米アイスホッケーリーグ(USHL)のインディアナ・アイスを見に来たのであった。それが確か2013年。その時はホッケーの試合はそっちのけで、インディアナ・ペイサーズのメモリアル展示に興味津々だった。グッズショップにもペイサーズの物をたくさん売っていたし、このホームアリーナに来れるだけで良かったのである。
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 当時はポール・ジョージのいたペイサーズの第2期黄金時代であって、ペイサーズの大ファンになっていた。その時とそれほど変わったかと言えば、変わっていない。見覚えはある。ただ、その時ペイサーズにいた選手は誰もいなくなってしまった…。そして、アイスホッケーチームのインディアナアイスもいつの間にかもう消滅していた。時の流れは速いものだ。
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 この日のペイサーズの対戦相手は、ユタ・ジャズ。前シーズンにブレイクしたドノヴァン・ミッチェル(背番号45)が見られるということで、この試合を見たくチケットを買ったということもある。この日までジャズは8勝8敗の五分、イマイチ調子に乗れていない。ドノヴァン・ミッチェルにしてみれば、エースとして輝き続けられるかという真価の問われるシーズンであるのだが。一方、ペイサーズはこれまで10勝6敗、しかし前述のように好調だったオラディポがケガで離脱。この日も試合には出ないというから心配なところである。ちなみにジャズは、アウェイゲーム5連戦でこのインディアナ戦が最後。疲れているだろうし、調子も良くないので、ペイサーズにしては叩くチャンスではある。
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 インディアナポリスは人口の多い街であるがやはり田舎なので、NBAのチケットも他の都市に比べると安い。真ん中のセクションの17列目の期待していた以上のいい席がとれた。シートには、なぜか自分の名前が書かれたカードが貼ってあり、グッズがもらえると書いてあった。これはラッキーなのか、何なのか、示されたブースに行ってみると、お姉さんが、ペイサーズのゴムマリをくれた。安いものであるだろうが、うれしい。どうやらシーズンチケット販売の勧誘のようだったが、こちらが外国人とわかってガッカリした模様。まあ、でもシーズンチケットを買っても、普通に日本人の自分が売買できるなら買ってもよかったんだけどな。

 バンカーズライフ・フィールドハウスは、本当にこじんまりとしたアリーナで、動きやすくて回りやすい。せっかくなので、他のアリーナでは見ないローカルなお店のピザを買って座席に付く。すでに両チームの練習が始まっている。ビクター・オラディポは試合には出ないが、チームと一緒に動いてはいて、私服姿がモニターに映し出されていた。さすがにジャケットを着ている。また彼が健在な時にここに見に来ようと誓う。それにしてもジャズのセンター、フランス人センターのルディ・ゴベールはひときわデカさを感じる、これに目の前に立たれたら、シュートが入ると思えないな。
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 選手紹介が始まった、ビクター・オラディポが出ない中、最後に紹介されるエースは誰なのかと思ったが…、タイリーク・エヴァンズであった。サクラメント時代の実績を評価してということなのだろうか、ペイサーズに加入したばかりの選手なんだけどね。そう思っていると、試合が始まる前に、ペイサーズ最年長のサディウス・ヤングがマイクを持って観客にあいさつを始めた。何ていうことのないあいさつだったが、これは何の意味があったのだろう。一種の配慮ってやつか? だったら最後にヤングを紹介してあげればいいのに。
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 試合が始まった。気付いたのは、この日のホームのペイサーズのユニフォームが白色ではなく、通常はアウェイで使われるはずのネイビーの色だったということだ。そのためアウェイのジャズのユニフォームが黄色になっている。両チームはカラーリングがよく似ているチームなのだが、黄色のイメージはどっちかというとペイサーズの方なので、あれ、こっちはジャズかとなって、一瞬どっちかわからなくなるくらい、ややこしい。これは選手だって間違うんじゃないかと思うほど。なんでわざわざネイビーの色にするかね。だったらアウェイのジャズのユニフォームは、たまに使われるグリーン系にしてもらえればよかったのにと思う。
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