2020/01/05 Washington Capitals vs. San Jose Sharks @ Capital One Arena (NHL Ice Hockey) ①

明けて1月5日の日曜日。この日は午後からキャピタル・ワン・アリーナである。
だが、バスケットではない。NHLのアイスホッケーである。先述したが、キャピタル・ワン・アリーナは、ワシントン・キャピタルズの本拠地でもある。むしろ、ワシントン・ウィザーズよりも、こちらの方が地元では有名で人気もある。今日は日曜日なので、ナイトゲームではなく、デーゲームということだ。

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NHLを見るのは、数年ぶりなのでワクワクしている。これまでは11月、12月のアメリカンフットボールのシーズン中にアメリカに来ていたので、まずはフットボールの試合のスケジュールを先に入れて、それに合わせて、NCAAのカレッジフットボールNBANHLという風に予定を入れていた。アメリカのプロスポーツのスケジュールはうまいことできていて、NBAとNHLは同じホームアリーナを使うことが多いのだが、NBAのチームがホームで試合をしている時には、NHLのチームはロードのスケジュールに入っている時が多い(もちろんその逆も)。もちろんイレギュラーな時もあり、私はロサンゼルスで昔、昼にNBAクリッパーズのゲームがあり、夜にNHLキングスのゲームがあるというのに遭遇したことがある。アリーナをバスケット仕様からホッケー仕様にすることは、その逆もだが、数時間で簡単にできるものだ。ということで、今回はワシントン・ウィザーズがホームで連戦スケジュールをこなす中、ぽっかりと空いた1日にワシントン・キャピタルズの試合が組み込まれているというわけなのである。

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ワシントン・キャピタルズは2018年にチーム創設初の優勝を飾った。だが、チームとしてずっと弱小だったかというと、そんなことはない。むしろ、プレイオフでいいところまでいくが、最終的に勝てないというチームの印象だった。私の記憶に残っているのは、1998シーズンのスタンレーカップファイナル進出だ。守護神、オラフ・コルジクの絶対的セーブに、ピーター・ボンドラ、アダム・オーツらを擁した怖いチームだった。私は個人的には、この時代のキャピタルズのユニフォームが一番好きだし、カッコいいと思っている。今の赤青のそれこそウィザーズみたいなユニフォームはちょっと…。何せ、この1998年シーズンは、私の大好きだったデトロイトレッドウィングスが優勝した年だから覚えているのだ。

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この1998シーズン以降、ワシントン・キャピタルズはファイナルに進めなかった。2004年のドラフトでロシアの天才、アレックス・オベチキン(背番号8)が加入するも(プレイしたのは2005年から)、ファイナルに進出し、優勝するまでに13年かかったから、いかにNHLで勝ち抜くことが大変かということがわかるだろう。今シーズンもオベキチンは健在で、優勝候補のトップチームと目されているキャピタルズを見ない手はないだろうと考えたわけだ。この日までには、28勝9敗5分とまさに順調である。分と書いているが、NHLの場合は、これはオーバータイムでの負けのことである。勝利した場合のポイントは2点だが、オーバータイムでの負けであれば、勝ち点が1点入る。この勝ち点のポイント総数で順位が決まるのがNHLなのだ。

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今日の相手は、サンノゼ・シャークスもちろんこのゲームだからこそ、わざわざ見る意味があった。これまでにもサンノゼに行って、ホームのSAPセンターでゲームを見たし、アウェイでも何度か追いかけた、ひいきのチームだ。カリフォルニアのNHLのチームで、いまだ優勝できていない最後のチーム。ずっと弱小と言われてきたアナハイム・ダックスだって、ドアマットチームだったロサンゼルス・キングスだって、優勝を経験したのに。サンノゼシャークスは1991年にリーグ拡大のために誕生したエクスパンションチームだ。数年は苦戦したが、90年代末からプレイオフ進出常連の強豪チームとなった。しかし、スタンレーカップファイナルには進むことができなかった。後から創立したダックスに先を越され、低迷を続けていたキングスも優勝して、先を越されること数年。そんなシャークスが初めてファイナルに進出したのは、2016年シーズン。だが、ピッツバーグペンギンズに力の差を見せつけれた完敗だった。昨シーズンもカンファレンスファイナルに進出し、今度こそ優勝へとの機運が高まるが、この時もずっと低迷し続けていたはずのセントルイスブルースに足元をすくわれてしまった(結局、ブルースはファイナルでも勝って、初優勝を飾った)。

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今シーズンも期待できるかと思っていたシャークスだが、これまで19勝21敗3分とイマイチ波に乗れていない。約15年チームにいたジョー・パベルスキーがチームを去ったのが大きかったのか? 新キャプテンになったのは、ここ数年エースとして大活躍だったローガン・クチュール(背番号39)。世代交代という意味では、何の問題もないだろうと思っていたのだが。アイスホッケー選手では珍しいアフリカ系カナダ人のレフトウィング(LW)のイベンダー・ケイン(背番号9)、スイス人ライトウィング(RW)のティモ・マイヤー(背番号28)、ディフェンダーのブレット・バーンズ(背番号88)、エリック・カールソン(背番号65)、41歳のベテランセンター、ジョー・ソーントン(背番号19)ら主力メンバーは変わっていないにも関わらず、調子が出ない。ちなみにゴーリーは、2015年にロサンゼルス・キングスから移籍して先発となった30歳のマーティン・ジョーンズ(背番号31)。ドラフト外でプロに入り、下部リーグでプレイし続けた後、キングスでバックアップのゴーリーとなった苦労人だ。だが、この日のゲームは、サンノゼシャークスにとって悪夢と言えるものとなった。

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ワシントン・キャピタルズは、この日まで28勝9敗5分とリーグで圧倒的成績を残している。注目すべきはオベチキン以外にも、スウェーデン人32歳のセンター、ニクラス・バックストローム背番号19)、チェコ人24歳のLW、ジェイコブ・フラーナ(背番号13)、28歳のロシア人センター、エフゲニー・クズネツソフ(背番号92)、かつてセントルイスブルースで活躍し、2015年に加入した33歳のRWのT.J.オーシ―(背番号77)、そしてディフェンスメンながら、ポイント(得点とアシストの合計)でチーム1を誇る30歳のジョン・カールソン(背番号74)など、いくらでもすばらしい選手がいる。ゴーリーは2010年からキャピタルズでプレイしている30歳のカナダ人、ブレイデン・ホルトビー(背番号70)。みんな2018年の優勝を経験しているんだから、それは強いはずである。

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この日のチケットは、普通にチケットマスターで買った。NBAワシントン・ウィザーズのパーシャルプランでチケットを複数買っていた私は、チケットを扱う会社も同じなので、NHLのキャピタルズのゲームも組み込んでもらえないかと聞いたら、それはできないと言われた。キャピタルズには、キャピタルズのプランがまた別にあり、担当者も違うのだ。さすがにキャピタルズのプランまで購入する余裕もなかったので、このゲームは個別に買うことにしたというわけだ。NHLアイスホッケーは、リンクに近い下の方のアクリル板が前にある席だと、選手がぶつかってくる迫力は味わえるのだが、ゲーム自体の流れをよく把握できないので、アクリル板に遮られないちょっと上方の席を買うようにしている、今回買ったのはK列。もろもろ入ると200ドルを超えるくらいの金額、ウィザーズのチケットより全然高い。
 
それは会場に着くと明らかになった。ウィザーズと違って、空席がほとんどないのである。ウィザーズの試合も実際にはチケットは売れていないわけはないのだが、客が来ない。さっきのパーシャルプランにキャピタルズの試合を組み込めないかと頼むのはバカで、そんなドル箱のキャピタルズのゲームを格安料金で早々に渡すわけはないのだ。逆にキャピタルズのパーシャルプランを買っていたら、ウィザーズのゲームは入れてくれたかもしれないかもなと想像した。

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会場に早めに入ると、キャピタルズの選手がリンクに入ってお披露目練習をしており、すでに多くのファンがかぶりつきで集まっており、自分が座るはずの席も他人に占領されていた。それくらいの人気なんだと実感する。やっぱり優勝するとチームは変わる。仕方なく自分の席に近い空席で写真を撮り、空くのを待つ。ほぼ5分くらいで選手たちはロッカールームに消えて行き、ファン達も解散して引きあげていった。ようやく自分の席に着く、昨日見たバスケットのアリーナが、アイスホッケーのアリーナに変わっているのが壮快だ。このアイスリンクの寒さがちょうどいい。落ち着いてから、売店でホットドッグを買って戻る。売店は当たり前だが、変わっていない。移動式の屋台風の店は違うものが出ていた。
 
NHLの試合は久々なので、緊張感が走る。本当なら堂々とシャークスファンとしてユニフォームを着るくらいのことはしたいのだが、何せホッケーを久方、生で見ていないので、そんな勇気はない。この日の服装も、グッズこそ着けていないが、赤青のキャピタルズカラーにまとめてあるのが情けない。当たり前のことだが、客席はほとんど白人で、アジア人系の人間もあまり見かけない。アメリカの分断ではないが、これは昔からであり、一度見さえすればアイスホッケーはおもしろいのだが、やはりNFLNBAと違って、プロモーションがうまくないし、歴史も遥かに古いので、ゲームシステムなどの改革もなかなかできないのだろう。アメリカ4大スポーツと言われてはいるが、NHLは昔と違ってさらに水をあけられているだろう。

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試合が始まった。アイスホッケーの試合は、20分1ピリオドで、それが3ピリオドある。古くからの伝統でそうなっているから仕方のないことだが、4クォーター制で、前半と後半がはっきり分かれるNBANFL違って、盛り上がりには欠ける構成である。第1ピリオドは一進一退の展開だった、というしか仕方がない。ホッケーは点が入らなければ、それまでの攻撃は意味がないし、ディフェンスとしては合格点ということだ。後々、点が入った時に、それはあの時のあの攻撃があったからこその意味があるものだという分析はできるが、この日のゲームには、まだそれというべきプレイはなかっただろう。バスケットのように多くの点を稼いでいくものであったり、アメフトのようにヤードを稼いで進んでいくものではないから、とにかく経過にはあまり意味はない。なので、プレイに全部ふれたところで仕方ないから、書くことも少なくて済むというものだ。

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第1ピリオドはスコアレスで0-0のままだったのだが。印象に残ったのは、残り12分41秒のキャピタルズのフラーナのゴールポスト直撃のショット。残り11分23秒のシャークスの攻撃、トーマス・ハートルのリストショット、相手ディフェンダーに当たってもう一度シュートしたのをパトリック・マーロウ(背番号12)がスティックで当てて軌道を変えたショット、そのリバウンドをローガン・クチュールがリストショットで返すが、これもはじかれてしまった連続攻撃だろう。パトリック・マーロウは、プロ入り23年目40歳の大ベテラン、かつてシャークスのリーディングスコアラーでもあったが、移籍した後、今季、古巣に戻ってきた。今でもゴール前のスティックさばきは誰よりも長けているなという印象で、すごいの一言であった。 

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第1ピリオドでは、キャピタルズのキャプテン10年目のオベキチンの見せ場は特になかった。確か昔はすぐわかるようになっていたはずだが、今のnhl.comのスタッツは、ピリオドごとのシュート数やパック保持時間みたいなものが出なくなっているようだ。それがあるとゲームの傾向というのも見返しやすいのだが、仕方がない。シュート数は私が数えたところによると、サンノゼ11本、ワシントン10本とそれほど変わらない。双方、ペナルティーもなかったので、試合は淡々と進んだ。今日はこのまま早く終わるのかもと思ったが、それがまさかあんなことになるとはというこの日の結果は、この時点では誰も予想できなかったであろう。

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第2ピリオドに入った。このまま一進一退の攻防が続くかと思いきや、試合は動いた。わずか1分後のシャークスの攻撃、右サイドから上がったティモ・マイヤーのスナップショットがゴーリーモルトビーにはじかれて、パックがゴール後ろから左サイドへ流れ、マイヤーが相手ディフェンダーと交錯する中で、イベンダー・ケインがパックを確保し、リストショットを撃つ。これもモルトビーのマスクに当たり、体勢を崩してマスクが外れるアクシデントとなって、プレイがストップ。この機に乗じて、シャークスは次の攻撃で、ゴール前の攻防から後方のマイヤーに戻し、ロングシュートを撃つ、ゴール前にいたRWバークレイ・グッドロウ(背番号23)がスティックを合わせて、はじいたパックがゴールを割った。先制点かと思いきや、スティックを頭上に上げた行為がハイスティックのペナルティー取られてノーゴールに。キャピタルズは助かった形になったが、怒涛の攻撃に明らかに動揺しただろう。

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その後、サンノゼが一方的に押しまくる展開が1分半ほど続き、会場のワシントンファンが騒ぎ出し、ようやくワシントンが盛り返す感じに。5分経過し、ワシントンのRWリチャード・パニックが攻め上げる時に立ちはだかった相手ディフェンダーに対して、スティックでたたくアクションをしてしまい、ペナルティーボックスへ。アイスホッケーでは勝負どころである、この日初めての数的優位の2分間のパワープレイが始まる。1分が過ぎた頃、相手ハーフコートでパスを回しながらショットの機会をうかがうシャークス。ティモ・メイヤーがゴール下に流したパックはディフェンダーにはじかれ左サイドへ、リバウンドを拾ったジョー・ソーントンがセンタリングしたのに、イベンダー・ケインが合わせて、この日初めての得点が入った。1-0。第2ピリオド、残り13分35秒だった。
 
しかし、それからわずか1分後だった。シャークスの攻撃をしのいだキャピタルズは、ゴール近くのディフェンダーがロングパスを放つ。相手ディフェンダーと交錯する中で、パックはするっと前方へ抜けた。走り込んだRWブレンダン・レプシックが、ゴール前にいたセンター、ニック・ダウド(背番号26)に合わせると、そのままパックはゴールへ。アッという間に1-1の同点。このゲームはこういう入れたら入れ返すシーソーゲームな展開がとにかく際立つものだった。

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残り12分。ワシントンに絶好の好機があらわれる。ディフェンダーから上げたパスは、味方と相手ディフェンダーが争う中で触られずに前方へ抜ける。そこに走り込んだニック・ダウドがパックを取り、左サイドから速攻をかける。逆サイドから走り込んで来たRWガーネット・ハサウェイに絶好のタイミングで渡るが、イベンダー・ケインが体当たりしてシュートできず。ケインはスラッシングのペナルティーを取られて、ワシントンのパワープレイに。
 
このパワープレイで、アレックス・オベチキンがこの日初めてのシュートを見せる。彼はその後、立て続けに3本もシュートを撃つのだからすごい。彼がスラップショットを撃つだけで会場がどよめく。しかしパワープレイ終了直後、リバウンド争いで後ろへパックを後逸してしまうと、シャークスオフェンスがそこを突いて奪い、ローガン・クチュールが速攻をかける。ディフェンダー2人がクチュールの前に立ちはだかると、後ろからついてきていたイベンダー・ケインに渡すと、ディフェンダーの隙をついた電光石火のショットが見事決まる。第2ピリオド、残り9分54秒、これで2-1と再びリードしたサンノゼ・シャークス相手より人数が少ない中でのショートハンドゴールかと現場では思ったが、すでに相手のパワープレイは終わっていたようだ。

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ここからまたも一進一退の攻防が続く、シャークスはイベンダー・ケインが抜け出し、ゴーリーと1対1になる決定的な瞬間があったが、シュートは決まらず。残り4分半、ワシントンのDラドコ・グーダスが、サンノゼのパトリック・マーロウに対し、スラッシングのペナルティーまたもシャークスのパワープレイになる。2分間のパワープレイが終了する直前、ゴール正面ハーフコートぎりぎりの位置からDエリック・カールソンの撃ったロングシュートがディフェンダーに当たり、こぼれ球をすかさずイベンダー・ケインが撃ち返し、パックはゴールの右隅に吸い込まれた。残り3分11秒、これで3-1。イベンダー・ケインはハットトリックである、これまでのチームの得点は、全部彼であった。残念ながら彼のゴールシーンは、自分のいる側と反対側だったので、ちゃんと撮れず。それは仕方のないことで。NFLNBAを見慣れている自分にとって、アフリカ系の彼のような選手は無条件で応援したくなる。やはりカナダ人だからということもあって、小さい時からホッケーをしていて才能が開花したのだろう。

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しかし、ここからがワシントン・キャピタルズのすごいところだった。残り1分半を切り、ゴール前の攻防でT.J.オーシ―が相手と交錯して倒れた動きがあった後で、ゴール後ろに転がったパックを彼が拾って、ゴール前に戻したところを、LWジェイコブ・フラーナが押し込んで、3-2に。またもわずか1分ですかさず得点を返す離れ技だった。残り24秒、ワシントンはクズネツォフが抜け出してゴーリーと1対1になる絶好のチャンスがあったが、シュートに至らず。3-2で、第2ピリオド終了。先ほどと違って一気に試合が動いた、これだからホッケーはおもしろい。サンノゼが圧倒的に押していたかのようなピリオドだったが、シュート数は双方12本くらいと変わらなかった。ただサンノゼはミスショットが多すぎた感じ。わずか1点のリードだけで済んだキャピタルズがラッキーだったように思った。

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