2020/01/04 University of Maryland Terrapins vs. Indiana University Hoosiers @ Xfinity Center (NCAA Basketball①)

明けて1月4日、この日は先述したようにワシントン・ウィザーズは、デンバーナゲッツとホームでの連戦を控えているのだが、あくまでも夜なので、それまでに別の予定を入れていた。それはメリーランド大学に行くことであった。この日はNCAA大学バスケットのメリーランド大学対インディアナ大学の試合があり、そのチケットを買っていて見に行くつもりだった。
 
これまで私はインディアナ大学には少なからぬ思い入れがあり、昨シーズンもバスケットボールのゲームを見に行った時の記述をしているのにもさかのぼれるかと思う。今シーズンは、この休みのスケジュールでは、残念ながらインディアナ大学バスケットボールチームはロードに出ており、インディアナ州に行くことはかなわなかったが、それがたまたま今回メリーランド大学とのロードの試合日にぶつかったので、これは行かないわけにはいかないだろうと考えたわけなのだ。
 
インディアナ大学は言わずと知れたバスケットボールの名門校。その愛称はフージャーズ(これはバスケに限らずインディアナ大学のスポーツチームは、みなこの愛称である)という。そりゃデューク大学ノースカロライナ大学にはかなわないが、数多くの名選手を輩出している。インディアナは、ノースカロライナと同じくバスケットボールが盛んな地で(他に何もウリがないというのもあるが)、ファンもとにかく熱い。
 
私はまだ幼かりし頃、初めてNBAを見てファンになり追いかけるようになったのが、バッド・ボーイズと呼ばれたデトロイト・ピストンズであり、そのチームを率いていたのがアイザイア・トーマス(現役で活躍しているプレイヤーとは、同姓同名ではあるが全くの別人で血縁関係もないので、お間違えなく)。彼はシカゴ出身なのだが、インディアナ大学で3年間プレイし優勝を経験して、ドラフト全体2位でピストンズに指名された。そんな彼の大学までさかのぼって調べるようになると、インディアナ大学がボブ・ナイトという名将に率いられて名を馳せたチームで、過去5回優勝したチャンピオンになっており、数々の選手をプロに送り込んでいることがわかると、おもしろくなってきたのだ。
 
NBAを見ていると、毎年ドラフトでルーキーが入って来て、主にその大学とともに紹介される。すると、彼と彼はチームメイトだったとか、何度も名勝負を繰り広げた間柄なのかとわかるようになると、いつの間にか現在の大学バスケットまで見るようになった。大学時代のプレイを見た選手たちを、その後プロでも見て活躍するのを見ることほど楽しいものはない。
 
インディアナ大学は1987年以降優勝してはいないが、それでもNCAAトーナメントに出場している常連の強豪校であることには違いない(ここ3シーズンは出場を逃しているが)。今、NBAにいる主な現役選手は、エリック・ゴードン(ヒューストン・ロケッツ)、ヴィクター・オラディポ(インディアナ・ペイサーズ)、コーディー・ゼラー(シャーロット・ホーネッツ)、OG・アヌノビー(トロントラプターズ)、トーマス・ブライアント(ワシントン・ウィザーズ)などなど。
 
昨シーズンは、インディアナ大学のホームアリーナでゲームを見た。当時1年生のロメオ・ラングフォードが活躍していたが、彼は1年ですぐにNBAドラフトにアーリーエントリーして、ボストン・セルティックスに1巡目14番目で指名される。同じく去年までプレイしていたジュワン・モーガンという選手は、4年間大学に通い、NBAドラフトには指名されなかったが、現在ユタ・ジャズと契約しプレイをしている。高校時代から注目された有名選手が多いから、大学はプロ選手養成の場で、実力を示せればすぐにプロに行こうとする選手が多い中、インディアナ大学はちゃんと大学に通って人間を形成しようと思う者もまだいるところである。かつて名門デューク大学にも4年間いなければプロに行かせないみたいな不文律もあったようだが、そんなものは跡形もなくなってしまった。だから私は、いくら優秀な人間が多くても、大学が腰掛けとしてしか存在していないケンタッキー大学が大嫌いである。
 
今シーズンのインディアナ・フージャーズであるが、昨年も話題にしたが、大型ルーキーのトレイス・ジャクソン・デイビスが入り、すでに1年目からスターターとして活躍しているということで、彼を見ないわけにはいかないと思ったわけである。身長2m6cm、111kg、2000年2月生まれの20歳。背番号4。得点力はもちろん、リバウンドも取れるし、長い腕を生かしたブロックも得意。しかも、地元のインディアナ州出身で、高校時代から活躍し、全米の高校生から24人しか選ばれないマクドナルド・オールアメリカンゲームに選出、さらに毎年1人しか選ばれないインディアナ州ミスターバスケットボールにもなった。ちなみにその1年前にマクドナルド・オールアメリカンに選ばれ、インディアナ・ミスター・バスケットボールに選出されたのが、ロメオ・ラングフォードだった。つまり同じグレードの人間が連続してインディアナ大学に入学したことになる。

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トレイス・ジャクソン・デイビスの映像を見た時は、これはまだ背も伸びるだろうし、ヤニス・アデトクンポみたいになるんじゃないのと思ったものだ。実は名前だけでは気づかない方もいるだろうが、彼の父親は、デイル・デイビス。かつてNBAインディアナペイサーズの黄金時代を築いたパワー・フォワード。ゴール下でリバウンドを取りまくり、得点を稼ぎ、ペイサーズ唯一の2000年のファイナル進出に貢献したメンバーである。なんとその2000年に、トレイス・ジャクソン・デイビスは、インディアナで生まれているのである。

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ただ、彼は父親のデイル・デイビスとはちゃんと暮らしてはいなかったらしく、そのため継父の姓を足して、ジャクソン・デイビスというややこしい名前を名乗っているわけだ。父親にきちんとバスケットボールの技術や心得を習っていないだろうにもかかわらず、これだけの実力を発揮しているのだから、その才能は相当なものと思っていいだろう。これは彼を見ておかなければならないと考えるのもわかるであろう
 
もちろんメリーランド大学にも興味を持っていた。1856年設立というから結構古い大学で、ワシントンDCに近いこともあり、アカデミックな評価もトップクラスのようだ。スポーツで言えば、アメリカンフットボールでもバスケットでも名選手を輩出しており、ミシガン大学インディアナ大学ら北中部の大学で形成されるビッグ・テン・カンファレンスに2015年に再編されて加入したので、インディアナ大学とは毎年必ず対戦カードが組まれるのだ。
 
メリーランド大学のバスケットボールチームは、最近というか、それが唯一なのであるが2002年シーズンに全米優勝している。その時に在籍していたメンバーは、フアン・ディクソン(ガード、ワシントン・ウィザーズなど)、ティーヴ・ブレイク(ガード、ポートランドトレイルブレイザーズなど)クリス・ウィルコックス(フォワード、シアトル・スーパーソニックスなど)など。OBで何といっても一番有名な選手は、1999年にヒューストン・ロケッツに指名され、大活躍することになるスティーブ・フランシスであろう。もう少しさかのぼれば、マイケル・ジョーダンに匹敵する選手と言われ。1986年のドラフト全体2位で指名されながらNBAで1試合もプレイすることなく亡くなってしまったレン・バイアスもいる。

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現役のNBA選手では、アレックス・レン(センター、サクラメント・キングス)、ジェイク・レイマンフォワード、ミネソタ・ティンバーウルヴス)、ケヴィン・ハーター(ガード、アトランタ・ホークス)などのような選手がいる。スーパースターではないが、仕事はきっちりこなす的な人物というところだろうか。だが、私の中でメリーランド大学の印象を強烈に残すことになった人物は、まるでウソのような名前のダイヤモンド・ストーンというセンターの選手だった。ちょうど私がインディアナ大学の動向を追っていた時のトーマス・ブライアントと同じ年齢で、2015年に対戦した時のメリーランドのセンターが彼だった。高校時代に大活躍し鳴り物入りで入学した超高校級選手で、脅威ではあったが、結局対戦はトーマス・ブライアントが退けてインディアナ大学に軍配が上がったのだったが、その名前がインパクトがありすぎて、本名ならすごいなとおぼえていたのだ。

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ダイヤモンド・ストーンは結局1年しか大学には行かず、アーリーエントリーを宣言、チームはその年、NCAAトーナメント16強でカンザス大に敗退した(インディアナもこの年は16強まで進んだが、ノースカロライナ大に敗れる)。最初からスターターとして起用されるも、シーズン平均12.5点、5,4リバウンド、1.5ブロックと決してものすごい数字を残したわけでもなかったので、それが響いたのか、ドラフト2巡目、40番目のピックでニューオリンズペリカンズに指名され、その日のうちにロサンゼルス・クリッパーズにトレードされた。ウィキペディアによると、彼はクリッパーズでは24分しかプレイせず、当時の下部のDリーグへ。その後、アトランタホークスやシカゴ・ブルズと契約したりするが、NBAでプレイすることなく、いまだ下部のGリーグでチームを代えながらくすぶっている感じである。だから、人の運命はわからない。同じ年齢のインディアナ大学のトーマス・ブライアントも1年からスターターとして活躍したが、彼は2年間大学でプレイした後NBAに入り、今季ケガで離脱もしたが、移籍したワシントン・ウィザーズでスターターになったのとは対照的だ。高校時代の評価は、はるかにダイヤモンド・ストーンの方が上だった。もう1年大学にいて活躍していたらまた違う現在になっていたかもしれないが、彼には彼なりの事情があったのだろう。超高校級の選手が必ず成功するとは限らないという見本になってしまったかのようだ。

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ずいぶん話が逸れたが、メリーランド大学である。ワシントンDCの近郊には、バスケットの名門と言える大学がいくつかある。最も有名なのは、ジョージタウン大学であろう。言わずと知れたパトリック・ユーイングやアロンゾ・モーニング、アレン・アイバーソンの母校である。郊外ではあるが、すぐ近くなので、できれば行ってみたかったが、自分のスケジュールではちょうど試合がなかった。なので、メリーランド大学に行くことにした。ワシントンDCのダウンタウンから車で30分くらいで行ける距離でこちらも結構近い。市内から地下鉄がここまで通っているのだが、大学構内を散策したいという思いもあって、車で行くことにした。この大学のきちんとしているところは、学校のオフィシャルホームページで、パーキングパスを販売していて、簡単に買うことができて、しかも安いということだ。ならば車で行くしかないだろう。
 
メリーランド大学のある街はカレッジパークと呼ばれ、その名の通り、何もなかったところに作られた大学街ということなのだろう。この日は雨から雪が降り始めたり、運転にはとにかく視界が悪かった。アメリカの郊外は基本何もないただの森が続く場所が多く、ようやく開けた場所は結構な田舎で、ほんとにこんな所に大学があるのと思ったくらい。2時間前に着くように出たはずであるが、とにかく車の窓がすぐ曇るので、エアコンを調整したり、窓開けたりしてもなかなか改善されず、ドライブインに止まってどうすればいいのと悩んでいる中で、大学に着いても駐車場の場所がわからず、ぐるぐる回る中で、ようやく見つけ車をとめて降りると、もうすでに試合開始まで1時間ちょっとしかなくて、大学を散策するどころか、すぐにアリーナに向かうしかなかった。
 
駐車場は、フットボールのスタジアム、キャピタル・ワン・フィールドに隣接しているパーキングだけのビルであった。まあ、しかしアメリカの大学は広い、そこからバスケットボールアリーナのXfinityセンターに行くまでも遠い遠い。途中で川渡ったりするし。これは帰る道を覚えておかないとえらい目に遭うぞと思い、行路も写真に撮っておく。Xfinityセンターは、現在の場所にあった前アリーナが建て替えられる形で、2002年にオープンしたアリーナで割と新しめと言っていいだろう。2014年まではコムキャスト・センターと言っていて、同じIT系通信会社の名前が変わっただけである。窮屈しなくて広くとても見やすいアリーナである。

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 この日のチケットは、チケット販売交換サイトStubhubで買った。オフィシャルのホームページでもチケットは買えるようになっているのだが、インディアナ大学戦はやはり人気カードなのか、すでに買えないようになっていた。自分が買ったのは数か月前だったが、Stubhubでも相当な高値になっていたのだが、背に腹は変えられない。2階席みたいな上から見てもおもしろくないので、期間を置いて安くなっているところがないかチェックしていたが、やはり1階席のセンターブロックでは200ドル近くになってしまった。

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メリーランド大学のスポーツチームの愛称は、テラピンズ(Terrapins)という。Terpsと略されることが多いのだが。テラピンとはキスイガメのことで、この地域に生息する動物ということのようだ。確かにこの辺の森にはたくさんいそうだ。なので、マスコットも亀になっている。スポーツチームには強さを象徴する動物の愛称がよく使われるので、スピードもなく特別強いわけでもないカメが使われているのは、かなり珍しい。このキスイガメも特別、どう猛な動物かというと全然そんなことはなく、かつては食用にもなっていたらしく、何でという疑問しかない。
 

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テラピンズはチームカラーに、黒、金、赤、白と4色もの色が使われているのも珍しい。これはメリーランド州の州旗に使われている色ということだがかつてはテラピンズは黒と金の2色しか使っていなかったが、フットボールチームがスタンフォード大学からコーチを招聘し、そのコーチがスタンフォードのカラーである赤と白もユニフォームに使うようになり、結局、4色が使われるようになったという逸話がある。
 
さらにここに来て知った事実は、メリーランド大学のスポーツチームは、おそらく全てアンダーアーマーを採用していることだ。そう、NBAではゴールデンステート・ウォリアーズのステフィン・カリーが契約しており、日本ではなぜか読売巨人軍が採用しているあのメーカーである(設立は1996年)。 それは、アンダーアーマー創始者である、ケビン・プランクという人物が、この大学の卒業生でフットボール選手だったということに由来するアスリート時代の経験から、汗でむれるコットンシャツに代わる素材を作れないかと研究したのが始まりなのであった。ナイキがオレゴン大学で生まれたのに対し、アンダーアーマーメリーランド大学。これだけでも、この大学には色々なストーリーがあることが実感できるというものである。

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インディアナ大学のバスケットチームの試合を見たいがために訪れようとしたメリーランド大学であったが、色々調べると様々な興味深いことが浮かんでくるのであった。これまでの私の記述から想像すれば、インディアナ大学の方が強いチームだろうと思うかもしれないが、前評判から言えば、圧倒的にメリーランド大学の方が高くて勝利を期待されていた。この日の時点でメリーランド大学は、全米ランキング15位であり、インディアナ大学は圏外だ。
 
それはメリーランド大学に、あるスーパースターがいることが大きく、実際、試合を見て、その選手に大いに驚かされることになる。名前はジェイレン・スミス、背番号25。2m8cm、102kg、2000年3月生まれのパワーフォワード/センターで、今年2年生。フラットトップな髪形になぜかゴーグルを付けていて(いつから付けているのかわからないが)、それが彼のトレードマークになっている。いわゆるセンターやパワーフォワードに見られる屈強な体つきの選手とはちょっと違い、脚などはむしろ細い、のだがとにかくスピードが速い、そしてボールにからむ場所に必ずいれる嗅覚がある。そんな彼こそ、地元メリーランド出身のこれまた超高校級の選手なのであった。2018年のマクドナルド・オール・アメリカンに選ばれ、メリーランド州のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに2年連続で選ばれる。全米の高校生ベスト25に入る5つ星級の高校生。大学では、チャンピオンにもなったビラノバ大学やヴァージニア大学からも勧誘があったが、彼は常勝校ではなかったが地元のメリーランド大学を選んだようだ。 

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先述したインディアナ大学のトレイス・ジャクソン・デイビスは同じ年齢だが、ジェイレン・スミスは1年早く大学に入っている。実はジャクソン・デイビスは、5つ星までの評価ではなかった。そのことを考えると、彼らの違いはどんなものなのかと知りたくなる。実際、その凄さは、1年大学に入ったのが違うだけで、こんなに変わるものかという驚くべきものであった。それでは試合を見て行こう。